Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

山本容子のジャズ絵本

2011-09-12 09:19:05 | JAZZ
珍しく横浜・戸塚駅付近を訪れた。時間の隙間に洒落たつもりでネーミングしたような「トツカーナ」と称する駅の隣に聳えるビルをぶらつくことにする。昼飯はその中にある定食屋「大戸屋」で鯖の半身を焼いたものを食べる。いまは冷凍管理が優れているせいか、鯖といえばノルウエー産が主流でこれがけっこう美味い。難点は国産鯖よりも油っけが野放図で大味なこと!しかし滲み溢れる油を眺めながら、これが青魚のDHAをたくさん含んでいて善玉コレステロールに転化することを観念優先に思って美味しくいただく。

このビルは東急プラザを看板にしているせいか、そちら側はスクエアにおすましの気配がして忌避する。「大戸屋」の属する雑居店輔の一角に古本屋を発見する。ゲームソフト、マンガが殆どを占める店だ。こうした店に埋没する秀逸本を見つけだすのは町徘徊における無上の喜びである。この日も10年くらい前に発行された寺島靖国「JAZZはこの一曲から聴け!」坂野潤治「昭和史の決定的瞬間」などの買い逃し本を安価で見つけた。店をでようとして音楽ムック本などのコーナーに紛れて、これは五年くらい前に刊行した山本容子「Jazz going」というジャズに因んだ絵本集を発見する。山本容子さんがジャズボーカルを歌うことも初めて知った。付録のCDが欠けている本の為にこちらは400円!新刊当初は2900円のせいか気になりながらも腰が引けてしまった本である。帰りに開けた絵本の中身は素晴らしいの一言に尽きる。

村上春樹・和田誠合作の「ポートレイト・イン・ジャズ」等と並ぶドリーミイな喜びが溢れる立派なジャズ本ではないか!よく踊っている曲線のタッチにエレガンスに彩色される中間色の滋味にしびれてしまう。左ページの絵と右ページのエッセイ、シンプルなコメントに滲みでる大人の女らしいペイソスにも不足はない。自分ではよく聴いたことのある1938年のクルト・ワイルが作った「セプテンバーソング」等もこの絵本には登場する。ジョニー・ハートマンが歌うベツレヘムレコードの「ソングス・フロム・ザ・ハート」のB面5曲目にも収まっている歌だが、歌詞のフレーズに思いを寄せている山本容子さんの言葉をリフレインしながら聴いてみる。

折りしも季節は蝉たちの鳴き声が退場し、コオロギや鈴虫が闇を引き立てる時候を迎えている。人生の9月は次の10月、11月に連なるという無常感の歌を流しながら秋の夜長を噛みしめるよい絵本と出会ったものである。

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