Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

大岡さんの訃報

2012-06-06 11:27:39 | その他
青梅の熟す早さや友逝きて (新)

夜勤当直の深更時間に大西巨人「巨人随筆」(講談社1990年刊)小川国夫「昼行燈ノート」(文芸春秋1997年刊)など今までに読み損じていた気になる我が精神的師匠達がものした書物を読んでその本格的言語の良質性に感嘆していたら、しばらく交流の途絶えていたビンテージオーディオ仲間の遠き友とも呼べる大岡さんが癌で亡くなったという悲報が入ってきた。
自分のオーディオ趣味人生にはいくつかのエポックがあって、特にスピーカーの変遷で忘れられないのは、大岡さんから譲り受けた英国グッドマン社のモノラルスピーカー、AXIOM-150MK2のことである。

天然木の少し大きめな箱に収まった12インチフルレンジ一発のユニットである。その昔五味康祐などがオーディオに狂い始めた時代に、秋葉原の「テレオン」などが輸入元になってけっこう売れた品物らしい。ユニットの背面を支えるアルニコマグネットの奢った威容は実利を超えた英国風趣味性の徹底を感じてならない。

大岡さんがこれを手放した理由は、何処でも共通している我らがオーディオ趣味人の共通敵!奥さんの排撃によるもので、その理由は当時モダンリビングの美観を損なうからというものだったらしい。ワンボックス車の中で諸所を遍歴しているこの不遇なスピーカーに同情して安値で譲り受けたのが渋谷・桜丘町時代のことだった。それからけっこう長い期間、四谷、日向薬師などの非モダンリビング空間でこのスピーカーは水を得た魚のようにモノラルソースの精髄をいつもほどよく表現してくれたものである。
昔、入手したアメリカウエストミンスターのアナログLPになるイタリアのチェロ奏者アントニオ・ヤニグロのバッハ「無伴奏チェロ組曲1・3」などを我が終生の座右盤たらしめたのも、いつもこのスピーカーのお蔭だと思っている。

他界してしまった大岡さんには申し訳ないが、このスピーカー、英デッカのコーナー型ステレオスピーカーと狭い部屋で二股をかけた結果、競合してしまい川崎の好事家宅へとしばらく前に去っていったことを報告しておきます。

大岡さん、天国では現世の排撃には出くわすこともないでしょうから、どうか大事にされていたとお見受けする、あの名ツイーター3000Hを搭載して、パティー・ページやダイナ・ショアのボーカルを麗しく鳴らしたアルテック・メロディストでも存分にお聞きくださいね。 合掌!

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