詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(103)

2024-04-28 21:42:59 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「夢」。

心はじっと見る、星を、空を、舵輪(だりん)を、

 詩そのものの魅力的な行ということになれば、引用した次の行なのだが、「訳詩」、つまり中井の訳の魅力ということになれば、この行である。
 この行には、日本語の特徴が生きている。助詞「を」の繰り返し。ギリシャ語は知らないのだが、たぶんギリシャ語で何かを見ているとき、ひとつひとつ「を」とは言わないだろう。(動詞「見る」のあとに、助詞ではなく、前置詞をつかうかもしれないが、対象のそれぞれに前置詞をつけないだろう。)そして、そのひとつひとつに「を」がなくても、読者は(私だけかもしれないが)、それらを見ていると思う。

 心はじっと見る、星、空、舵輪を、

 であっても、「意味」は変わらない。
 しかし、リズムが決定的に違う。「を」が繰り返されると畳みかける感じがし、スピードが上がる。星、空は二音節、舵輪は二音節半(?)という感じだが、その微妙な二音節半の「半」の増加が、次に大胆な変化がくることを予感させる。そして実際に、詩では、その次の行がすばらしく美しい。その美しさを引き出す準備が、この「心はじっと見る、星を、空を、舵輪を、」というリズムの中にある。これを支えているのが「を」の繰り返しである。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(102)

2024-04-27 23:10:19 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「カリグラフィー」。

空(そら)の非在の中に

 私は、後先を考えずにはじめてしまうので、こんなはめに陥るのだが、セフェリスの短い詩のなかから一行を選んで、そこに中井の訳の特徴と詩の魅力を重ね合わせ語るのは、ほとんど無謀な試みである。
 途中で方針転換をすればよかったのかもしれないが、もう終わりも近い。つづけてみるしかない。

 中井は「空」に「そら」とルビを振っている。前に「ナイル(河)」が出てくるから、その対比として「空(そら)」を想像するのは自然な気がするから、逆に「そら」というルビが気にかかる。ナイル河だから、その周囲に広がる砂漠を思う人がいるかもしれないし、中井は最初に砂漠を思ったのかもしれない。
 何もない砂漠。空(くう)としての砂漠。何もないから「非在」ということばもやってきたかもしれない。突然やってきた「空(くう)」と「非在」。そうした抽象的な概念と戦いながら、中井は「空(そら)」と書いている。原文が「空(くう)」ではなく「空(そら)」だから……。
 こんなことを想像するのは「非在」ということばがあるからだ。「非在」、何もない、だから「空(くう)」と感じるのは、私が日本人で、「空(くう)」ということばを知っているからかもしれない。
 そして、その「空(くう)」が「空(そら)」ということばで否定された瞬間、そこに書かれている「非在」もまた、抽象ではなく、具体として立ち現れてくる。具体としての「非在」というものなど存在しないかもしれないが、その存在しない「非在」が存在しないことを否定されて具体になるしかないという、激しい目眩のような瞬間が、この一行に凝縮している。
 詩人が書いた以上のことが、中井の訳語からあふれてくる。なんだか、全ての詩が、中井のことばをしてギリシャの詩人に詩を書かせているという感じがする。もちろん、そんなことは非現実的で、時系列的にいってありえるはずがないのだが。
 あるいは、中井は「訳詩」をとおして、誰も書かなかった新しい詩を生み出していると言った方がいいのかもしれない。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(101)

2024-04-25 23:41:53 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「ジャスミン」。

かわらぬ白さ。

 この一行を読んだとき、何か衝撃を受けた。「白さ」が、私の目のなかで、一瞬強くなった気がした。
 ギリシャ語のことは知らないが、この一行の思いがけない強烈さは、日本語ならではのものかもしれない。
 「白さ」は「白い」という形容詞の語幹に「さ」をつけることで、状態をあらわす名詞に変えたもの。日本語の形容詞は「用言」である。動詞と同じように活用がある。変化する。
 しかし、名詞は変化しない。名詞の白は白であり、変わることがない。
 形容詞の白いは「白かった」「白くなる」「白い」と変化する。「白さ」という状態は、変化する。形容詞派生だから、そこには変化が含まれているということなのか。(こういう論理でいいかどうかわからないが……。)
 その変わることを含んだことば「白さ」を「かわらぬ」ということばで否定するとき、「白い」という変化を含んだものが、変化を拒絶して、根源の輝きを投げかけてくる。そんな感じがした。
 「かわらぬ」という響き、表記も、何かそのことに影響している。
 「かわらない」では間延びする。「かわらぬ」という短い響き、強く重い響きがことばをひきしめる。「変わらぬ」では漢字をとおして「意味」が前面に出てくるが、「かわらぬ」の場合は文字から「意味」は出てこない。ひらがなの場合、「意味」は読み手が音のなかから引っ張りださないといけない。
 詩人の意識と、読者の意識が、その瞬間ぶつかり合う。その「衝撃」も「白さ」を輝かせるかもしれない。
 ギリシャ語も、その原文も知らないのに、こういうことを書くのは変かもしれないが、こうした短い「訳語」のなかにも、中井の鋭いことばへの感覚を感じる。

 もし、この一行が「白はかわらない」と訳されていたら、と想像してみれば、私の書いたことがわかってもらえるかもしれない。

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(100)

2024-04-24 23:56:02 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「栓をひねると出てくる温水は……」。

私のそばには他にいのちのあるもののないのを。

 三行の短い詩。
 引用した行では、音(母音)の揺らぎが「あ」から「お」へとかわっていくのだが、何か、音を飲み込んでしまうブラックホールのようなものが、その行のうねりのなかにあり、その重力のそばで音(声)が動く。そのときの不思議な音、聞こえない音が聞こえる。
 最後を「あるもののないものを」と書くと、文法的に間違いになるのか。意味が違ったものになるのかわからないが、その消えていった「も」(お)の音が、暗く暗く、真っ暗に瞬間的に輝いて、聞こえる。
 私は、引用しながら正確に引用しているか、何度も何度も確かめたが、確かめるたびに不安になるのだった。

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(98)

2024-04-16 23:00:00 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「海の洞の中には……」。

きみが誰かも分からず、きみも私を知らずに。

 恋の始まり。
 さて。
 「分かる」と「知る」。ギリシャ語では区別があるか。ギリシャ語が「分かる」「知る」を使い分けていたから、中井はそれにあわせて使い分けたのか。ギリシャ語には使い分けがないが、中井が使い分けたのか。これは大事ではない。大事なのは、中井が使い分けているということである。同じことばであっても訳し分けることはできるし、違うことばであっても同じ語(ことば)にすることもできる。
 だから、これは「中井語」そのものなのである。
 「私」は「私を知っている」。たとえば「きみが誰かも分からない」のが「私のいまの状態であると知っている」。その意識が「私」と「知る」を結びつけ、「きみ」は「私を知らない」ということばを選ばさせるのだ。「私は私が誰であるか知っているが、きみは私が誰であるか知らない」。非常に冷静な眼が働いている。
 ふたりの恋を描いているように見えるが、実は、「私」が恋をした瞬間のことを書いている。そのことを明確にする日本語だ。中井は、なによりも日本語を深いところでつかみとって動かしている。
 「きみが誰かも知らず、きみも私が誰かを分からずに。」と書き換えてみるといい。とても奇妙な印象になる。「意味」は頭では理解できるが、こころは追いついていかない。

 

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(97)

2024-04-14 23:03:55 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「過酷な瞬間と瞬間との……」。

きみの表情が次の表情にかわるあいだに、

 いちばん短い「瞬間」とは、どういうものだろうか。きみの「どんな表情」が「どんな表情」にかわったのか。この詩では「かわった」ではなく「かわる」と書いてある。このときの「かわる」は日本語では「現在形」ではなく「未来形」である。まだ「かわっていない」、「かわりつつある」のでもない。しかし「かわる」ことがわかっている。「かわる」ことを詩人は何度も見てきている。そして予測している。
 その予測は「過酷」と関係しているのか。その「過酷」がどういうものかわかるのは、私が引用した行の、次の行である。それは読んでもらうしかないのだが、そこに書かれていることは未来形「かわる」と同じように、いわゆる動詞の「原形(活用しない形)」で書かれている。
 ギリシャ語のことはわからないが、この「未来」を「現在形」と同じ形で書く文法は、考えてみると「未来形」よりも「過酷さ」を浮き彫りにする。この「未来形=現在形」とという文法は、そのことが「瞬間」であるよりも「永遠」を感じさせる。言いなおすと、そこには「時間(時制)」がない。活用がない。かわりに、不変の、普遍の、「事実」がある。
 それが「きみ」とともに、ある。「あなた」ではなく「きみ」とともに、ある。この「きみ」という訳語の選択も、とても深い印象を引き起こす。
 四行の、非常に短い詩なのだが。

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(96)

2024-04-11 22:44:56 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「もう少し先に行けば見えるよ……」。

ちょっと背伸びしていい?

 行く手を阻むのは丘だろうか。背伸びをすれば、視線が丘の頂点を越えて、その向こうが見える。でも、丘でなくても、何か遠くを見るとき、見えないものを見るとき、思わず爪先立つ。つまり背伸びをすることがある。
 待ちきれないのだ。
 この「肉体感覚」が、私には、とてもうれしい。読んだ瞬間に、私の肉体が動いてしまう。思わず背伸びをしてしまう。背伸びをして、遠くを、いまは見えないものを見たとき、見ようとしたときを思い出してしまう。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(95)

2024-04-10 20:50:45 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「眠り」。魅力的な行が多い。そのなかから、中井独特の「語感」をもった行を選ぶとすれば、

でも きみの影が伸び縮みしつつ他の影の間に消えるのを見ていた、

 「でも」は非常に口語的だ。一方「……つつ」はどちらかといえば文語的(書きことば的)だ。「でも」と書き始めたひとは、たぶん「伸び縮みしながら」と書くと思う。「伸び縮みしつつ」を優先させるひとなら、「でも」ではなく「しかし」と書くのではないか。
 私の印象では、この一行は、なんとなく「ちぐはぐ」である。
 しかし、それがおもしろい。
 この詩のタイトルは「眠り」だが、書かれていることはけっして「眠り」ではない。「半覚醒/半眠」という「はざま」の雰囲気がある。正反対のものが出会って、「半分」のところ(中間点?)で動いている感じ。それが「でも」と「……つつ」の出会いに、なんとなく似ている。
 こういうことは、書いている私がいうのも変なことだけれど、この私の「似ている」と感じる印象は、私の文章を読んでいるひとに伝わるのだろうか。疑問を抱えながら、私は書いているのだが、でも、詩というのはそんなものかもしれないなあ。
 こういう印象を引き出す「訳」は、中井以外ではありえないだろなあ、と思う。「文体」を統一したくなるのがふつうなのに、あえて、文体を乱すことで、「意味」だけではないものを伝える。表現する。
 少し(かなり)乱暴な言い方になるが「意味/内容」ならば「正確」に伝えることはできても(翻訳はできても)、「文体(の持っているニュアンス)」で伝えるのはとてもむずかしい。その「むずかしさ」が刺戟的である。そこには、確かに「他人」がいる、という印象がある。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(94)

2024-04-03 23:43:44 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「アルゴナウトの人たち」は、突然はじまる。どんな詩も(文学も、あるいは芸術は)突然はじまるものかもしれないけれど。

して、魂よ、

 「して」は「しかして」「しこうして」が縮まったものなのかもしれないが、それが「しかして」「しこうして」、あるいは「そうして」であったとしても、やはり突然感間がある。「しかして」が接続詞なのに、その前に何もない。何かが切断されたまま、接続詞が動いて、次のことばがあふれてくる。そうなのだ。それは、接続詞には違いないのだが、前に何が書かれてあったかよりも、これから書くことの方が大事なのだ。実際、この詩では、引用し、何かを書きたいという行が次々に登場するのだが、それについて書くよりも、やはり書くべくことは「して」なのである。
 「しかして」よりもさらに短く、「して」のみ。
 ここには、漢文体が口語になって動くような強烈さがある。緊迫感がある。動きにゆるみがなく、スピード感がある。めんどうくさいことは蹴散らして、本気で言いたいことをいうという気迫がある。「して」は気迫に満ちたことばだ。
 たったひとことで、充実した緊密感を鮮やかに描き出す中井の訳は、ほんとうにおもしろい。
 私は、こころも、精神も、魂も存在しないと考える人間であり、特に魂ということばは好きではなく、うさん臭いと感じるのだが、「して」につづくことばは、こころや精神ではなく、魂でなくてはならないという感じがする。とても強く響きあっている。

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(93)

2024-03-31 21:58:25 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 ここからはヨルゴス・セフェリスの作品。最初は「愛の歌」。

風のバラが無知なぼくらをさらったのだね。

 この一行の「意味」はわかったようで、わからない。風、バラ、無知、ぼくらということば交錯する。「さらう」という動詞が、その交錯をさらに攪拌する。万華鏡をのぞいたときのように、何か、とてもあざやかなものを見たという印象がある。しかし、それを論理的に説明することはできない
 この一瞬の混乱、そしてその混乱を美しいと思うとき、そこに詩が存在する。
 中井のように論理的な人間が、この混乱を混乱のまま一行にしているところに、中井の訳詩のおもしろさがある。「論理的に説明してもらえますか?」と質問してはいけないのである。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(92)

2024-03-28 22:22:31 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「アクシオン・エスティ、創世記より」。

この世界。この小さな世界の大きさ!

 「この世界」と呼ばれているものは、世界のなかにある「ひとつ」の存在である。たとえばオレンジの花。それは世界のなかにあることによって、世界と向き合っている。そのとき、「この世界(ひとつの存在)」は、それをとりまく世界(複数のつながり)に比べると確かに「小さい」。しかし、世界と向き合っている限り、そこには世界に対応するだけの「秘密」がある。その「秘密」は世界に存在するすべての「秘密」に同時につながっている。
 「秘密」ということばを詩人はつかっていない。中井の「訳」のなかには登場しない。しかし、私は、その書かれていない「ことば」を読んでしまう。「小さい(な)」と「大きさ」が結びつく一瞬に。
 「小さな世界」のなかに「大きな世界」が吸収され、どこまでも凝縮していくのか。「小さな世界」が「大きな世界」のなかに飛び出し、どこまでも拡散していくのか。往復運動を繰り返しながら、つぎつぎに新しい世界になっていくのか。新しいつながりが生まれるのか。終わりのない時間が一瞬になり、一瞬が永遠にかわる強さが、この一行にある。

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(91)

2024-03-27 22:40:11 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(91)

 「石と血と鉄とで……」。

心の樹は枝を広げて行く。それが私の眼に見える。

 ここに書かれている「眼」は「肉眼」のことである。けっして「心眼」ではない。「心の樹」と比較すると、その意味がわかる。「心の樹」は、いわば「想像」である。つまり、実在するのではない。それを「心の眼」で見れば、それら「空想の空想」になってしまう。「肉眼で見る」とき、「心の樹」という非現実(空想)は「肉体」の力よって現実の世界に引っ張りだされてくる。つまり「実在」になる。
 詩人は「見る」、そして「ことばにする」。そうすると、それは「現実」になる。
 ここには何か、ソクラテス、プラトンの時代からの、偉大な(強靱な)ギリシャ人の集中力がある。真摯な力がある。他の部分では「きみ」「僕」ということばをつかっているが、この行だけ「私」になっている。何か、あらたまってことばを動かしている。「あらたまる」のは、集中するためであり、真摯になるためでもある。中井の「訳語」は、そういった変化を抱え持っている。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(90)

2024-03-27 00:07:01 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「日がな一日野を歩いた……」。

生命の眼を覗く。生命の眼は我等の眼差を返す。

 同じことばと違うことばが交錯する。あえて書くと、「我等の眼が生命の眼を覗く。生命の眼は、我等の眼に、我等の眼差しを返す」。生命の眼のなかで、我等の眼差が反射し、帰ってくる。我等が覗いたのは、我等の生命の眼。そして、それは「反射する」ではなく、もっと積極的な「返す」という動き。「反射する」なら、鏡や水でもできる。しかし、「返す」は違う。そこには「動き」がある。「覗く」が動きだから、やはり動きとしての「返す」が絶対的に必要なのだ。
 繰り返される同じことばが、違うことばのなかにある「本質的な同じもの」を強烈に浮かび上がらせる。生きていることは、「動く」ことである。「動く」ものは死なない。つまり、決して消えない。なくならない。それを「生命」と呼ぶ。

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(89)

2024-03-25 21:23:39 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「マルメロの林にたゆとう風……」。

蘇りの形象は

 二連目の、第一行。これだけでは何のことかわからない。主語(あるいはテーマ)が提示されているだけである。つまり「文(名詞+動詞)」になっていない。しかし、「文」にならないことによって、逆にドキリとさせるものを含んでいる。この一行に、ほんとうに「動詞」は存在しないか。
 「蘇り」のなかに「蘇る」という動詞がある。ギリシャはいつでも「蘇る」と詩人は言っているのだ。それは、どんな風にか。この詩に書かれている「形」に。詩人が「形象」と呼んでいるすべての「形」に蘇る。だれも、それを壊せない。だれも、それを阻止できない。なぜなら、それはことばとして生きているからである。
 この一行は、もっとわかりやすい形に翻訳できたかもしれない。しかし、中井は、ここではあえて「わかりにくい」形で翻訳しているように感じられる。わかりやすかったら、ことばは読みとばされ、既成の文体のなかに消えてしまう。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(88)

2024-03-20 22:29:20 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「私は愛する名に生きた……」にも「再生」に通じる一行がある。

我が生命(いのち)尽きるとも変わらぬ海の轟きの中に。

 一行と書いたが、この一行は一連目の最後と最終連の最後にある。つまり、繰り返されている。だから二行ということもできるのだが。
 海の轟きは変わらない。だから、私はいのちが尽きても「再生する」と私は「誤読」するのである。そして、「我が生命」の「我が」とは「私」ひとりではなく、「我々」なのである。「我々」だからこそ、「私」はいつでも「我々」なかに「再生」する。「我々」とは「海の轟き」である。ギリシャは海と共にある国だ。ギリシャ人は海と共に生きている。
 ところで。
 この「再生」ということばを抱え込むこの三篇には、もうひとつ、共通するものがある。タイトルがいずれも書き出しの一行と重複する。ただし、本文に「……」はない。タイトルにだけ存在する。
 もしかすると、原文にはタイトルがないのかもしれない。「無題」の詩かもしれない。しかし、中井はそれを区別するために書き出しの一行をタイトルとし、そのあとに「……」を追加したのかもしれない。「……」を重複させることで、三篇をひとつの作品であると暗示しているのかもしれない。(タイトルに「……」がある作品はほかにもあるのだけれど。)
 それにしても、というのは奇妙な言い方になるが。
 このエリティスという詩人は、なんとギリシャ的なのだろうと思う。あらゆることばが、ギリシャ悲劇やプラトンの著作にあったような気がしてくる。私はギリシャを実際に知っているとは言えないけれど、どのことばからもギリシャの光、匂いが噴出してくる。
 

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