Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

肉体労働仲間と六月茶会

2012-06-04 06:14:39 | その他
昨年の11月からこの5月にわたるおよそ六ヶ月間の遺跡発掘仕事が終え、早いもので二週間が経ってしまった。自分が採用されたときの11月に一緒に土仕事を始めた数人の仲間と時々会うことになっていて、その第一回茶会が日向の我が陋屋で行われた。それぞれ、平塚や愛甲石田といった近在からクルマやバスを乗り継いできた三人と、緩やかな半日をすごす。4人とも同世代、戦後の団塊世代の渦中で揉まれた連中である。
パワー競争の馬鹿馬鹿しさも多分体得していて往時の権威をひけらかすような場違いな俗物は皆無である。

Tさんとは、薩摩地方に知己がいる関係で話が弾み、楽とはいえぬ冬の肉体労役の合間に交わした逆説めいた冗談の応酬で癒やされた。薩摩地方の節句時期に食べる「あくまき」のあの抽象めいた上品な味を讃えたら、とうの「あくまき」嫌いなTさんから不思議な関東人と評されたことが印象に残っている。

Sさんは最初に土仕事を一緒にして、いまでも資料整理の類の内務仕事で職場に残っているようだ。Sさんとは、彼が住んでいた奈良の話題が穏和に抑制された声のトーンとともに心地よく響いたものだ。
かって自分も歩いたことのある奈良の浄瑠璃寺付近、南山城(京都)との境目の山野に佇む景物の具体的印象等を打てば響くように語り会える労役仲間などはそうそういるものではなく、Sさんの奈良印象譚は観光客的次元よりも、陶芸家の富本憲吉が世田谷の祖師谷から故郷の奈良・安堵村へ移住して折々のスケッチなどで内在化した景物観と同じような匂いが漂ってきて、これもしみじみと癒やされる。

Kさんはあとから労役仲間に参加した人だが、苗字の異形に因んで知り合った。
伊勢原・厚木などの郷土史に詳しくその知識のおこぼれを頂くには格好な好事家とお見受けした。Kさんの苗字は珍しいもので「PERCEPTION」の日本語を逆さに表した文字だ。現象学徒の自分にはすぐに「最後の哲学者」メルロー・ポンティーの著作物のタイトルが浮かんでくる。しかし日本語は面白いもので逆さになると、メルロー・ポンティーの明晰で透明な語感も西田哲学や道元禅師の用語風に抹香を帯びるから不思議である。

ともあれ緩めに気のあった四者は、高部屋の美味な蕎麦屋「せんしゅう庵」でそれぞれ、「京風にしん蕎麦」「野菜天丼蕎麦セット」「カレー南蛮」「天ざるセット」などを所望して、食後は日向薬師の境内まで木立の中をゆるゆると登ってみる。途中の杉などの巨木、素朴な馬頭観音石佛が要所で霊的に目を休ませてくれて、本堂の改修工事で殺風景な境内の仮本殿ではそれぞれが小額の賽銭を投げて思い思いの祈願をすることにした。

メンバーの入れ替わりはあっても時々、形而下的肉体低賃金労役からの無事な生還を祝して月に一度くらいのペースで昼飯会をするという職場解散直後に申し合わせた趣旨は半日の時間を経て続行してもよいなという気分で夕暮れを迎えることになった。






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