ときどき、ドキドキ。ときどき、ふとどき。

曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

演劇の社会的役割

2009-08-27 10:30:15 | アーツマネジメント
先日紹介した高萩宏さんの著書「僕と演劇と夢の遊眠社」の中に以下の記述がある。

・演劇はギリシャ悲劇・喜劇の成立以来、集団で物事を決めていかなければならない市民社会の鏡のようなもの(だ)

・「教育」には先人が得た知識を後進に効率よく伝えていく役割があるように、「演劇」にはその時代の社会を支えている人が集まってありうべき社会を再現し、共に楽しむという機能がある

・芝居の本質は人間観に関わる内容を同一空間・同一時間で共に体験することだ

(いずれも同書p. 228)

いずれも、そのとおりだと思う。

演劇の社会的意義について、こんなに簡潔に、わかりやすく書かれている文章はあまりないかも知れない。だが、私がこれらの文章を読んで感じるのと同じように感じる人はそんなに多くないのかも知れない、とも思う。

この弁護人の言葉は、弁護を受けている被告には感動的に響くが、演劇の社会的意義に疑問を持つ(もしくは演劇という存在に社会的優先順位を認めない)検察官に対しては、言いたいことのエッセンスが正しく伝わらないかもしれない。

人間がつくっている集団(もっと広く社会と言ってもよい)で起こっている出来事を、同一空間、同一時間でともに体験することによって深く理解し、共感することが演劇の社会的機能なのだ。

このことは、東京大学文化資源学公開講座「市民社会再生」の一年目(2007年度)の講座のときにゲスト講師として来ていただいた静岡舞台芸術センター(SPAC)芸術監督の宮城聰氏が、「すべてのアートの中で、言葉と肉体と集団を全部備えているのは演劇だけだ」(厄介だが、その分、切実で、奥が深い)、と述べていたことにつながると思う。

→ 以前のブログ記事 言葉と肉体と集団 (2007/11/10)


僕と演劇と夢の遊眠社
高萩 宏
日本経済新聞出版社

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