興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

観察と自覚

2010-04-11 | プチ精神分析学/精神力動学
 ひとのこころや感情というのは、空模様とよく似ていて、一日のうちに絶え間なく変動し続けている。

 ただ、空模様と違うのは、我々のこころというのはもともとの自然な変動に加えて、状況的、対人的、社会的な、いろいろな外的刺激の影響が絶え間なくあるわけで(それを避けるためにある種の人はある状況下において引きこもったりするわけだけれど)つまり我々の一日のうちの、また、一週間のうちの、こころの変化というのは、もともとの自然な変動と外的刺激のケミストリーによって生じている。

 ここで大事なのは、この2つの要素はどちらも完全にはコントロールできないわけだけれど、この2つの要素をきちんと認識し続けられれば―つまり、自分が今現在誰とどういう状況にいて、自分はその直前と今でどういう精神状態だったか、それから、その状況または他者が、自分にどのような影響を与える傾向があるか―そのケミストリーがおかしなことになるのは防げるということだ。

 それから、ひとはしばしば、本来コントロールができないこれらのもの―自分の自然なこころの変動、それから、他人の言動、状況などーを、コントロールしようとして、さらに問題をおかしなものにする。

 コントロールできないものをコントロールしようとしすぎるとき、ひとは精神に支障をきたす。
 逆に、状況や、それによって影響されている自分のこころを野放しにしていたら、それはそれで精神の成長はないし、関係や経験が深まることもない。

 ここで逆説的なのは、コントロールできないものをコントロールしようとせずに、かといって、それらに気を留めないわけでもなく、それらをきちんと見据えて自覚することで、こころは安定し、成長し、関係や経験も深まり、その状況も変わっていくということだ。