17日(金)の実践ゼミは、東宝株式会社常務取締役高橋昌治氏に来ていただいて、映画業界の最近の状況、特にシネマ・コンプレックス(複合型映画上映施設)の現状と今後の展望をお話しいただいた。映画興行のしくみ、シネマ・コンプレックスの経営の実情などを具体的な数字をあげて説明していただいたのでとてもわかりやすく、また、興味を惹かれる内容だった。私が初めて知った点を何点かあげておく。1つめは、日本でシネ・コンの普及(1993年以降)がアメリカに比べて30年ほど遅れた一番の大きな理由は、土地の値段が高かったために横に広がった形状のシネ・コンをつくるには適さなかったためであるということ。したがって、90年代に入ってバブル経済が崩壊して地価がどんどん下がってきて初めて日本でもシネ・コンの建設が可能になってきたという。2つめは、以前は日本国内の映画興行収入の割合は、6大都市VSその他で比べると6:4か7:3くらいであった(したがって地方の昔ながらの映画館はどんどん潰れてしまった)が、シネ・コンの普及した現在は、その割合が何と2:8とまったく逆転してしまっていること。3つめは、シネ・コン同士の競争が激しくなってきたことによって、多くのシネ・コンはディベロッパー(大家さん)に支払う家賃と施設の償却費がかさんできており、映画上映単体では軒並み赤字になっていること。それでもシネ・コンが増え続けているのは、いまのところまだ売店収入等によってかろうじて収支をとっている状況であること、などである。数字が入った映画業界全体の状況の説明、数字が入った個々のシネ・コンの経営のポイントの説明、いずれも非常にパンチがあって刺激的であった。高橋常務は私が東宝にいた時代から社内で理論家、切れ者として有名な人だったが、講義もメリハリがきいていて非常に内容のある、いい講義をしていただいた。私もとても面白く聞かせてもらった。講義の冒頭に高橋常務から、自分が東宝に入社した頃は映画業界は典型的な構造不況業種であり、入社するときに周りからずいぶん反対されるという状況だったが、今回のように映画に興味を持ってくれる学生に向かって自分の業界を説明するというところまで映画業界が盛り返してきたことは非常に嬉しい。という意味の発言があった。シネ・コンの誕生や急速な普及とそれに伴う映画業界の大きな様変わりを目の当たりにすると、会社や業界は生き物であり、旧来の常識がまったく通用しなくなることが普通にあるのだ、ということがわかって興味深かった。
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とても刺激的、知的な好奇心に満ちた講義だったと想像します。私もその授業を、ブログを読ませて頂いて、とても受けたい、と思いました。また機会があれば、ぜひお聞かせくださいませ。