イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

イギリス中どこにでもある偉人の銅像、植民地主義者や人種差別者はそのうち何人?(イギリスの後ろ暗い過去)!

2020年07月23日 08時00分00秒 | 英国の、生活のひとコマ

まだ閉まっているストックポート中央図書館に行く途中、実に4カ月ぶりにセント・ピータース・スクエア Saint Peter's Square を通りました。


(ロックダウン以来音沙汰なしだった図書館から本を返却するよう連絡がきたので4カ月間借りっぱなしになっている本を外の返却ポストに入れていきました)

おなじみ郷土の偉人、リチャード・コブデン Richard Cobden です。



6月の初めごろ、アメリカで発生してイギリスでも盛り上がった、人種差別への抗議運動「Black Lives Matter」の一環として、6月7日にエドワード・コルストン Edward Colston の銅像がおおぜいの活動家によってブリストル湾に投げ込まれた事件をご存知でしょうか。

台座から引き落ろされてブリストルの街なかを引き回され、顔に赤いペンキを塗られて海にドボン。
ニュースで繰り返し映像が流れました。
独裁政権が打倒されたようなシーンで、なかなかインパクトがありました。

コルストンは17世紀後半、学校、救貧院、孤児院、病院などを私財を投じて建設したブリストルの恩恵者です。
1680年以来もっぱら奴隷の取引でぼろもうけした、「貿易商」でした。

ブリストル、いくら何でも21世紀の今、奴隷商人の銅像を町の中心にたてておくってそれはないでしょう!?

それまで全く知らなかったのですが、イギリス中どこの町にもたいていある、ほとんどが白人男性の過去の「偉人、英雄」たちの銅像についての再検証をしようという動きが近年、静かにわき起こっていたそうです。

大英帝国発展の歴史は植民地支配、搾取の歴史でもあります。
植民地政策や外地でのビジネスにかかわった人たちは現代の基準で言えば何かしら人権侵害や人種差別に関して後ろ暗いことをしているはずです。
そんな人たちの銅像を公共の場所に「尊敬すべき立派な人」としてたてておくことに疑問の声があがっています。

コルストン像はその筆頭、奴隷商人ですから!
地元ブリストルの黒人団体はもちろん、各地の多くの有識者による「撤去しよう」請願運動が1990年代からあったのだそうです。

これをきっかけに撤去が決まったり、撤去要求運動が始まったりした有名な彫像、銅像がイギリス国内に多数あります。
オックスフォード大学の外壁に取り付けられた セシル・ローズ Cecil Rhodes 像は撤廃決定。(南アフリカの人種隔離政策の基礎を築いたそうです)

ロンドンのトラファルガー広場を見下ろす ホレイシオ・ネルソン Horatio Nelson 像(奴隷制度廃止論に反対意見を述べたそうです!うちのネコの名前は彼からとりました)
ウェストミンスターにある戦時中の名宰相、ウィンストン・チャーチル Winston Churchil 像(帝国主義者だったそうです。5ポンド札にも肖像が使われています).....

日本人にも知られている名前ばかり挙げてみました。
他にも「これ、だれ?」というような名前がいくつも挙がっています。
地方限定有名人も多そうです。

.....公共の場所に銅像が立っている「どうやらマズい」人物は100人を下らないそうです。
撤去の動きや呼びかけがある人物は60人ぐらい....

奴隷を所有したり、西インド諸島で奴隷労働を必要としたサトウキビ農園を所有したりしていた「偉人(地元に財政面で貢献したのでしょうか)」の銅像の多くはこの事件の前にすでに姿を消していたそうです。


イギリスの銀行や資産家や貴族の多くは奴隷取引に多額の投資をして莫大な資産を蓄積していますし、ブリストルに限らず古くからの港湾都市のほとんどは奴隷がらみの取引で繁栄の基礎を築いたそうなのです。
リバプールなど、アフリカから連れてきて西インド諸島やアメリカ南部に送る中継地として奴隷の積み下ろしまでしています!

イギリスにとって非常に根の深い問題なのです。

ブリストル湾から引き揚げられたコルストン像は現在博物館に保管されているそうです。
「ブリストルの奴隷貿易に関する展示」の一部としてそのうち公開されるということです。

私は、黒人団体の人も含めた一部少数の人たちが以前から主張していたという「広場にそのままおいておき、彼のした人道にもとる奴隷取引について書いた銘板を目立つように台座に取り付ける」案がよかったのに、と思います。建設的で教育的です。


8万2千人ものアフリカ人を人身売買して築いた巨万の富でブリストル市民の福利厚生に貢献した人、という歴史的事実を隠さずに伝えた方が市の誠実な態度をアピールできたと思うのです。

2週間前、コルストン像があったからっぽの台座に Black Lives Matter の女性活動家の銅像が1日だけ無許可でゲリラ的にたてられました。
制作者と活動家によるインスタレーション・アート活動です。
その銅像は当局によって撤去され、現在は市の美術館で保管されています。

ストックポートのセント・ピーターズ・スクエアを見下ろすリチャード・コブデンは穀物法の撤廃に尽力した、19世紀ストックポート選挙区の国会議員です。
政治家になる前は商人だったそうですが、この件に関しては後ろ暗いことはない.....ようですね.....。

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