戦後レジーム(体制)からの脱却に向けて改憲・秘密保護・靖国参拝、積極的平和主義などの強行姿勢の阿部政権に国民の懸念が広がっている。靖国神社参拝を受け継ぐとし、原案にあった「不戦の誓いと平和国家の理念を貫く」の文言は削除され、選挙で慎重姿勢を約束した環太平洋連携協定(TPP)は今回の運動方針で「積極的に推進する」に変わった。反原発を主張していた民主党が政権与党になった途端に「立場が変われば考え方も変わる」と前言を翻し原発再稼動に舵をきり、国民の信頼を失い再び野に落ちた構図と同じである。党内にいても言うべきことは言う。それが地元有権者の負託をうけた議員のあるべき姿だと思うが、与党内では首相を支持する議員が幅をきかせ、異論は隅に追いやられている、これらの議員達は地元支持者にどう説明するつもりなのか。一昨年の政権交代はこうした首相独特の歴史観や、国の秘密を政府が恣意的に指定できる法の制定が支持されたためではない。民主党の「国民への裏切り」や「決められない政治」への嫌気が自民党に再登坂のチャンスを与えたのだ。この度の自民党大会で採択された今年の運動方針には「長年の政権与党のおごりで国民の信頼を失った」と野に落ちたときの教訓はどこにも生かされていない。「監視されない権力は暴走する」という。政治的中立を求められるNHKの新会長が立場をわきまえない乱暴な発言で物議を醸している。ペンは剣よりも強し、こうなれば新聞各社の良識に期待するしかない。