Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

梅日和

2012-02-27 19:38:14 | JAZZ
ビル・エバンスのピアノジャズは一生の伴侶みたいなものだが、好きな時期が偏っていてアート・ペッパーと同様に初期の演奏が大好きで70年代以後のエバンスは滅多に聴くことがない。日曜日は先だっての延長で二宮町の少し西に位置する西湘の国府津、下曽我へ春の兆しを浴びにドライブすることになった。本日のBGMのCDを苦慮した結果で選んでみたのが1977年の5月にカリフォルニアで録った「I WILL Say Goodbye」だ。後期のエバンスのどこが嫌いかと言うと音の毛羽立ちが華美で強いこと、演奏に流れる心情の憂愁は昔となんら変わらないのにどの曲を聞いても気忙しく苛立っているというのが総括的印象で何時のまにか敬遠してしまって日が経っている。それでもエバンスのピアノが捨て難いことを改めて知らしむ曲が後期にも潜んでいるから困ったことになる。エバンスのピアノ世界は現代都市生活のラベル・ドビッシーと同じ位相というのが持論だが、多分、ウエストコーストに拓けゆく海の煌きに啓示されたようなこのCDに収まっている3曲目の「SEASCAPE」などの寛いだ心情に満ちている小品を聴けばその思いは益々強まってしまうことになり、苦渋に満ちた日々の休日の癒やしとして十分に補完されるものである。海沿いの国道1号を上記のエバンストリオをBGMにしながら逍遥したのが国府津を北に入った梅の里、下曽我だ。小田原の梅干しはここが産地だが、この春は梅の開花がとても遅れている。曽我の別所という所には大きな梅林があるのに三分咲きの風情だ。この付近は人が集まってくる梅林付近よりも傾斜する丘陵地のみかん山に混植している梅が絵になることに多くの人々は気がついていないから、小田原の町を遠望する風景はほとんど独り占めしているようなもの。

この下曽我で春をちょっぴり味わって、そこからほど近い小八幡という海岸方面にあるカフェ「邪宗門」へ寄ることも休日の目的だ。三寶寺という浄土宗のお寺に併設するオーディオにこだわったカフェに噂を聞いて初めて寄ってみた。残念!コーヒーが沸かし置きで大衆的な中華レストラン「バーミヤン」のポットに入ったドリンクバーで供されるものと同格の味だ。調度品のグレードが高いだけにそのアンバランスはいかにも残念だ。オーディオはパラゴンが聞けずに8インチ程度の励磁型のフルレンジスピーカーが真空管アンプ、EMTの業務用CDプレーヤーで静かに鳴っている。パラゴンとこの励磁型スピーカーを交代して鳴らしているとは女店員さんの弁だ。日本の民謡曲をチェロ独奏するCDが小さなボリウムで流れている。再生音の印象は清澄そのもの。リアル志向とは対極にある軽やか蒸留水のせせらぎを聞いているようでこれはこれで気持が浄化される音に違いない。今度訪ねる時は腰を据えてパラゴンも聴いてみたいと思いながら、数ある「邪宗門」カフェに連なる同店を後にした。


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