ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 120ページ目 ロワール川巡り①  

2012-05-31 23:18:37 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【120ページ】


「いいえ、違うの! ポムロールにお手頃な値段でこんなにおいしいワインがあるなんて驚きだわ!」


良子はグラスのワインをぐいっと飲み干した。


「ねえ、マスター、このワイン大量に入手できないかしら? チーフに話をして、マリーナヴィレッジのハウスワインに

したいわ!」


マスターは良子の空いたグラスに再びそのワインを注いだ。


「残念ながら、このワインはとても希少でなかなか入手できないのですよ! そうですね、和さん!」


マスターが笑いながら言うと、和音も笑ってうなずいた。

二人の様子を見た良子は、からかわれているのに気付いた。

良子は、グラスに注がれた2杯目のワインを慎重にテイスティングをおこなった。


「ひょっとしてこれペトリュス? なかなか味わう機会がないので自信がないけど。」


良子は二人の顔を見つめた。



 テーブル席では、丸山達が新たにボトルを注文して、ワインと会話を楽しんでいた。


「映画や講演などで感動する人が一万人いるとすると、感動を実行に移す人は100人ほどだ。さらに実行を

継続できる人は一人に過ぎない。」


 丸山は、自分の体験談を仲間3人に聞かせていた。

彼はかつて100kgを超える体重で、薬に頼る生活をしていた。

転勤になって、その町の病院に行って、今までと同じ薬をもらおうとしたら、その病院の医者から薬よりも

ダイエットが必要だと諭された。


「100kgを超えていた私は、ダイエットに取り組んだ。三ヶ月で25kgの減量に成功したが、

会社の同僚や得意先からは病気ではと疑われた。」


ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 119ページ目 ロワール川巡り①  

2012-05-30 23:18:53 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【119ページ】


「お疲れさん!」


和音はうなずきながら言った。


「今夜はワインを楽しみたい日かな?」

「ええ、そして聞いてもらいたい話もあるの」

「それでは、ポムロール地区のワインで何かマスター薦めのワインをいただこう」


和音は、マスターにアイコンタクトしながら言った。


「マスター、ポムロールのお薦めを良子さんにグラスで!」

「今日は、お手頃な値段で、とてもおいしいポムロールのワインを入手したところです。」


ポムロール地区は、ボルドーの中でもっとも小さな地区である。

土壌は、肥沃でメルロ種の栽培に適している。

ポムロール地区には、公式な格付けはなく、ペトリュスだけが別格扱いになっている。


「どうぞ!」


マスターが、ワインの入ったグラスを良子の前に置いた。


「和さんは飲まないの?」

「先に飲んだから」

「それじゃ、いただきます。うむ・・・・・・」


良子は、ワインを楽しむつもりだったので、気軽に口に含んだのだが・・・・。


「このワインは何?」

「良子さんの口に合わなかった?」


和音は、笑いながら訊いた。

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 118ページ目 ロワール川巡り①  

2012-05-29 23:27:29 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【118ページ】


「2倍成長論?」


丸山の仲間の一人が訊いた。


「女性は、男性よりも2倍のスピードで成長するのだよ!」


ワインのボトルが空いたので、丸山は美紀を手招きで呼んだ。


「今年の新人6人の中の女性2人は、数年間は仕事の能力で男性に対して圧倒的な差をつけることになる。

しかしそれで男性が仕事の能力が劣っていると判断するのは誤りである」


「そうかな?」


丸山の仲間のもう一人が首をかしげた。


「そうだ!数年経つと、飛躍的に成長する男性が出てくるのだ! まあ、成長しない男性もいるがね」


「今年のフレッシュマン4人が成長しない男性だったらどうする?」


丸山の3人目の仲間が言うと、皆「その可能性大」と笑い声をあげた。



 マスターが、来店を知らせるライトが光ったのを確認すると、モニターに目をやった。

オオカミグッズを並べている店内に入って来たのは、田辺 良子であった。

良子は、店の奥まで進み、ワインバーのドアを開けた。



「マスター、こんばんわ!」

「やあ、いらしゃい!」


 良子は、和音がカウンター席の奥に座っているのを確認すると、マスターにそちらに行くと目で合図した。

一人で、テイスティングの勉強をする時は奥のテーブル席、和音とワインを楽しみたい時は和音の隣に座るのが

最近の習慣になっている。


「和さん、隣に座ってもいい?」

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 117ページ目 ロワール川巡り① 

2012-05-28 20:29:41 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【117ページ】


 和音は、いつものカウンター席に座ると、マスターにワインを手渡した。


「馴染みのお客に飲ませてあげて!」

「これは、ペトリュスの2,000年じゃないですか! ほんとに飲んでもいいの?」

「ええ、田辺さんに最初に飲ませてあげてください」

「もちろん、そうします!」



 今夜も常連の丸山が会社仲間3人と来ていた。

「今年、営業のフレッシュマンが女性2人と男性4人が入ってきたが、どう思う?」


丸山が訊いた。


「男性4人はダメですね! 」

「先日の歓迎会で、ビールのジョッキ回してと言ったら、ほんとにテーブルの上でジョッキを回したよ!」

「俺の場合は、退社前にコピー機見ておいてと言ったら、じっとコピーを見ていたよ」

「ほんまかいな! 女性の二人はどう?」


丸山が聞くと、


「いいねえ、お得意先からの電話も男性より先に取っている。」

「歓迎会でも話題が豊富で、先輩達と楽しく会話をやっていたよ!

そして度胸もある。歓迎会のかくし芸でも女性の方が受けていたね」

「俺の役所の知人も筆記試験だけなら採用は女性だけになってしまうと言っていた。

今は女性の時代なのかな?」


丸山は、グラスのワインを飲すと、彼の持論を話し始めた。


「だからと言って、男性がダメだと決めつけてはいけない。

俺の持論は、女性の2倍成長論だ!」 








ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 116ページ目 ペトリュスのなぞ?  

2012-05-25 19:54:01 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【116ページ】


「長尾社長、業務提携の契約の件は安心してください。例え和音さんが間違っていたとしても、

私は負けを認めています。和音さんの自信に満ちた態度に圧倒されたのです。」

「ペリーさん、それでは2000年のペトリュスを開けましょうか?このペトリュスに負けない

ように10年後、20年後には我々も発展し、飛躍しましょう。」

「イエス!」

ペリーがうなずいた。

その時、再びペリーに秘書から電話が入った。


「緊急の知らせとは、どういうことかね?」

「先ほどの件ですが、オークションの出品者の息子さんの記憶違いが一部あったそうです。

正確には、1945年のペトリュス1本と彼の祖父のワイン1本が未開封で残っていました。」

「もう一本のペトリュスは?」

「それですが、彼の友人が遅れてパーティーに来て、1945年の高額なペトリュスに気付き

大声を上げた時、彼はもう1本のペトリュスをグラスに注ごうとしていたそうです。」

「それで?」

「はい、友人の大声で、注ぐの止めたのですが、数滴テーブルに零してしまったのです。

数滴減った分を、飲み終わった彼の祖父のワインの底に残った数滴分を足してコルクで

栓をしたそうです。後日ペトリュスのコルクが古くなって破損したいうことで、取り寄せ

付け替えたそうです。」

「結論としては、オークションで落札した1945年のペトリュス3本は、実はペトリュス

1本、彼の祖父のワインが1本、ペトリュスに彼の祖父のワインが数滴入ったのが1本

というこだね?」

「はい、そうです。」


ペリーは、電話を切ると、長尾社長に笑顔で話しかけた。


「あはは・・・、ペトリュス通を自認していたが、ペトリュスで完敗だ!」