Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

雨休みの午後

2011-12-06 20:36:03 | その他
冬場になっているのに遺跡発掘という名の土方バイトへ出かける日は下着の着替えを持って行く。汗と冷気が紙一重で均衡している戸外労働は初めての体験だ。地面をすこしづつ掘り下げる道具は角型スコップとジョレン鍬の二種類で、これを根気よく連続して数時間も使っていると汗が噴きでる。木綿のTシャツから水分が滴るくらいの汗をかくこともある。噴き出た汗をかいたまま仕事を続けているうちは良いが、中断すると今度は外気の低温に直撃されることになる。体温の調節が狂って風邪を引く年配者もいるが、いまのところ難を逃れて土方仕事に専心できている。

自動車には暖気運転といってイグニッションキイをスタートしてしばらくエンジン回転を整える習慣があるが、土方労働で失速しない為にはこのアイドリングと同じように体を慣らすこと、汗の対策処理が大切という教訓をこの2週間で学んだ。よい年をして酷な仕事を!と哀れむ人も予想されるが、慣れればラクなものである。心臓が早鐘を打たないペースを維持しつつ、持ち前の親から授かった丈夫な足・腰・腕を無心にポジティブに使える喜びは大きい。週が替わって二日目の今日も曇天の薄ら寒さを感じながら、角型スコップで地面を砕いているといつのまにか、大量の汗が噴きだす。午後からの仕事に備えて汗まみれのTシャツを昼休みに交換する。朝の時間帯で感じていた体の重みがいつのまに消えている。午後3時までの2時間続く土方仕事は時間が長いね!などと、やはり定年退職して体がまだまだ丈夫な同じ年配の仲間とボヤキ、笑うことも貴重な気の紛れに違いない。一息つこうと雲の多い空を仰いでいたら、大粒の雨が予報どおりの時間に天から落ちてくる。

用地を囲む竹藪でしばらく雨宿りをするが、管理者が作業中止を告げて思わぬところで早上がり労働になってしまった。帰宅してコーヒーを飲み、ミカンを食べ、数日前に入手した沖縄・壷屋の「末吉窯」作になる魚紋抱瓶をしばし眺める。類型的な作ながら、厚手の土味がよい、そして跳ねる魚の印刻の線描がこれまた土方仕事ぽくてよい。490円で買った沖縄民芸の抱瓶を眺める時間を天の恵みで与えられた早上がりの午後である。

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3 コメント

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遠い日の記憶 (丁自元)
2011-12-13 16:10:29
嘗て横浜にあった鍋島製作所でアルバイトをしていた頃の話です。仕事の内容は「いすゞエルフ」の座席のパイプを割りピンでつなぐという単純で過酷な作業で、始業から10時と昼休み、3時の休みを除き、日長一日、割ピンを通し座金をはめ込みピン先を割るといった作業を繰り返し続けていました。勤めが飽き飽きし始めた頃、その会社を定年退職したべテランの嘱託のじいさんが「あんちゃん、あそこのシャーリングの音が聞こえるかい」音は「ガチャンコ、ガチャンコ」と無機的な連続音を立てていました。「ほら、おまんこ、おまんこって聞こえるだろう」じっと耳を澄ますと、そのように聞こえてきました。以来仕事に飽きると、じっと耳を澄まし、シャーリングの音を聴いていました。クーラーのない作業場で一夏、バイトを続けることが出来ました。
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丁自元さんへ (鬼胡桃)
2011-12-14 14:21:12
つげ義春が下町でメッキ工をしていた頃の体験を描いた初期漫画の世界と同じそこはかとない
人生への鬱屈が漂っているコメントですね。こういう空気を対置できる少数の見者がいることで、ブログの無為も貴重なる心の滋養となります。
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鍋島製作所・その後 (丁自元)
2011-12-16 11:29:41
何年かたって、鍋島製作所を訪れたところ、会社は倒産して空き地になっていました。
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