詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

読売新聞は、いつから台湾を「国」と呼ぶようになったのか。

2021-06-19 10:28:54 | 自民党憲法改正草案を読む
 
6月19日の「編集手帳」が、先のG7の復習(?)をしている。
https://www.yomiuri.co.jp/note/hensyu-techo/20210619-OYT8T50000/
NATOがなぜ誕生したかを、架空のドラマに登場する米国務長官のことばを引用して説明している。「大戦を招いたのは近隣国間の軍事力の格差よ。強大な武器を持った国は何かが欲しくて弱い国を征服したくなる。NATOができるまではその繰り返し…」
そのあとで、台湾問題に触れて、こう書くのである。
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「先頃の先進7か国首脳会議の宣言に台湾問題が初めて明記された。現状変更に向かう中国の動きを 牽制したものである。(略)海峡を挟んで位置する国が、「征服したくなる」欲求を抑える気もないことは言うまでもない。先々が不安だ。」
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ドラマ(架空の話)と現実をごちゃまぜにするのは「論理」としておかしい。さらに、その論理のなかに「台湾=中国の隣国」といういままで採用して来なかった論理をすりこませて結論を展開するのはどうしたっておかしい。
オリンピックにだって、台湾は「国」としては参加していない。「地域」として参加している。菅が強行開催する予定の東京オリンピックにだって、台湾が参加するとしたら「地域」として参加するだろう。けっして「台湾」という「国」として参加するわけではない。(他のジャーナリズムも同じはず。)
いま、なぜ、台湾を「国」と定義するのか。
台湾を「国」にしたがっているのは、だれなのか。日本か。アメリカか。
アメリカである。
台湾を「国」として認定し、台湾と国交を締結する。その後、アメリカ軍基地を台湾につくる。もし、台湾が独立した国であるなら、台湾がどこの国と国交を結ぼうが、他国はそれに干渉できないし、台湾がアメリカ軍基地を受け入れることについても干渉はできない。反発は表明できるが、阻止することはできない。
アメリカは台湾を基地にして、中国(本土)に圧力をかけたいだけなのだ。「小国」を守るという口実で、「大国」との敵対をあからさまにしてみせるだけなのである。
ケネディ・フルシチョフ時代のキューバを思い出す。
そして、同時に、私は沖縄を思う。
アメリカは台湾を沖縄のように利用しようとしている。
菅がアメリカの姿勢に同調するのは、すでに沖縄をアメリカの支配下に置くことに同意しているからである。沖縄がアメリカの支配下になっても、何も感じていないからである。
ここから逆に考えてみよう。
日本は沖縄が日本の一部(領土)であることを認識しながら、沖縄がアメリカの基地となって、対中国政策に利用されることを、沖縄県民の(地本国民の)人権侵害ととらえていない、ということなのだ。沖縄がどうなろうが、日本本土(なんという、いやらしいことばだろう)さえ安全ならばそれでいい、という考えなのだ。
こう考える菅政権が、台湾がどうなろうが、台湾にアメリカ軍基地ができれば、日本の安全はより高まる、と考えるのは当然である。
こういう考えを、正面切って展開するのではなく、ドラマのなかの米国務長官のことばを引用しながら展開する。
ここに、なんともいえない、むごたらしい暴力が潜んでいる。
読者をあまりにもばかにしている。
さらに。
「小国」に対する「大国」の侵略という構造で問題にするなら、いま問題にしなければならないのはイスラエルとパレスチナであろう。イスラエルはパレスチナ人の住んでいる土地に移り住み、どんどん「国」を拡大していった。パレスチナ人は住むところを失い続けている。
なぜ、パレスチナ人を支援しようという動きが、アメリカ・日本の連係として起きないのか。
理由は簡単である。アメリカはイスラエルを「国」とは考えているが、パレスチナを「国」と認めていないからである。イスラエルとパレスチナの間で起きていることを「戦争」(人権侵害)と認めていないからである。
そういう国が、台湾を「国」として支援し、中国という「国」に圧力をかけようとしている。
こうした論理矛盾に目をつむり、知らん顔してドラマの中の米国務長官のことばを引用し、「正論」を展開しているつもりになっている。「正論」を装って、アメリカの暴力を蔓延させようとしている。
引用で省略した部分を読むと、そのごまかしの「手口」の薄汚さがいっそう際立つ。
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JR仙台駅の大型モニターに今、台湾の人たちの笑顔があふれているという。東日本大震災の際に届いた義援金や励ましへのお礼を伝えたところ、礼の礼として「東北が大好き」「東北を旅行したい」などの思いを紙に書いて掲げる人たちの映像が返ってきたそうだ
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台湾の人(国民?)は、こんなに日本人に親しみを感じている。台湾の安全を守るために日本も協力しよう。アメリカと一緒になって、中国に立ち向かおう。そう言いたいがために、台湾のひとたちの「笑顔」を利用している。
国際政治の問題と、市民交流の問題をごちゃまぜにして、市民の味方をするふりをして、政治の暴力を隠している。
悪辣極まる論理展開である。
 
 
 
 

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