タイピングの練習に地方紙に連載の「卓上四季」を打ってみました。
「沢内三千石 お米の出どこ 升ではからねぇで コリャ 箕ではかる」。南部藩の隠し田とも呼ばれた岩手県沢内村(現西和賀町)に伝わる沢内甚句には、悲しい村の歴史が詰まっている。▶凶作に見舞われた宝暦の飢饉。厳しい年貢の取り立てに苦しむ村のため、およねという庄屋の娘が人身御供となった。「お米」はおよねであり、「箕」は身を指す。生き延びるため、泣く泣くおよねを差し出した村人の哀切に胸が痛む▶生きるために失うものが人とは限らない。こちらの町と村が、交付金という禄と引き換えに差し出すものは一体何だろう▶原子力発電所から出る高レベル高射性廃棄物の最終処分場選定を巡り、後志管内寿都町(すっつ)と神恵内村(かみえない)がきのう、選定手続きの第一段階となる文研調査に応じる方針を表明した▶最終的な誘致につながるものではないとするが、文献調査応募に伴う交付金の取得だけを目的とするならば、納税者の理解は到底得られまい。今後は、処分場の設置に向けて正面から向き合うことになる▶廃液で作るガラス固化体は放射能が強く、製造直後に人が近づけば20秒で死に至る。安全になるまで10万年という気の遠くなる時間を要する。安全神話が虚構であることは、福島の原発事故で身にしみたはずだ。およねは、評判の美しい娘であった。北海道の豊かな自然と重なって見えるのは、疑いすぎであろうか。」
文献調査対象自治体に2年間で最大20億円の交付金が支給されるという。2007年の高知県東洋町以来2例目で、東洋町は文献調査に応募後、住民の反対運動を受けて応募撤回に至った。