Sightsong

自縄自縛日記

ルイス・モホロ+ラリー・スタビンス+キース・ティペット『TERN』

2014-02-14 07:07:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

先月、歌舞伎町のナルシスに立ち寄ったところ、川島ママが「ちょっとエヴァン・パーカーみたいでしょ!」と嬉しそうにかけてくれたレコードがあった。確かに微分的な繰り返しのフレーズを吹き続けるサックスで、しかも英国盤。

あとで調べてみると、Ashbury Stabbins Duo 『Fire without Bricks』(Bead Records、1977年)という盤であり、サックス奏者はラリー・スタビンスだった。どうやら簡単には入手できないようでもあり、スタビンスが参加する別のCDを聴くことにした。

ルイス・モホロ+ラリー・スタビンス+キース・ティペット『TERN』(FMP、1982年)

Louis Moholo (ds)
Larry Stabbins (ss, ts)
Keith Tippett (p)

ルイス・モホロは南アフリカ出身ではあるがロンドンを拠点に欧州で活動してきたドラマーであり(現在では、アフリカ式にルイス・モホロ-モホロと名乗っている)、またラリー・スタビンスキース・ティペットも英国人。調べてみると、スタビンスはキース・ティペットと随分行動を共にしていたのであり、もっと熱心にティペットを聴いていたならその存在に気づいてもよかったのだった。

演奏は、20分前後のフリー・インプロヴィゼーションが3曲と、短めの演奏が1曲。そのためにFMPの原盤ではLP2枚となっている。

モホロはビートを刻むのではなく、絶えず波のような脈動音をシンバルで創り出し、ここぞというところでパンチを繰り出している。ティペットも、いつもの彼のスタイル通りに、地響きのような低音のピアノで音楽全体のエネルギーを励起し、ときに高音に駆け上がる。このあたりは個性爆発、すばらしい。

スタビンスのサックスは、ここでも確かにエヴァン・パーカーを思わせる。それでもやはり違う個性なのであり、微分音の繰り返しフレーズにしても、パーカーの音を重厚な樹皮のクヌギの樹だとすれば、スタビンスのそれはもっとスマートな樹皮のユーカリの樹ほどの印象の違いがある。

そして、そのスマートな音のまま、やや長い音でのフレーズを吹く。それはむしろスティーヴ・レイシーを彷彿とさせる。スタビンスがパーカーとレイシーのふたりから影響を受けたという事実はあるのだろうか。だからといって、中途半端なエピゴーネンというわけでは全くないのであって、面白い。

●参照
キース・ティペット+アンディ・シェパード『66 Shades of Lipstick』、アンディ・シェパード『Trio Libero』
キース・ティペット@新宿ピットイン
キース・ティペットのソロピアノ
キース・ティペット『Ovary Lodge』
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2007年)(ルイス・モホロ参加)
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2)(2010年)(ルイス・モホロ参加)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(ルイス・モホロ参加)


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