NPO集改センター(NPO法人 集合住宅改善センター)活動レポート

大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、福岡を中心に大規模修繕工事やマンション管理運営をサポートいたします。

第83 回フリーセミナー『「中津リバーサイド不在区分所有者への課徴金適法判決について』

2010-08-16 17:16:53 | フリーセミナー

NPO 集改センターの第83 回フリーセミナー報告をいたします。

 開催日 : 2010 年(平成22 年)7 月20 日(火) 15:00~17:00
 開催場所 : 大阪建築会館 3 階(会議室)
 参加者 : 30 名
 テーマ : 「中津リバーサイド不在区分所有者への課徴金適法判決について」
 講師 : 折田泰宏 (一社)日本マンション学会 会長
 けやき法律事務所 所長 弁護士

セミナー内容は、平成22 年1 月27日に最高裁判決が確定し、朝日新聞に一面トップで紹介された「中津リバーサイド不在区分所有者への課徴金問題」についてでした。

全国の管理組合では「2,500 円」という数字が独り歩きし、さまざまな憶測や意見や解説などが飛び交い、大きな反響を呼んでいます。中には、判決文の結論部分のみを取り上げて「不在区分所有者に課金する」と強引な提案を一方的にしてトラブル化した例も報告されています。

今回のフリーセミナーは、マンション裁判に詳しい折田泰宏先生を講師に「中津リバーサイドの最高裁判決」をテーマに変更してお話しいただきました。

 折田先生は、まず中津リバーサイドの概要から説明を開始されました。中津リバー
 サイドは、14 階建て4 棟868 戸の大型団地です。分譲当初は購入者自らが住むことを条件に分譲が行われ、転売も賃貸も25 年間禁止されました。管理組合は自主管理で運営され自治会機能も担っています。

理事長は1 年を通じ毎日5時間も管理事務所に詰めるなど、規約によって居住区分所有者に限られている理事役員は激務をこなしておられます。なお不在区分所有者は、全体の2 割に達しているそうです。

管理組合は、平成16 年の総会で「不在区分所有者は協力金を支払う」決議を行い、その後、支払を拒否する不在区分所有者7名(14 戸)を起訴しました。その裁判は、地裁・高裁・最高裁を合わせて実に10 回以上行われました。セミナーでは、最高裁判決までの関連訴訟の裁判群をまとめた表(レジュメ)を見ながら詳しい説明があったので、裁判の経過がよく分かりました。話を聞けば聞くほど、裁判を行う費用(&手間) 対効果を考えてしまい、裁判以外の方法も模索したくなりました。

しかし、この管理組合は自分たちで決めたこと をはっきり確定したいという気持ちが強く、抵抗感なく裁判を続けられました。そうして「居住所有者だけが役員になり住環境維持を図っている。不在区分所有者は利益のみ享受しているのだから、不公平是正のために金銭負担を求めることは必要性と合理性があると判断でき、『特別な影響』を及ぼす場合にあたらない」と最高裁の勝訴判決を得る結果に至りました。

折田先生は、この裁判の争点は、「住民活動協力金負担が不在区分所有者に『特別な影響』を及ぼすか及ぼさないか?」ということで、最高裁が協力金を積極的に認めたとか、2,500 円が適当であると判断したものではない、むしろ「管理組合が自主的に総会で決議したことが適法と判断」したところに意味がある、と説明されました。

折田先生のセミナーを聴いて、中津リバーサイドの特殊な事情(環境)が見えました。そして「協力金」や「2,500 円」は、自治会機能も果たす自主管理マンションが 不在組合員の増加や在住組合員の高齢化などで理事役員のなり手不足問題に苦しみ公平感維持のために生まれてきた発想であり、最高裁判決があっ たからといって他の管理組合がそのまま実施して良いものではない、ということがよく分かりました。

参加者の中にはもっと知りたいというニーズもあったようです。しかし、今回のセミナーのコンセプトは、中津リバーサイドの背景をきちんと理解した上で、裁判文を理解してほしい、ということで企画しました。

次回のセミナーは9 月21 日に「コンサルタントによる工事監理の実践」を、NPO 集改センターの神戸事業所 所長、 品質推進事業部 事業部長の 谷守 正康 が行います。

皆様のご参加をお待ちしております。

====================================================================
大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良を中心に広島、山口、北九州、福岡でも大規模修繕工事、マンション管理運営をサポートする専門家集団
NPO法人 集改センター
マンションなんでも相談は こちら