イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

庭の奥に長年見慣れた柳の大木、もてあましてついに伐採、作業の過程はなかなか見もの!

2020年07月04日 08時00分00秒 | 英国の、生活のひとコマ
木曜日に、庭の奥のドッグ・ウィローの大木を切ってもらいました。


実は樹齢はたったの20年ちょっとらしいのです。


ウィロー(柳)は成長が早いそうです。

なかなか立派な見栄えです。
背中合わせに向かい合う家との間の視界を遮断し、とくに葉の茂る夏にはプライバシー保護の役わりを果たしていました。

てっぺんは3階建ての家の屋根の上の高さで、枝ぶりも見事であまり広くない裏庭のほとんどの部分が木影になっていました。

引っ越してきた当初は庭の奥、三分の一ぐらいが気持ちの良い木陰でした。
ところが年々木が成長し日かげの部分が拡張して行って...
亡くなった夫の母からの結婚祝いのリンゴの木に全く日が当たらなくなり、今年の春のふわふわしたキツネのシッポのような花の落ち方が例年になくひどくて....それに空中に舞う粉っぽいタネが立ち込める霧のように数日間視界を遮り....なじみ親しんだ木を切る決心がつきました。

5月にストックポート日報に載せた写真です。☟


インターネットで探した樹木伐採業者 tree surgeon の3人一組に来てもらいました。

朝の8時半に仕事開始。

木に結びつけた黄色いプラスチックの物干し綱を外してもらうところからはじまって....


一番若い職人さんがするすると枝から枝に脚をかけててっぺん近くまで登り...


腰に付けた伸び縮みする「命綱?」をしっかりした太い枝にかけて腰のベルトにかけた手斧やのこぎり、電動のこぎりをつかってバサバサ枝を落としていきます。
細めの枝は落ちるに任せて、ある程度の大きさの枝は下にいる人に声をかけながら場所を定めて静かに落とします。

壮観でした。
私は同じ高さの3階の夫の書斎から見物していました。

まわりの家々でも見物している人がいたようです。

ちょっとしたエンターテインメント。
ご近所の家には、音や散らかりでご迷惑をかける旨、あらかじめ了承をとってあります。

もう一人の人が落ちた枝を引きずって...


裏口から入って、台所、狭い廊下を通り抜け....


ここが大変!


壁の右側にある出入り口からしならせて無理やり引っ張り出します。
作業のジャマにならないように前日に家具を動かし、壁の額絵や植木鉢など壊れたら困るもの、邪魔になりそうなものはすべてどかして通り道を広く開けました。

この人がチームリーダーというか、樹木伐採ビジネスのオーナーです。


うちのドライブ(表玄関を出たところ)に設置したも、の、す、ごーい音のする粉砕機に大きな枝を押し込んでいきます。
粉々になった枝と大量の葉がトラックの荷台にすごい勢いで吹き込まれていきます。


葉も混ざっているのでミントグリーンがかった、新茶のような香りのするこの大量のおがくずは地元のアロットメント allotment (市営の貸し菜園)に無料で寄付するそうです。

お昼休みとお茶休憩をはさんで5時間ぐらいで作業完了。



木を完全に切り倒すわけではありません。
枝をすべて落とした状態で、木は生かしておきます。

12~3年でまた切る前の状態に伸び戻るそうです。

この後のお片付けがまた大変。


3階の窓からの眺めです。

作業員がお隣(右側)に落とした大量の枝もすべてをうちの庭に投げ込み、それをすべてまたうちの台所と廊下をとおしてドライブに出し、粉砕機にかけるのです。

作業員は3人ともにこやかなで話好きの人たちでした。
後片付けもきちんとしてくれて、満足な仕事ぶりです。

特にチームリーダーの人は木に関する造詣が深く、趣味がボンザーイ(盆栽)!
見事にぐねった盆栽(オークションで手に入れた樹齢30年のアキニレ Chinese elm)の写真を自慢そうに見せてくれました。

となりの家のご主人が自分の家の木も切ってほしいと声をかけてきたので、この人は営業活動もしていました。
商談成立、5週間後にまた今度はとなりの家のもっとずんぐりした背の低い木を切りに戻ってくるそうです。

かなりの量の木の幹はこの隣の家のご主人にあげました。
乾燥させて、ウッド・バーナー wood burner (薪ストーブ)にくべるのに使うそうです。

二階の部屋から
木を切るまえ;


切った後;


三階の部屋から
木を切る前;


切った後;


ハーブも花壇の草花(もともと日陰でしょぼかったのですが)もほとんどが引きずられた枝で傷ついたり抜けたりで作業の後はめちゃめちゃになりました。
新たに種まきをしたり苗を植えたり陽がさすようになった新生の庭をのんびり作り直すのも楽しみです。

伐採業者が帰った後の夕方、日暮れまでのほんの短い間の快晴がたのしめました。


(すぐまた物干し綱を張りました)

散髪後、さっぱり!といった風情のドッグ・ウィローです。

お隣の庭では奥さんと女の子が業者が片付け残した木の切りくずをゴミ箱に入れてかたずけの仕上げをしていました。


うちの年寄りネコのホレイシオは、午前中ずっと、すごい音のでる作業が家の表と裏で繰り広げられているにもかかわらず、ソファーの上に丸くなって寝ていました。

午後、ふと起きだして庭に出ようとしたら見知らぬ男の人たちが3人も!(休憩中)しかも庭は異様なありさまです。
1人の人が近寄ってなでようとすると、毛を逆立ててフーッと憤りの声をあげました。
危害をくわえようとしたわけでもない人に敵意を見せたのは初めてです。

夫に慌てて台所に連れ込まれた後しばらくテーブルの下に隠れてふるえていました。
興奮して作業中の危ないことに巻き込まれないよう、三階の、ゲームに夢中で出てこない息子の部屋にしめ込みました。
よっぽどショックだったらしくその日と翌日の午前中は私たちの寝室から出て来ず、食べるものも口にしませんでした。
昨日の午後からは突然元気が出たらしく、午後食と夜食のキャットフードをすっかり食べきりました。



コメント (2)
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シブい、クラい!アナクロニズムな設定でそれでも構成力抜群の古い日本の推理小説を英訳版をイギリスで読む

2020年07月01日 08時00分00秒 | シブい!日本語表記、日本関係なら何でもクール!
2週間ほど前の夫の誕生日プレゼントに私がアマゾンで購入した、横溝正史 作「犬神家の一族」英訳本。


英語題;「Inugami Curse 犬神の呪い」(怖いっ)

カバーデザインが秀逸です。
石坂浩二主演の映画を封切りで見に行った後、原作も読みました。45年ぐらい前(!)のことです。

子供だった私が初めて読んだ推理小説のはずです。

夫は寝る前にベッドで少しずつ楽しみながら読んでいます。

私が寝る前に少しずつ読んでいる本は....


松本清張の「砂の器」の英訳。英語題が「 Inspector Imanishi Investigate イマニシ警部が捜査する
観念的で含みのある原題「砂の器」がどうやってこんな直接的な英語題になっちゃうのか!?
Iが三つ並んでゴロが良い、英語圏でウケそうな英語題ですが。

夫が30年以上前に買ったこの古い本を最近もう一度読みかえしたあと、処分することにしたのです。
夫が読み終えた後、処分される前に前に私も読むことにしました。
松本清張は日本にいた時若かった私には「オジサンの読むもの」という先入観があって読んだことがありませんでした。

夫は推理小説を二度も読んで楽しいのか?
....はい、日本に特に興味もつながりもなかった当時と違って日本に何度か行った今 読み返すと違う発見や楽しみがあったようです。

ローマ字でつづられた日本の地名や人名にはあいかわらず四苦八苦だったようですが。

私にも日本語の人名やききなれたはずの東京に実在する地名もローマ字でつづられるとやたら長くなり非常にやっかいです!
日本語の固有名詞は漢字を見て認識しないとなかなか覚えられませんね。

テレビ放映された「砂の器」映画版を日本で見たはずですが、話は全くおぼえていません。

インターネットも携帯電話もない時代の、日本中にちらばる情報源を頼りに夜行列車に乗って現地までわざわざ行って話を聞いてくる地道な捜査の経過を追うのが楽しいです。

私が生まれる前の日本のレトロな描写もまた楽しめます。(帰宅後 着物で晩酌、銭湯、ちゃぶ台、趣味が盆栽、居間に布団を敷いて寝る、アパートの共同炊事場、バーのホステスへの偏見...等)
夫には昔の話、懐かしい...という実感が伝わらなかったらしいのが残念です。

今でも日本人がこんな生活をしていると思いながら読む英米人も少なからずいることでしょう。


そう、この「 Inspector Imanishi Investigate イマニシ警部が捜査する」を読み終わった夫が、もっと日本の小説が読みたい、と言ったので、ぐうぜんフェイスブックの私のタイムラインに入ってきた「Inugami Curse 犬神の呪い」の英米有識者多数による絶賛紹介文!(アマゾンの広告)を見て衝動買い。

今年の新訳、新出版のようです。
「クリスティに対抗できる日本のヨコミゾ Japanese answer to Cristy」というのがキャッチコピーです。

グーグルして、ずいぶん前に訳された別の出版社の旧訳版「Inugami Clan (ズバリ忠実な訳、犬神一族)」も売られていることを知りました。
菊紋が中央に配された、日本文化論か何かの本みたいな表紙が全く読む気を起こさせない愚直デザインで購買訴求力ゼロ。


繰り返し映像化もされ日本では今、知らない人はいないであろう湖面から突き出した脚!のインパクトは、英米人にとってはとてつもなく新鮮な力強さのはずです。
夫は表紙を見て背筋がぞくぞくしたと言っています。

同じ出版社から英訳の出ているもう一作、「本陣殺人事件 The Murder in the Honjin 」は、白いバックグラウンドに日本刀が刺さっている同じアーティストによるシルクスクリーンタッチのイラストです。
こっちは日本的オブジェクトを何が何でも使わずにはいられない欧米向き日本モノ マーケティングの圧力に屈したか!?という安易さで....
「脚」のインパクトには遠く及びません。まぁ、「本陣」が舞台なんだから日本刀でもいいか?

私もイヌガミの英訳版を読んでみてから、ホンジンの購入を検討します。

現代日本の小説の英訳本は今、ちょっとしたブームです。
クリスマス前にはストックポートの書店で「コンビニ人間」「旅ネコリポート」「世界から猫が消えたなら」(今、原題を確認しました)の最近の話題作がプレゼント用おススメ本のごく一部として、平積み台に高く積み上げられていました。

なぜか、最近の話題作ではない「キッチン」までありました。

その書店には「日本文学」のコーナーはありませんが、「海外翻訳本」コーナーに「Murakami(村上春樹)」の棚があります。




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