Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

伊賀・丸柱の土鍋

2012-10-31 16:27:27 | 
京王線の仙川駅の近くに音響、楽器機材の倉庫を専用に借りていた時代があった。10数年前にもなるが。近所には美味いパン屋さんや、正統な和風支那蕎麦の香り高いラーメンの「めでたや」等それなりに個性的風格をもったお店があって退屈することのない小さな町の味わいが随所に感じられる所だった。今は代々木上原の八幡通り商店街に移転している「うつわや」もその一角にあった。

「うつわや」へは時々、昼休みの食事ついでに日常雑器の陶芸品を覗かせていただいて、現代陶磁器の見立て方を教わったような気がする。この店で知った陶芸家の名前に福森雅武や川渕直樹のような第一線で活躍する陶芸作家がいて、当時購入した器や急須などが今回のような引越し騒動で備蓄品から現れるのも嬉しいものだ。

白洲正子が贔屓にしていた福森雅武の伊賀の土鍋もその一つでこの前、使ったのはおよそ一年前になる。妹の家に家族が集まったときに、この土鍋で肉や野菜を炒めて楽しんだ。マッスに満ちている分厚い器体への熱伝動に秘訣があるらしく、この土鍋で肉や椎茸、青菜の類を炒めると、素材がたとえ安価なものでも一挙に値打ちを高めてくれて、香り高い協奏的調和を生み出すから不思議である。カラリと仕上がるのにジューシーな保湿力は喪失しない!家族が健在だった時代の夕餉を思い出す。よい楽器やオーディオ装置が優れた倍音成分を紡ぎだすようなものと根は一緒なのだと思う。

久しぶりに風呂敷を開けて、BS番組にてこの土鍋の存在を知って魅せられたという友人にこの土鍋を進呈することにした。物の生々流転を是とする感慨に傾斜する昨今だが、数ショットだけデジカメに納めさせてもらう惜別の儀式を行った