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イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

徹底的に不遇だった天才画家の足跡をたどる、大人気の斬新なアートショーに行ってきた

2022年01月11日 06時02分29秒 | 英国の、生活のひとコマ
日曜日、大人気の「アート・ショー」、 Van Gogh Alive 展を見に行ってきました。


日本でも非常に人気のある後期印象派の巨匠、フィンセント・ファン・ゴッホ Vincent van Gogh の作品と生涯を映像と音響で紹介するという斬新なアート・ショーです。
(発音はヴァンゴォアライヴ、英語でフィンセント・ファン・ゴッホのことはヴィンスント・ヴァン・ゴォといいます)

ファン・ゴッホの作品と文字による簡潔な説明が、広いオーディトリアムのたくさんのスクリーンに次々と映し出されるのを30分ぐらい見続ける展示というか、ショーです。

サルフォード Salford の、運河沿いに放送局や劇場が建ち並ぶ近未来都市のような様相のメディア・シティ・UK Media City UK というエリアの広場の仮設会場です。


世界各国を巡回している、評判の「アトラクション」、入場料が23ポンド50ペンスと、けっこう高額です。
スペインのバルセロナでアートにあまり興味がない息子もひと足先に見てきています。
「よかった」と言っていましたが、表現力に乏しい彼の語彙ではどこがどうよかったのか今ひとつピンときませんでした。

コロナウィルスの感染拡大阻止のため厳格な入場者数制限があり、15分刻みで枠組みされた予約時間に入場しなければなりません。

...と言っても見学時間の制限はありませんし...すごい人でした。


ソーシャル・ディスタンシングの実行不能。



床まで含めたあちらこちらのスクリーンに別々に現れて消えるすごくたくさんの作品の数に圧倒されました。
最初のうちはどこを見てよいのやら、キョロキョロ。
今思えば、それも演出のうちではなかったでしょうか。



ひとつのスクリーン、というか前方1点をぼーっと眺めていれば最終的にはすべての画像を見落とすことがないことにすぐに気がつきました。



見たことのない作品がいっぱい!

修業時代の古典的なデッサンなどゴッホらしくない作品もたくさん目にしました。
びっくり、37歳の短い生涯のあいだに描いたおびただしい数の作品のうち、ファン・ゴッホ作と認定されている現在に残る作品は2100点以上あるのだとか!!



音響の好い音楽も圧巻で、リズムに合わせて画像が出たり消えたり、フラッシュバックふうに入れ替わったりしました。
日本の浮世絵に影響を受けた作品群を紹介する時にはお琴の「サクラサクラ」が流れるなどテーマに合わせた選曲もなかなかでした。

テーマや時代ごとにまとめて見せられる作品の画像には題名も年代も所属美術館の名前などの情報が一切ありません。
バシバシと繰り出される画像の印象のみが頭の中に刻まれました。

麦畑の上を飛ぶカラスの群れがこっちに向かってきたり...


素描の汽車が右から左へ走り抜けたり、コンピューターグラフィックによるアニメーションも見ごたえがありました。
ただ、お琴の「サクラサクラ」をBGMにうつしだされた「アーモンドの花(サクラにそっくり)」の作品画像に散る花びらのアニメーションは陳腐でした!(不要!)

入場者の多くは黒っぽいコートを着ていましたが、コートを脱いで鑑賞していたこの女性の白いセーターと、連れの男性が手に持った白いコートがスクリーンになって画像の色彩を写し込んでいました。





ボーっとしていると見落とす、印象深い名言の数々です。


I dream of painting then I paint my dream.
私は描く絵の夢を見る、そして私は夢を絵に描く。

会場にはいったところで、ファン・ゴッホの作品の時代ごとの傾向とか生涯の出来事などをざっくりと説明するパネル展示がありました。
(けっこう退屈でしたが、じっくり読んでからオーディトリアムに入りました)
その展示場の頭上のアーチにもドカドカと大書されていたのが...


この悲しい文章でした。
I can't change the fact that my paintings don't sell. But the time will come when people will recognaize that they are worth more than the value of the paints used in the picture .
私の絵が売れないのはどうしようもない。でも私の絵に使った絵の具代よりも価値があることが理解される時は来るはずだ。


たぶんこの一文はこのアートショーのテーマなのでしょう。
彼が生きている間に彼の絵が理解されることはついにありませんでした。

不遇の天才画家、フィンセントにこのアートショーを見せてあげたかった!!
同行の友人はファン・ゴッホの不遇に胸を打たれたと言っていました。

鑑賞のポイントはそこ?と思う人もいるかもしれませんが私も友人に同感です。



膨大な量の情報量がすんなりと頭に入る演出が見事です。
堪能しました。

記念写真用の「アルルの寝室」舞台セット。


あまりスマートフォンのカメラに慣れていない同行の友人が撮ってくれた、目をつぶった私の写真です。


映像展示が終わった後に記念撮影用にサービスで設置されたらしい天井と壁が鏡貼りになった小部屋を通過することになっていました。


ぎっちりと咲き誇った造花のヒマワリが鏡効果で果てしなく広がるひまわり畑の雰囲気を作り上げていました。
もちろん私たちはセルフィーをいっぱい撮りました。

主催者側は、撮った写真をソーシャルネットワークに投稿して宣伝してもらう思惑なんだと思います。
私たちは「SNSシャイ」なのでどこにも投稿していません。





コメント (3)
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