Sightsong

自縄自縛日記

霞が関ビルの映像

2009-06-12 00:32:38 | 関東

汐留の建設産業図書館で、霞が関ビルのドキュメンタリーを2つ借りて観た。記録映画『超高層霞が関ビル』(1968年、企画・鹿島建設、製作・日本技術映画社)と、「ベタ」な『プロジェクトX 霞が関ビル・超高層への果てなき闘い』(2001年放送、NHK)である。

1968年完成、地上36階、高さ147m。いまの水準からみれば全くたいしたことがないし、実際に、これが日本における高層ビルのパイオニアだったとどこかで読むまでは、普通のビルくらいにしか思っていなかった。仕事で使ったことは何度かあるかもしれない。そういえば、ジョン・ゾーンの「マサダ」をここの1階で観たことがある。ただ、当時は、地震対策のことがあり、画期的なものであった。

『超高層霞が関ビル』では、これが如何に工夫を凝らして建設されたものか、誇らしげに語られる。竣工前の最後の資材などは、「第九」がその場で流され、クレーンで吊り上げられたという物々しさ。工期短縮のために分単位の綿密さで下からどんどん組み上げていったこと、工場でできるものはユニットとして予め組んでおいたこと、軽量化のために鉄骨にハニカムの孔を穿ったことなんかがミソのようだ。高いところの足場を鳶職人たちがひょいひょい歩くのは激しく怖ろしい(高所恐怖症なのだ)。

『プロジェクトX』では、ヴェテランの鳶職人がエリートを試すため、高い足場を歩いてくるよう呼びかけたというエピソードがある。もちろん、それによって一体感や信頼感が生まれた、という文脈なのだが、この体育会系のノリが「プロジェクトX」の果てしなく嫌なところだ。だから、これまでろくに観ていない。

しかし、人間ドラマをまじえて達成感を強く感じさせるよう取材されていて、どうだ凄いだろうという宣伝映画の『超高層霞が関ビル』よりも何倍も面白い。鉄骨を組み上げて行く途中、定期的に垂直を確保していることのチェックがなされるのだが、それが朝夕でずれていて、何度も修正している。そこで、陽のあたる面が膨張していた、ということに気がついたのだという。

ところで霞が関ビルは、『ウルトラマン』の第35話「怪獣墓場」にも登場する。地球に落ちてきた怪獣シーボーズが、宇宙に帰りたくて霞が関ビルによじ登るという話である。科学特捜隊のイデ隊員は、確かに、「畜生、日本にたった1つしかない超高層ビルだっていうのに!」と解説風に叫んでいる。

実相寺昭雄『ウルトラマン誕生』(ちくま文庫、2006年)には撮影当時の話があり、「ぼくが『ウルトラマン』をやった当時、霞が関ビルが出来上がったばかりだった。」とある。この放送は1967年3月12日、霞が関ビルは建設中のはずであり、おそらくは実相寺昭雄の記憶違いだろう。撮影はミニチュアを使って行われている。あまり超高層ビルという印象はなく、『モスラ』で東京タワーに繭ができるほどのインパクトはない。


実相寺昭雄『ウルトラマン誕生』


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