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曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

マイケル・ギボンズの「モード論」

2006-07-08 12:52:16 | 大学
以前に紹介した上野征洋編「文化政策を学ぶ人のために」(世界思想社)の中に、マイケル・ギボンズの「モード論」が紹介されている。

文化政策を学ぶ人のために
上野征洋編
世界思想社

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現代社会と知の創造―モード論とは何か
マイケル ギボンズ, Michael Gibbons, 小林 信一
丸善

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私はギボンズの前掲書については未読なので、ここでは便宜的に上野の説明によってざっとそれを紹介することにするが、ギボンズらの唱える「モード論」によれば、専門分野に依拠した伝統的な知識生産を「モード1」と呼び、専門分野を越えた知識生産を「モード2」と呼ぶ。

「モード1」は従来大学で行われてきた知識生産の方法であり、「ディシプリン中心型で、個別科学の方法と手順にこだわって生産される知識」である。
これに対して、「モード2」は、トランスディシプリナリの科学で問題発見と問題解決のコンテクストで生産される知識」のことであるという。

これは、トマス・クーンが「科学革命の構造」(1962)において「科学の歴史はパラダイム転換の歴史である」と主張して以来の、それに対抗するほどの強い影響力を持った新たな「知の体系化」の試みであると考えられているという。ギボンズの「モード論」は、1994年に発表されて以来、彼の専門である科学政策の領域を超えて、広く科学や知識生産のあり方に関する考え方に大きな影響を与え続けているのである。

科学革命の構造
トマス・クーン
みすず書房

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これを読んですぐに思い出したのだが、実は、今年2月に跡見女子大学で開催されたFD講演会において、講師の相磯秀夫東京工科大学学長からもこのことが指摘されていた。このとき、相磯先生は、クーンの科学革命論から説き起こし、現代の大学が直面している問題としてギボンズのモード論に真っ先に言及されていた。

→ FDシンポジウム「大学院の教育・研究・運営」 (2006/02/24)

これは、大学のあり方を考えるときにつねに参考にすべき論であると言える。

特に、わがマネジメント学部においては、現実社会に直接関わり、その関わりの中から問題を発見し、それを解決する方法を提案する「モード2」の知的生産様式こそが学部の理念そのものに適合するものである、ということになる。

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