独断偏見妄言録 China's Threat

中国は人類の命運を左右する21世紀最大の不安定要因

なぜ自由貿易とTPPに反対するか

2013年08月11日 20時29分33秒 | 米国
人は自由という言葉に弱いので、なぜ自由貿易に反対するかを説明する必要があるでしょう。
WTO(世界貿易機関)などが自由貿易を推進する根拠となる「比較優位原理」とは、比較優位を持つ(相手より機会費用の少ない)財の生産に特化し、他の財は輸入する(自由貿易で)ことで、それぞれより多くの財を消費できるという国際分業の利益を説明する理論であります。

この説明を裏返してみれば問題点がすぐに理解できるでしょう。つまり、比較「劣位」にある産業は自由貿易により壊滅し、従事者は失職することになります。

現実問題として、失職した人の転職は、通常、悲惨な結果に終わります。給料が半減することも珍しくありません。こうして、自由貿易の別名であるグローバリズムの掛け声のもとで、アメリカでも日本でも大量の職が失われ、勤労者の平均賃金は下がり続けています。

さらに悪いことに、国家が丸ごと比較「劣位」にある場合が多数見られます。ギリシャとか、石油を産出しない中東・アフリカ諸国(エジプト、シリア)などが代表的であり、国内が騒乱状態に陥っています。

発展段階がそれぞれ異なる国々や、得意な分野がそれぞれ異なる国々を同じルールで戦わせようとするのが自由貿易の手法であり、関税を原則ゼロにするなど、域内での自由貿易を極限まで徹底させたものがTPPです。

横綱と十両が同じ土俵で戦えば、横綱が勝つに決まっています。
工業も農業もサービス業も強いアメリカの狙いはまさにそこにあるわけで、TPP加盟国の中で一人勝ちして、絶対的な支配者になろうとしているのです。
アメリカの巨大企業は、自国の99%の人々を支配するだけでは飽きたらず、他国の国民の100%をも隷属させようとしているのです。


TPPにより、日本の1年当たりのGDPが2%多くなるということですが、その程度のわずかな経済効果のために、農業の壊滅や社会構造の崩壊などの危険を正当化することはできません。
アベノミクスを進めれば、はるかに大きなGDPの伸びが期待できるし、それで十分ではありませんか。


<2013年8月13日>
田中宇という評論家がいる。
素性はよく知らないが、かなり不愉快な人物だ。
アメリカは衰退するから、TPPより日中韓FTAの方が望ましいと主張するトンデモ人間だ。
しかし、この男のTPP反対論はかなり説得力がある。
以下に一部抜粋する。


 戦後のGATTやWTOの交渉によって、世界各国の関税率は、かなり低下
している。特に先進諸国間では、工業製品の多くが無関税か、それに近い低率
の関税だ。世界的ないし個別の貿易交渉において、関税引き下げは、すでに最
重要の題目ではない。代わりに主題になっているのが、製品の安全基準の厳し
さや、環境問題、知的所有権、産業育成のための補助金の有無、食糧自給政策
と絡む農業問題、健康保険や年金など公的部門の民営化の問題、はては消費者
の民族的な好みの問題までの、非関税障壁についてである。

http://www.cfr.org/japan/japan-boosts-trans-pacific-partnership/p31206
Japan Boosts the Trans-Pacific Partnership

 これらの広範な非関税分野は、その国の鉱工業、農業、社会保障、教育など
の根本的な政府の政策や国家戦略、社会的な慣行に関わる問題だ。貿易問題と
いうよりも、他国との間で経済社会政策の違いをなくしていくことだ。強い国
が弱い国に、この分野の転換を見返りなしに求めると「内政干渉」「植民地化」
になる。もしくは政策や風土がかなり異なる独仏伊西などが政策の違いを乗り
越えて経済行政を統合していこうとする「EU統合」と同じ分野だ。

 関税引き下げを超える非関税分野の貿易協定は、国家統合に近いものになる。
世界中の国々が国家統合していくことなどできないのだから、関税交渉が一段
落して非関税分野に入っていったWTOのドーハラウンドが難航するのは当然
だった。EUは25年前から明示的に国家統合を進めてきたが、他の地域の
諸国も、貿易協定の交渉をする段階で、意識しないうちに、他国との国家統合
(国権の一部放棄)を容認していることになる。

 国力比から考えて、米欧FTAの交渉は米国とEUが対等な関係で国家統合
的だが、TPPは米国が他のアジア太平洋の中小の国々を「植民地化」する感
じだ。小国は多くの場合、経済的な自給ができず、安全保障面でもどこかの大
国に従属するのが国家運営の早道だ。米国はグアム、プエルトリコ、サモアな
ど、植民地的な準州の島々をいくつか持っている。概念的に、それを経済分野
に限定して拡大したものがTPPだと考えられる。米国は1990年代、カナ
ダ、メキシコと国家統合していくNAFTAを計画したが、あれの小規模な焼
き直しがTPPであるともいえる。

http://tanakanews.com/120702TPP.php
国権を剥奪するTPP

 TPPは徹底した秘密交渉で、米国は大統領府(ホワイトハウス)が米財界
の意見を聞きながら、議会に何も報告せず進めている。日本は外務省など官僚
が、首相官邸と直結して進めている。交渉内容がマスコミや議会に流出すると
国民的な議論になり、国権が侵害されていることが顕在化し、交渉に反対する
世論が勃興するので、完全秘密交渉で進められている。

 このように考えると、日本がTPPに入ることは、日本という経済大国が、
グアムのような小さな存在(もしくはメキシコという荒れた存在)にまで自国
を矮小化・弱体化していく行為に相当する。日本の「自己矮小化」「自己弱体
化」の国家戦略は、対米従属のためである。もう少しましな言い方をすると、
日本のTPP加盟は、日本がNAFTAに入り、米国主導の国家統合の仲間入
りをさせてもらう方向性だ。これは日本にとって主権の(部分的な)放棄になる。

http://tanakanews.com/130720japan.htm
さらに弱くなる日本

 戦後日本で権力を保持してきた官僚機構の基本的な国家戦略は対米従属であ
り、不可逆的に米国の一部になるのは、願ってもないことだ。安倍首相は
「TPP参加は日本の安全保障だ」と言ってきた。その意味は、TPPに参加
すると日本の国権の一部放棄や経済的な不利益の見返りに、日米の安保同盟を
恒久化できるということだ。

http://tanakanews.com/120101CJKFTA.htm
TPPより日中韓FTA

 しかし、米国は覇権を失いつつある。米国が今後も末永く単独覇権国である
なら、国権と国民的経済利益を棄てて対米従属にしがみつくのも意味があるが、
世界の流れはそうでない。米国は中産階級が崩壊していく過程にあり、今後
大衆消費社会から遠ざかる。日本製品の輸出先として未来がない。米国に従属
する利得はここ数年、劇的に低下している。中産階級が急増しているのは新興
市場諸国であり、日本の近くでは中国だ。経済面でいうと、TPPより日中韓
FTAの方がずっと重要だ(中国経済はしばらく前の減速・崩壊しそうな感じ
を薄めている)。

http://www.marketwatch.com/story/china-data-show-improvement-in-july-2013-08-09
China's flood of July economic data show improvement in most areas.

 しかもTPPの「植民地化」の主役は、米国の政府でなく財界・大企業群だ。
米国の政府が日本を植民地化し、それが終戦直後のGHQが再来に近いもので
あるなら、政治の民主化(官僚支配の破壊)など、日本にとって良いことも
あるかもしれない。しかし植民地化の主役は、大企業群である。TPP交渉に
おいて、米大統領府は米財界と密接に審議し、米企業が満足する貿易体制をめ
ざしている。米企業は、日本人の生活がいかに悪化しようが、農業が潰れて地
方の過疎化が激化し国土が荒廃しようが、日本の健康保険制度が民営化されて
米国のメディケアのようにひどいものになろが、米国のように解雇が簡単でパ
ートタイムの仕事ばかりの労働状況になってもかまわず、企業の短期利益だけ
を追求するだろう。

http://tanakanews.com/130722payroll.php
米雇用統計の粉飾
コメント
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