Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

鮎塩焼きの夕ご飯

2013-06-12 18:37:25 | 
ちょうど一週間前のことだった。Y教授が座間までやってきたのは。彼は無理強いしたような禁欲の延長上にある観念の自己規制がとても強い人だ。お茶もコーヒーも酒類も飲まない。タンポポ茶のようなアブストラクトな味のミント茶やプレミアム風の水ばかし飲んでいる。おやつといえばサンザシのドライフルーツやクコの実だったりする。蕎麦と寿司だけが一般人の口と繋がりを保てる唯一の食分野である。それでも寿司屋などへ入ったときのオーダーはやはり変わっている。コハダ、鯖、鰯、等ヒカリものの繰り返しパターンを貫くのだ。根っからの吝嗇気質のせいで廉価品をオーダーしているのではなく、独自の健康食生活理念を実践しているようだ。

昔、彼がオーナーになっているビルのテナントにノギスの製作メーカーで著名な「ミツトヨ」が母体のレストランが入居したことがあった。港区の芝界隈で名を馳せた植物蛋白だけを素材とする自然食中華の「菩提樹」という店だった。まだ現在ほど食生活の自然食志向は差別化されていない時代だった。青山通りにあった「ナチュラルハウス」あたりがそろそろ活況を呈し始めた頃のことである。その店では湯葉を肉類に見せかける美的造型力を持った本場のコックが活躍していて、不思議にも単調な味にならない豊富なメニューが提供されていた。Y氏は妻がポジティブに料理に専心するタイプと一緒にならなかったせいで、その「菩提樹」が一時期の彼におけるメイン食堂代わりになっていた。そんなY氏だが、先週会った折の本音トークで鮎の塩焼きを絶賛していた。彼は子供時代に伊豆の伊東市内に預けられたことがある。伊東には松川が流れている。鮎はたくさん遡上する筈だ。そのころの味覚の記憶から発した言葉なのか、何処で食べた話なのか、確認することもなくなにげなく聞き流してしまった。

一週間が経って、自炊夕飯の材料を近くにあるコープにて物色していたら鮎が売っていた。Y氏の鮎絶賛を思い出した。岐阜産とあるから放射性セシウムの面でも安心だろう。無論養殖もので一匹286円、これの塩焼きに挑戦することにした。パックを開けたら、鮎特有のスイカめいた香りが漂ってきた。日本画家土田麦僊の「香魚」の構図を思い出す。水気を拭って最近、お気に入りのアルペン・ザルツという岩塩粉をたっぷりとまぶす。これをガスグリルにてよい焼色がつくまで焼く。10分程で完成だ。鮎だけでは自炊が単調になるといけない。

ちょうどコープに神戸三田屋のチルドメンチカツが売っていた。これを揚げて生キャベツをたくさん添えることにした。鮎は二年ぶりに食べた。塩が吹いているカリカリになった皮の部分が一番美味い。味噌汁、納豆、メンチ、鮎塩焼きという梅雨時の夕餉、Y氏の一言に左右されたようである。

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