集改センター恒例の第158回 スキルアップセミナーの報告をいたします。
開催日:2018年(平成30年)4月4日(水)
テーマ:「理事長解任に関する訴訟を検証する」
講 師:九鬼 正光(本会・正会員/弁護士)
<セミナー概要>
■はじめに
管理組合の理事長職は理事会の決議で解任できるのか、という事案に対して最高裁第一小法廷において平成29年12月18日に原審の判決を破棄し、原審に差し戻しました。本事案について、原審の判断と最高裁の判断を検証してみましょう。
■本件事案の概要
本件は理事長職を理事会決議で解任された原告が、その理事会での解任は無効であると管理組合を訴えたもの。以下にその事案の概要を記します。
本件は平成24年8月に竣工されたマンションで、理事14~15名、監事が1名という体制の管理組合で起きました。当初から管理会社が業務を行っていました。当時、理事長職にあった原告は、平成25年6月2日と16日開催の理事会において、「競争入札によって、9月から管理会社を他の業者に変更したい」との意見を述べたが、他の理事は同調しなかった。その後同月30日に開かれた理事会において競争入札を実施することを、8月に開く第1回通常総会の議案とすることが決定された。しかし、7月の理事会において総会議案とすることに反対する意見が大勢を占め、結局、総会の議案とすることは否決され、通常総会において、現行管理組合と引き続き1年間契約を締結することが承認された。総会後に開かれた9月の理事会において、原告は管理会社の競合に関する臨時総会の開催を求め、会議は紛糾し、臨時総会開催と役員の互選については次回10月20日の理事会に持越しとなった。しかるに10月10日に原告は理事会の決議を経ずに、10月27日を会日とする臨時総会の招集を通知した。10月20日に開いた理事会に原告は出席せず、副理事長が議長となり理事会が開かれ、副理事長を理事長に選任、原告は理事長職を解かれ理事となった。そこで原告が「理事長職の解任は総会決議が必要」として無効を訴えたのが本件事案の概要です。
■第一審及び原審の判断
10月20日の理事会の時点では、原告は理事長の任期中であり、区分所有法で定める管理者である。管理者の解任は規約に別段の定めがない限り、集会の決議によるべきで、規約に解任の定めがされていない以上、理事会においての理事長職解任は無効であるとした。
■最高裁の判断
区分所有法は規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって管理者を選任し又は解任することができるとしている。集会の決議以外の方法による解任を認めるか否か及びその方法について、区分所有者の意思に基づく自治的規範である規約に委ねていると解される。本件においても管理者である理事長の解任についても理事会に委ねていると解するのが合理的意思と考えられる、として原審を破棄、差し戻すという至極当然の判断がなされた。
~次回開催予告~
■第159回スキルアップセミナー 2018年5月9日(水)午後3時から
テーマ:「設計サイドと現場サイドの2面から見た大規模工事の問題点」
講 師:倉内 康行(本会・正会員/1級建築士・設計監理事業部)
<大規模修繕工事における問題点を、設計者の立場から見た場合と現場監理の立場から感じる場合について考えてみます。>