2016年09月24日読売新聞朝刊(西部版・14版)1面に「「生前退位」会議 来月中にも初会合」という見出しで、「天皇の公務負担軽減党に関する有識者会議」が設置されたというニュースが載っている。メンバーは6人。(初報は23日の夕刊)3面には解説が載っている。
気になる部分を取り上げる。
「皇室や憲法、歴史の専門家などからヒアリングを行い」ということは、6人のメンバーのなかには、「皇室や憲法、歴史の専門家」がいないということ意味する。つまり、「生前退位を可能にした場合、皇室典範との整合性、憲法との整合性はどうなるか」ということを直接的に発言できる人がいないということ。
それはそれで、メンバー以外から「ヒアリング」をするから問題がないということなのかもしれないが。
そのとき、メンバーがだれにどんなヒアリングをしたか、つまりどんなことを問いかけ、どんな答えが返ってきたか、その「やりとり」はどうなるのだろうか。「有識者会議」そのものが非公開だろうし、当然ヒアリングも非公開だろう。これでは、いったいどんな議論が行われたか、国民には「想像」もできない。
「政府は現在の天皇陛下に限って退位を可能にする皇室典範の特例法の制定を軸に検討を進めている」とあるが、もう政府方針が決まっているなら、「有識者会議」は単なる「アリバイづくり」になる。政府は独断で「特例法」を提案しているのではなく、「有識者会議」を設置し、有識者の意見を踏まえて結論を出したという「アリバイ」づくりにすぎない。
3面の解説に、次の文がある。
このときの有識者会議の結論「女性・女系天皇の容認」に安倍が反対したことはすでに書いたが、もし「皇室や憲法に詳しい専門家」を有識者会議のメンバーに加えたら、「特例法ではだめだ、皇室典範の改正が必要。そうしないと憲法上も問題が出てくる」という意見が出てくる可能性もある。
そうなっては「困る」と安倍が考えたということだろう。
3面の解説のつづき。
「会議をとりまとめる」、つまり「意見集約の資質」が大切であって、真剣に天皇制度の将来を考えることなど、最初から考えていないのである。そして、政府が「特例法の制定」を検討しているのだとしたら、もう、最初からそれにあわせて「ヒアリング」がおこなわれ、「特例法」にふさわしい意見だけが「集約」されるということだろう。
さらに興味深いのは、
つまり、今回の有識者会議では、「簡単に自説を曲げることができる」メンバーが選ばれたということである。3面の見出しに「人選 にじむ安倍色」とあるが、安倍の考えにあわせて「結論」を出してくれる人間をメンバーにしたということだろう。
1面の文末に、
とある。
逆算すると、年内にも有識者会議の「結論」が必要となりそうだが、10、11、12月の3か月で、「ヒアリング」を行い、さらに「意見の集約」を行うというのは、非常に期間が短い。6人全員が集まるための調整もそう簡単ではないだろう。
3面に、
とあるが、ほんとうに「相当な数」のヒアリングをおこない、それを「集約」するのだとしたら、膨大な時間がかかるだろう。
また「民主主義」というのは、他人の意見を聞き、自分の意見も述べ、そのうえで意見を調整することだと思うが、ヒアリングで「生前退位に反対」「生前退位に賛成」という意見が出たとして、その意見を述べた人たちは、どうなるのだろう。他人の意見を聞き、あ、そうだ、と考えを改めるということもあり得るはずなのに、そういう「対話」はおこなわれず、かわりに「有識者会議」の6人が、かってに「意見調整」をするというのでは、民主主義でもなんでもないだろう。
最初から、「意見」を聞く気などないのに、そのふりをしているだけだ。
以前に書いたが、安倍はなぜ「特例法」にこだわるのか、なぜ「特例法」の制定を急ぐのか、それを考えてみる必要がある。「特例法」を持ち出す前に、官邸が「生前退位」ではなく「摂政」を天皇側に持ちかけていた、それを天皇が拒んだということを考えないといけない。
自民党憲法改正草案の「第六条第十項の4」
現行憲法では「助言」と定められていたものが、改憲草案では「進言」。「これこれしなさい」とすすめ、それに従って天皇が動く。操り人形としての天皇。それには、天皇そのものよりも「摂政」の方が都合がいい、と考えているのだろう。
気になる部分を取り上げる。
生前退位と公務の負担軽減にテーマを絞り、皇室や憲法、歴史の専門家などからヒアリングを行い、提言をとりまとめる。政府は現在の天皇陛下に限って退位を可能にする皇室典範の特例法の制定を軸に検討を進めている。
「皇室や憲法、歴史の専門家などからヒアリングを行い」ということは、6人のメンバーのなかには、「皇室や憲法、歴史の専門家」がいないということ意味する。つまり、「生前退位を可能にした場合、皇室典範との整合性、憲法との整合性はどうなるか」ということを直接的に発言できる人がいないということ。
それはそれで、メンバー以外から「ヒアリング」をするから問題がないということなのかもしれないが。
そのとき、メンバーがだれにどんなヒアリングをしたか、つまりどんなことを問いかけ、どんな答えが返ってきたか、その「やりとり」はどうなるのだろうか。「有識者会議」そのものが非公開だろうし、当然ヒアリングも非公開だろう。これでは、いったいどんな議論が行われたか、国民には「想像」もできない。
「政府は現在の天皇陛下に限って退位を可能にする皇室典範の特例法の制定を軸に検討を進めている」とあるが、もう政府方針が決まっているなら、「有識者会議」は単なる「アリバイづくり」になる。政府は独断で「特例法」を提案しているのではなく、「有識者会議」を設置し、有識者の意見を踏まえて結論を出したという「アリバイ」づくりにすぎない。
3面の解説に、次の文がある。
2005年に女性・女系天皇を容認する報告書を出した小泉内閣の有識者会議では、10人中2人が皇室や憲法に詳しい専門家だった。
このときの有識者会議の結論「女性・女系天皇の容認」に安倍が反対したことはすでに書いたが、もし「皇室や憲法に詳しい専門家」を有識者会議のメンバーに加えたら、「特例法ではだめだ、皇室典範の改正が必要。そうしないと憲法上も問題が出てくる」という意見が出てくる可能性もある。
そうなっては「困る」と安倍が考えたということだろう。
3面の解説のつづき。
今回の人選について、菅氏は「組織の運営や会議のとりまとめの経験が豊富な方々を選んだ」と述べ、皇室などの専門家はヒアリング対象とし、有識者会議は意見集約の資質を人選基準としたと説明した。
「会議をとりまとめる」、つまり「意見集約の資質」が大切であって、真剣に天皇制度の将来を考えることなど、最初から考えていないのである。そして、政府が「特例法の制定」を検討しているのだとしたら、もう、最初からそれにあわせて「ヒアリング」がおこなわれ、「特例法」にふさわしい意見だけが「集約」されるということだろう。
さらに興味深いのは、
首相官邸筋は「専門家は簡単に自説を曲げることができず議論がまとまらない上、だれを選ぶかで方向性が推測できてしまう」と解説する。
つまり、今回の有識者会議では、「簡単に自説を曲げることができる」メンバーが選ばれたということである。3面の見出しに「人選 にじむ安倍色」とあるが、安倍の考えにあわせて「結論」を出してくれる人間をメンバーにしたということだろう。
1面の文末に、
会議の議論や世論の動向を見極め、早ければ来年の通常国会への関連法案提出をめざす。
とある。
逆算すると、年内にも有識者会議の「結論」が必要となりそうだが、10、11、12月の3か月で、「ヒアリング」を行い、さらに「意見の集約」を行うというのは、非常に期間が短い。6人全員が集まるための調整もそう簡単ではないだろう。
3面に、
ヒアリングを行う専門家は「相当な数に上る」(首相周辺)とみられ、生前退位の是非をめぐっても賛否が割れる可能性が高い。
とあるが、ほんとうに「相当な数」のヒアリングをおこない、それを「集約」するのだとしたら、膨大な時間がかかるだろう。
また「民主主義」というのは、他人の意見を聞き、自分の意見も述べ、そのうえで意見を調整することだと思うが、ヒアリングで「生前退位に反対」「生前退位に賛成」という意見が出たとして、その意見を述べた人たちは、どうなるのだろう。他人の意見を聞き、あ、そうだ、と考えを改めるということもあり得るはずなのに、そういう「対話」はおこなわれず、かわりに「有識者会議」の6人が、かってに「意見調整」をするというのでは、民主主義でもなんでもないだろう。
最初から、「意見」を聞く気などないのに、そのふりをしているだけだ。
以前に書いたが、安倍はなぜ「特例法」にこだわるのか、なぜ「特例法」の制定を急ぐのか、それを考えてみる必要がある。「特例法」を持ち出す前に、官邸が「生前退位」ではなく「摂政」を天皇側に持ちかけていた、それを天皇が拒んだということを考えないといけない。
自民党憲法改正草案の「第六条第十項の4」
天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
現行憲法では「助言」と定められていたものが、改憲草案では「進言」。「これこれしなさい」とすすめ、それに従って天皇が動く。操り人形としての天皇。それには、天皇そのものよりも「摂政」の方が都合がいい、と考えているのだろう。
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