独断偏見妄言録 China's Threat

中国は人類の命運を左右する21世紀最大の不安定要因

本質を見失った改憲論議

2018年03月08日 17時58分54秒 | 日本
自民党、9条改正案に「必要最小限度の実力組織である自衛隊」と明記へ 改憲本部、合憲論争に終止符ねらう
2018.3.8
産経
 自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は7日、憲法9条改正の党条文案について、戦力不保持を規定した2項を維持した上で「必要最小限度の実力組織である自衛隊の保持を妨げない」と明記する方向で調整に入った。来週に開かれる推進本部会合で、執行部案として石破茂元幹事長らが主張する2項を削除する案とともに提示し、党内論議を加速させる。

 執行部は、安倍晋三首相(党総裁)の提案を踏まえて「自衛隊」と明記する一方、「必要最小限度の実力組織」と書き込むことで、2項が禁止する「戦力」には当たらないことを明確にし、合憲性をめぐる論争に終止符を打ちたい考えだ。「9条3項」または「9条の2」に書き込む方針。

 「必要最小限度の実力組織」という表現は、政府が自衛隊の合憲性を説明する際、国会答弁などで使ってきた。自衛隊の存在が2項に違反しないことを明確にするため、この表現の前に「前2項の規定は~」と書き加える案もあり、執行部で最終調整する。
この表現にとどめれば現行憲法で限定的に認めている集団的自衛権の許容範囲を引き継ぐことができる。執行部の一人は「集団的自衛権をフルスペック(際限ない形)で認めることにはつながらず、『自衛隊が地球の裏側まで行って戦争できるようになる』との批判を避けられる」と語る。

 自衛官を文民が指揮監督する「シビリアンコントロール(文民統制)」も明記する方向で調整する。内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮官であることなどを書き込む案が出ている。

 党内では、2項を維持した上で「自衛権」を盛り込むよう求める意見もあった。ただ、執行部は「新憲法で認められる集団的自衛権の範囲をめぐり論争が激化しかねない」として採用しない方針だ。


記事を読む限り、何のための9条改正なのかよくわからない。
現行憲法の問題点は、9条2項の「戦力不保持」の規定に縛られて、中国と北朝鮮の脅威に対応して我が国の防衛力を十分に高めることができないことにある。これこそが問題の本質なのである。

自衛隊の存在を明記したとしても、上記の問題が解消するわけではなく、現状からの前進は無いに等しい。未曽有の国難に対応するための核武装、敵基地攻撃能力の保有、防衛予算のGDP1%枠の突破、など、防衛力強化に必須の要件を満たすことが可能になるわけではない。「必要最小限の実力組織」と書き込んだところで「必要最小限」とは何かという論争が激化するのは必至である。

自衛隊の軍事力はすでに世界第7位である。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kodamakatsuya/20170512-00070880/
それが「戦力」にはあたらないとするのは、自衛隊発足当初ならいくばくかの妥当性があったかもしれないが、現在の強力な自衛隊を前提とすれば、詭弁でしかない。2項を維持する案は「詭弁」を引き継ぐことに他ならない。「必要最小限の実力組織」と書き加えたところで、詭弁が解消されるはずがない。


何のための9条改正なのか、自民党は頭を冷やして考え直すべきだろう。
批判を心配する余りの不完全な改憲はかえって有害である。
国民の良識を信頼して、あるべき憲法の姿を追求すべきではないのか。


<2018年3月9日>

2項を削除するという石破案では「公明党の賛同は得られず国会の三分の二の賛成による発議も不可能になる」という意見が多いということだ。
http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-7e4b.html
今現在主流と見られる案(2項を維持した上で「必要最小限度の実力組織である自衛隊の保持を妨げない」と明記する)であれば、防衛力の強化という課題に対して何の助けにもならないから、改憲をあきらめるのがむしろ正解であろう。

石破さんのブログを初めて読んだが、論理は明快であり、次期総理はこの人でもいいかな、と思わないでもない。少なくとも自分の頭で考えることができる人のようだ。ただし、移民推進など絶対に容認できない主張をお持ちのようなので、もう少し様子を見ようと思う。
経済政策についても健全財政論者のようであり、不満が残る。
外交については、多分、うまくやっていただけると思う。あの三白眼で睨まれたら大抵の人は震え上がるだろう。外交では大切な資質である。


<2018年3月20日>

自民、9条改正案から「必要最小限度の実力組織」削除で調整 党内批判を踏まえ
2018.3.19
産経
 自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は19日、憲法9条の改正案に関し、自衛隊の定義として書き込む予定にしていた「必要最小限度の実力組織」という文言を削除する方向で調整に入った。党内では、「必要最小限度」の範囲をめぐる新たな憲法解釈の論争を巻き起こしかねないとの批判が出ていた。執行部は過去の国会答弁を踏まえ、この文言がなくとも、戦力不保持を定義した9条2項と自衛隊の存在との整合性は取れると判断した。(後略)


過去の国会答弁は、自衛隊は戦力には当たらないから合憲、という解釈を根拠としていたのだろう。そこで想定された自衛隊は発足して間もない弱小組織だったのであり、今や世界7位にまで強化された自衛隊に当てはまる解釈とは思えない。
そのような矛盾をはらんだ国会答弁を根拠とする改憲ではすぐに破綻するだろう。9条2項との整合性は取れない。
その上、現在の主流派が考える改憲案は単に自衛隊を明記するだけにとどまり、中・朝の脅威に対抗するための自衛隊の強化には何の役にも立たない。大きな政治エネルギーをつぎ込む意味はない。

その点では、青山繁晴氏の改憲案が優れている。

憲法9条第3項加憲私案 本九条は自衛権の発動を妨げない

これにより、実質的に2項を無力化することができる。自衛権の範囲をめぐる論争が起きる恐れはない。なぜなら、9条1項の規定が行き過ぎを防いでくれるからである。

さて、そこで僭越ながら、私の折衷案をここに記す。

憲法9条第3項
本九条は自衛権の発動およびそのための実力組織である自衛隊の保持を妨げない


<2018年3月25日>

自民党としての最終案が固まったらしい。

 9条の2第1項 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

 第2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。


最終案は青山繁晴氏の「自衛権」案を取り入れたもので、骨格は私の折衷案と同じだ。大筋はこれでいいとは思うが、冗長すぎる。
特にこの部分「内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする」
総理大臣の定義を書き込む必要はない。
それと、総理大臣が死亡したらどうするんだろう。すぐに後継が決まらないかもしれないではないか。文民統制を明確にしたいのだろうが、もう少し柔軟性を持たせた表現にすべきだろう。

維新や公明にイチャモンをつけさせて、修正し、奴らに多少の満足感を与えてやろうとの配慮から、わざと冗長にしたのかもしれないが。

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