「接続水域」の航行(情報の読み方)
自民党憲法改正草案を読む/番外165
2018年1月12日読売新聞(西部版・14版)1面の見出し。
記事には、こう書いてある。
疑問点がふたつある。
(1)日本の領海の「接続水域」(領海の外側)を中国の潜水艦、軍艦が航行することは何に違反するのか。読売新聞の記事は「他国の軍艦や潜水艦であっても、日本の領海を航行することは、敵対的な行動を取らない限り、国際法上認められている」と書いている。つまり、航行自体に問題はない。
さらに、こうも書いている。
その通りなのだろうが、これはあくまで「日本政府」の主張。中国側は違うだろう。逆に言うだろう。
という見出しで、中国外務省の主張も併記されている。(これは省略)
「国際法上認められている」行為なので、これは決着がつかない。
ここから二つ目の問題が浮かび上がる。
(2)なぜ、このニュースが一面のトップなのか。
「尖閣諸島周辺の接続水域で外国籍の潜水艦が確認されたのは初めて。この水域での中国軍艦の航行は2016年6月以来、2回目。」とあるが、1回目のときは、読売新聞ではどう報じられたのだろうか。資料が手元にないのでわからないが、やはり一面のトップだったのだろうか。
記事の末尾に「中国の潜水艦をめぐっては、04年11月に沖縄県の多良間島周辺の領海に侵入し、海上警備行動が発令されたことがある」とある。このときの報道はどうだったのだろうか。
なぜ「報道」を問題にするかというと。
日本政府の誰が発言したのか明記されていないが、中国の行動を、
と、わざわざその主張を紹介しているからである。
直前まで、安倍は北朝鮮の核ミサイル問題を重視していた。「国難」とまで呼んでいた。
ところが韓国での冬季五輪を控え、朝鮮半島は「和平ムード」が高まっている。北朝鮮が五輪に参加する。常識的に考えて、五輪が終わるまでは「緊張」というものがなくなる。
安倍は、憲法改正(自衛隊を憲法に加える)や軍備の拡大を主張する「根拠」を、その間、失ってしまう。
朝鮮半島が「平和」なら、日本も平和。北朝鮮が核ミサイル攻撃をしてくるわけがない。当然、ミサイル迎撃システムなども急いで構築する必要はない。国民に対する「説得力」がなくなる。五輪をきっかけに和平、南北交流への取り組みが進むなら、「緊張」はさらに減ることになる。
だから、今度は、中国を「仮想敵国」に仕立て、緊張をあおっているのである。
安倍は、
で、「政権維持」を狙っているということだ。
読売新聞の記事は、潜水艦の国籍を特定していない。その上で、
と書いている。
日本周辺で起きていること、そのすべての「事実」を公表することを防省は避けている。どこまで「事実」を把握しているか公表することは、防衛の即応能力がどれくらいあるかを公表することだからである。軍事力(軍事作戦)は「秘密」の方が効果的である。
ということは。
今回の「尖閣接続水域」に中国潜水艦(?)と軍艦があらわれたということも、特に「公表」する必要もなかったということにならないか。防衛省、自衛隊が「事実」を把握し、対処するだけで、何の問題もない。だいたい「国際法上認められている」行動があっただけであって、それは国民にとって「危険」でもなんでもない。しっかり自衛隊(防衛省)で対応ができている。
だからこそ、問題点(2)が重要なのだ。
これは国民一人一人が認識し、対応しなければなければならない問題なのかどうか。特に知らなくてもいい情報だとしたら、それを一面のトップで報道する理由は何なのか。
南北会談、北朝鮮の五輪参加は、北朝鮮(金正恩)にとって「大勝利」だろう。北朝鮮は単に戦争を引き起こすことを狙っているだけではない。平和について考えている。平和の祭典(五輪)に選手団を派遣する。このことを全世界にアピールした。もちろん、その期間中にこっそりさらに核ミサイル開発を推し進めるということもあるだろうが、そういう「見えない」行動よりも、五輪に参加する姿の方がアピール力は大きい。
一方、安倍は「慰安婦問題」が障碍になり、五輪開会式にも出席しない。日本国内向けには手を尽くして言い訳を宣伝するだろうが、韓国国民に対するアピール力はまったくないだろう。安倍のことを韓国国民はまったく信頼しないだろう。韓国の信頼がなければ、日本の安全なんかない。
今回の「接続水域」を中国軍艦が航行したというニュースは、安倍が積極的に公開したニュースということになる。
*
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#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
自民党憲法改正草案を読む/番外165
2018年1月12日読売新聞(西部版・14版)1面の見出し。
尖閣接続水域 中国潜水艦か/軍艦1隻が随伴/日本、厳重注意
記事には、こう書いてある。
政府は11日、沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域内を外国籍の潜水艦1隻が航行したと発表した。国籍は公表されていないが、中国軍艦1隻が随伴しており、潜水艦も中国海軍の所属とみられる。いずれも領海侵入はなく、11日午前に接続水域に入り、数時間後の11日午後に出た。日本政府は中国側に厳重抗議するとともに、航行の意図などについて分析を進めている。
尖閣諸島周辺の接続水域で外国籍の潜水艦が確認されたのは初めて。この水域での中国軍艦の航行は2016年6月以来、2回目。
疑問点がふたつある。
(1)日本の領海の「接続水域」(領海の外側)を中国の潜水艦、軍艦が航行することは何に違反するのか。読売新聞の記事は「他国の軍艦や潜水艦であっても、日本の領海を航行することは、敵対的な行動を取らない限り、国際法上認められている」と書いている。つまり、航行自体に問題はない。
さらに、こうも書いている。
今回は領海外の接続水域での航行となるが、尖閣諸島は中国が領有権を主張している。日本政府は中国軍艦などの航行を「一方的に緊張を高める行為」として容認していない。特に潜水艦が先行しており、安全保障上の懸念も大きい。
その通りなのだろうが、これはあくまで「日本政府」の主張。中国側は違うだろう。逆に言うだろう。
中国「自らの領土近く」主張
という見出しで、中国外務省の主張も併記されている。(これは省略)
「国際法上認められている」行為なので、これは決着がつかない。
ここから二つ目の問題が浮かび上がる。
(2)なぜ、このニュースが一面のトップなのか。
「尖閣諸島周辺の接続水域で外国籍の潜水艦が確認されたのは初めて。この水域での中国軍艦の航行は2016年6月以来、2回目。」とあるが、1回目のときは、読売新聞ではどう報じられたのだろうか。資料が手元にないのでわからないが、やはり一面のトップだったのだろうか。
記事の末尾に「中国の潜水艦をめぐっては、04年11月に沖縄県の多良間島周辺の領海に侵入し、海上警備行動が発令されたことがある」とある。このときの報道はどうだったのだろうか。
なぜ「報道」を問題にするかというと。
日本政府の誰が発言したのか明記されていないが、中国の行動を、
「一方的に緊張を高める行為」
と、わざわざその主張を紹介しているからである。
直前まで、安倍は北朝鮮の核ミサイル問題を重視していた。「国難」とまで呼んでいた。
ところが韓国での冬季五輪を控え、朝鮮半島は「和平ムード」が高まっている。北朝鮮が五輪に参加する。常識的に考えて、五輪が終わるまでは「緊張」というものがなくなる。
安倍は、憲法改正(自衛隊を憲法に加える)や軍備の拡大を主張する「根拠」を、その間、失ってしまう。
朝鮮半島が「平和」なら、日本も平和。北朝鮮が核ミサイル攻撃をしてくるわけがない。当然、ミサイル迎撃システムなども急いで構築する必要はない。国民に対する「説得力」がなくなる。五輪をきっかけに和平、南北交流への取り組みが進むなら、「緊張」はさらに減ることになる。
だから、今度は、中国を「仮想敵国」に仕立て、緊張をあおっているのである。
安倍は、
近隣諸国との緊張を一方的に宣伝すること
で、「政権維持」を狙っているということだ。
読売新聞の記事は、潜水艦の国籍を特定していない。その上で、
(潜水艦の)国籍は「探知能力を露呈する」(防衛省幹部)として公表していない。
と書いている。
日本周辺で起きていること、そのすべての「事実」を公表することを防省は避けている。どこまで「事実」を把握しているか公表することは、防衛の即応能力がどれくらいあるかを公表することだからである。軍事力(軍事作戦)は「秘密」の方が効果的である。
ということは。
今回の「尖閣接続水域」に中国潜水艦(?)と軍艦があらわれたということも、特に「公表」する必要もなかったということにならないか。防衛省、自衛隊が「事実」を把握し、対処するだけで、何の問題もない。だいたい「国際法上認められている」行動があっただけであって、それは国民にとって「危険」でもなんでもない。しっかり自衛隊(防衛省)で対応ができている。
だからこそ、問題点(2)が重要なのだ。
これは国民一人一人が認識し、対応しなければなければならない問題なのかどうか。特に知らなくてもいい情報だとしたら、それを一面のトップで報道する理由は何なのか。
南北会談、北朝鮮の五輪参加は、北朝鮮(金正恩)にとって「大勝利」だろう。北朝鮮は単に戦争を引き起こすことを狙っているだけではない。平和について考えている。平和の祭典(五輪)に選手団を派遣する。このことを全世界にアピールした。もちろん、その期間中にこっそりさらに核ミサイル開発を推し進めるということもあるだろうが、そういう「見えない」行動よりも、五輪に参加する姿の方がアピール力は大きい。
一方、安倍は「慰安婦問題」が障碍になり、五輪開会式にも出席しない。日本国内向けには手を尽くして言い訳を宣伝するだろうが、韓国国民に対するアピール力はまったくないだろう。安倍のことを韓国国民はまったく信頼しないだろう。韓国の信頼がなければ、日本の安全なんかない。
今回の「接続水域」を中国軍艦が航行したというニュースは、安倍が積極的に公開したニュースということになる。
*
「不思議のクニの憲法2018」は2月3日公開。
「詩人が読み解く自民党憲法草案の大事なポイント」「憲法9条改正、これでいいのか」(以上、ポエムピース発行)はアマゾンで発売中。
「天皇の悲鳴」は下のURLから。(開いたページの右側の「製本のご注文はこちら」のボタンを押して、申し込んでください。)
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