『Ftarri 福袋 2018』(meenna、2017年)を聴く。
■ Shuta Hiraki
タイトルは「Optimal Layers」であり、その通り、さまざまな周波数の流れがまるでレイヤーのように積み重ねられていく。『Unicursal』がそうであったように、耳がそれらの複数さで分裂し、勝手に補足するレイヤーを途中変更する側面がある。また、複数の存在によって、別のレイヤーがあるかのように錯覚してしまう(あるかもしれないし、ないかもしれない)。
一方、レイヤーの積み重ね自体は、対照的にパラノイア的であり、崩壊の予感を内包した行動に感じられる。しかしそれが途中で突然断ち切られる。ジェンガが崩れ落ちるカタルシスとは違い、その瞬間に、不思議な時空間がぽっかりとあらわれる。
■ Radio ensembles Aiida
短波ラジオを音源として使ったもののようで、それらがダイレクトに録音され、多重録音もあとでの修正もなされていないとある。ざわめきのゆるやかなうねりと、その中で高周波のラインが人格を持っているかのようによれてゆく面白さがある。
■ Zhu Wenbo
Zhu Wenboさんは北京の自宅でこれを録音している。そのせいか自動車など環境音が入り、その中で、15分もの間、かれは気の向くままに両手を叩く。リズムとか事前の計画とかを無化するかのようなアナーキーさがある。
昨年観客としてのみ逢った人だが、パートナーのZhao Congさんによれば、この6月に再来日するとのことであり、そのときはパフォーマンスを目撃したい。
■ Zhao Cong
そのZhao Congさん。彼女が用意したものは、「light, paper, cloth, fanner, spring, metal box, wod ball, strings, bass guitar, salt and other objects near at hand」。それらの音が増幅されてゆくのだが、一方で、まさに手元での手作業自体もクローズアップされているようであり、音と作業のサイズ感がぐらつく。ミクロなものを愛おしむ感覚がとてもいい。
■ Leo Okagawa
巨大な排気口なのか、延々と続くこと自体がそのアイデンティティのようなゴオオという音。一転して場面は地下空間のようなところに移り、金属の軋む音が聴こえる。貌が外部に隠しようもなく晒される前者と、内に籠るかのような後者とが、まるで垂直構造をなしているようである。
また世界は外部へと移る。暴風のようにも聴こえるし、排気だけでなく吸気や爆音があるようにも聴こえる。そして場面が次々に変わってゆく。先の垂直構造と、力のコントラストとがあったためか、何者かの意思が背後にあるようなサウンド。
●参照
Zhao Cong、すずえり、滝沢朋恵@Ftarri(2018年)
Shuta Hiraki『Unicursal』(2017年)