ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

100万アクセス数に感謝!   あべのハルカズBAR

2016-06-03 19:48:38 | あべのハルカズBAR1 四話 完
 『ワインバーでのひととき』のブログを書き始めて、7年と3ヶ月で

PV100万アクセス数を達成し、皆さまのお陰と感謝しています。



 『あべのハルカズBAR』の前は『スリーシスターズBARの悩み相談』の

記事を書いていました。

ところが本屋さんで、BARのマスターが人生相談に答える『人生相談始めました』

という本を見つけたのです。





 この作品は2009年10月からWEB文蔵に掲載されており、アイデアは私の

方が後になるので、あべのハルカズBARへタイトルと内容を変えました。




 『あべのハルカズBAR1』の プロローグをちょっと紹介させて頂きます。



              プロローグ


 安倍晴数(あべのはるかず)は槇尾山のグリーンランドを訪れた。

グリーンランドの入り口には、青少年の家があり、キャンプ場ではテントが

張られている。

そこでは、少年、少女達が「緑の募金をお願いします」と元気な声を張り上げていた。

晴数は、一番手前の少年の前に立ち、募金箱に100円を入れ、緑の羽を受け取った。

最近の緑の羽は、両面テープで胸に貼り付けるようになっている。

晴数は、緑の羽を手に持ちながら、グリーンランドを歩き始めた。

グリーンランドという名前からは、平面的な牧場のイメージが浮かぶが、

実は、せせらぎの音を聞きながら、神秘的な森林の中を登っていくのである。

 晴数は、緑の服が似合っている女性に話しかけた。

「名前は?」

「緑子」

「ミニスカートにハイヒールはハイキング向きじゃないね?」

「軽いですから」

彼女は微笑みながら答えた。


 グリーンランドの展望台まで登り、下ってきた年配の夫婦連れとすれ違った。

「お嬢さん、ハイヒールだとこの先難しいのでは?」

男性が緑子にやさしく声をかけたが、晴数にはきつい視線を投げかけた。

「大丈夫ですよ!疲れたら胸に乗せて行きますから・・・・」

「???」 年配の夫婦は首を傾げながら去っていった。




 




あべのハルカズBAR あとがき

2014-11-14 13:55:45 | あべのハルカズBAR1 四話 完
 『あべのハルカズBAR』のシリーズ1作目が完了しました。

1作目は、「銀行の先輩女子社員のいじめ問題」、「公共施設への落書き問題」、

「新聞社の一面性思考の問題」、「食品偽装の問題」の四つのテーマのショート

ストーリーから構成されています。


 あべのハルカズBARの名前の由来は、主人公の安倍晴数の名前と安倍家3姉妹

の陽菜(はるな)、月菜(るな)、香奈(かな)の「は・る・か」のBARという

意味合いからです。


 陽菜は、あべのハルカズBARのママですが、彼女に悩みを聞いてもらうだけで、

運勢が好転するということが口コミで広がっています。

悩みを打ち明けた人々の運勢を変える為、裏で晴数が陰陽師の術を使って、活躍します。



 シリーズ2作目は、ママの陽菜に、悩みを聞いてもらうきっかけを作った人物と

その始まりから1話目の展開を考えています。

2話目からは、「明暗の闘い」、「味覚レベルを下げるメーカー」

「2世と生え抜き専務の社長の座の争い」を予定していて、これらの四話で構成です。
 

あべのハルカズBAR 176ページ目  50数頭の白い熊野牛に

2014-11-13 14:12:59 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【176ページ】



 晴数は、牧場の遠くから双眼鏡で熊野牛が記者達の前に集められて

いるのを確認すると、軽四トラックに戻って、白色ペンキ缶を覆っていた

カバーを運転席方面に取り寄せた。


 晴数は、白色ペンキ缶30個の蓋を取り外して、呪文を唱えると、

白色のペンキが渦を巻きながら立ち上がった。

そして、それらはつむじ風のようになり、熊野牛に向かって行った。


 メディア関係のカメラマン達が、熊野牛の撮影をしていた時、記者の

一人が叫んだ!


「あっ、あれは何だ!」


 いくつもの白いつむじ風のようなものが向かって来ていたのだ。

記者の叫び声に驚いて、全員が彼の指さす方を見た。


「あっ!」、「おっ!」と絶句するだけであった。


 それらの白いつむじ風は、熊野牛に近づいてくると、二手に分かれて

熊野牛を取り囲むようにして襲いかかった。

50頭を超える熊野牛は、白いつむじ風の中に隠れて姿が見えなくなる。

数分が経つと、白いつむじ風は消えて、50数頭の白い熊野牛が現れた。

鬼塚社長やメディア関係者は、呆然と眺めていただけであった。


 一頭の白い熊野牛が、彼らの前にゆっくり近づき、そして牧場のフェンスに

沿って歩き、向きを八鬼山の方へ変え、歩きだした。

やがてその白い熊野牛は、山道を登っていくように空中を歩いて消えた。




白い牛をおいかけて
クリエーター情報なし
ゴブリン書房

あべのハルカズBAR 175ページ目  オーストラリアン・キャトル・ドッグ牛を集める

2014-11-12 14:20:04 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【175ページ】



 鬼塚社長の熊野牛取材旅行に招待されたメディア関係のメンバーは、

紀伊勝浦温泉で一泊し、マグロの解体ショーのマグロを食べ尽くし、

和歌山の地酒の銘酒を飲み干した。


 今回の熊野牛取材旅行は、メディア関係者にとって、気が楽であった。

招待を受けたからといって、記事の内容に装飾を加えたり、手心を

加えたり、記事を捏造したりして記者の良心を痛める必要がなかった。


 熊野牛のセリ市では、高評価の熊野牛のほとんどを鬼塚社長が

落札していたし、これから行く熊野八鬼山牧場では、高評価の熊野牛の

選りすぐりが、すばらしい環境の中で飼育されている。

そのプレミアム熊野牛を午後から試食するが、うまいに決まっている。

だから、ありのままの記事と写真を掲載するだけで良かった。


 メディア関係の一行は、勝浦温泉をバスで出発して、午前11時に

熊野八鬼山牧場に着いた。

彼らのスケジョールは、この後、熊野牛の飼育状況を取材して、昼食で

プレミアム熊野牛の試食会の予定になっていた。

バスから降りた彼らは、鬼塚社長の案内のもと、牧場の前に集まった。

カメラマン達は、放牧されている熊野牛の写真を撮る。

カウボーイ姿の牛の飼育員が馬に乗って現れ、数匹の牧牛犬のオーストラリアン・キャトル・ドッグ

が放牧されている牛を集め始めた。


コレクタ 88672 オーストラリアン キャトルドッグ Australian Cattle Dog
クリエーター情報なし
collecta




牧牛犬は吠え声を出さずに牛を記者達の近くに誘導し、言うことを聞かない牛はかかとを

軽く噛んで驚かせ、従わせた。

あべのハルカズBAR 174ページ目  山椿姫を挿し木に

2014-11-11 13:49:10 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【174ページ】



「熊野速玉大社を参拝した時、平成23年台風12号による大雨によって、

戦後最大規模 の熊野川大洪水で流された熊野牛の霊を見つけたのです。

その熊野牛を八鬼山の山神様の使いにとお願いに参りました。」

「なぜ我々の使いにと願う?」

「八鬼山の麓に、熊野牛の最大の牧場があります。

八鬼山の山神様の使いにしていただくのが一番ふさわしいと考えたのです。」

「願いは分かった!」


 オオカミの姿の山神は、酒と食べ物の供え物を見て、晴数に問う。


「これは、我々への供え物か?」

「そうです」

「昔、村人達が我々に願い事をする場合、酒や食べ物の供え物と一緒に、

村一番の娘を供えたものだ。」


 山神は、晴数の横にいる山椿姫をじっと見つめる。


「お前の横にいる娘も供えるのだな?」

「いいえ、彼女は、山椿の化身なのです。

彼女は、一日経つと枯れてしまいます。

私は、山椿を八鬼山の大地に挿し木をさせていただき、毎年花を咲かせて、

山神様に楽しんでもらうと思って持ってきました。」

「それでいい!」


山神は最後の言葉を発すると、オオカミの形がくずれ、八つの塊はくっ付き、

大きな黒い影となって、去っていった。