ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

4 ウィスキーのブレンダー 26ページ目

2010-01-31 20:10:03 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
【26ページ】


社長    私もそう思う。

      これらの4本を開けるので、味の感想を聞かせてほしい!

内定者   味ですね?

      香りの感想は言わなくてもいいのですね?

社長    香りの感想は必要ない!

      嗅覚の実力は、判っているからね。


ブレンダーの高野は、4本のワインを開けて、それぞれグラスに注いだ。


内定者   これは、タンニンが強く、非常にスパイシーです!

      このワインは、タンニンの渋みが少ないですね。そして口当たりが

      非常になめらかです。

      こちらのワインは、渋みも酸味もほとんどなく、さわやかですね?

      4本目のワインは、タンニンが豊富ですね?熟成するのが遅いと思います。

社長    高野さん、どうだね?

ブレンダー 各ブドウ品種の特徴をよく感じとっています。

社長    山川君は、味覚もするどいということだね?

ブレンダー はい。

社長    あとは、変人になれるかどうかだ!

      高野さん、想像力を試す問題を出してあげて!

ブレンダー そうですね・・・。

      1から10の数字の中で好きな数字を選んでイメージしてください!        

4 ウィスキーのブレンダー 25ページ目

2010-01-31 06:33:57 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
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社長    そう変人集団だ!

      私は、嗅覚テストで100点満点を取った君の配属希望を叶えさせてあげたい

      と高野さんに言ったのだが、彼は変人を求めているそうだ!

内定者   私には、想像力がないと?

社長    いや!

      研究部門の入社試験で受けたテストだけでは、判断できるものではない!

      入社後の研修期間で適正を判断するのだよ。

内定者   なぜ今日の呼び出しを?

社長    我が社の社員の中で嗅覚テストで100点満点を取った者はいない!

      入社までに、一度会っておきたかったのだよ。

      高野さん、ワインを出して!


チーフブレンダーの高野は、4本のワインをテーブルに並べた。


社長    これは、ボルドーのあるシャトーのブレンド前のワインだ!

      カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド

      の4本だ!

内定者   それらの名前は、ブドウ品種ですね?

社長    そうだ!

      そして、ボルドーのシャトーのワインは、それぞれそれらの比率が違う!

      それがワインの個性になるのだ!

内定者   ブレンドウィスキーは、ボルドーのワインに似ていますね?

      

4 ウィスキーのブレンダー 24ページ目 

2010-01-30 20:34:08 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
 【24ページ】


社長     しかし、人と犬では違うだろう?

ブレンダー  それでは、もう一度想像力のテストをやってみましょうか?

社長     ぜひ頼む!


1週間後、社長室にブレンダーの高野と内定者が呼ばれていた。


社長     山川君、我が社への内定おめでとう!

       特に嗅覚テストでは、100点満点だったそうだ!

       ところで、山川君は、ウィスキーのブレンダーチームへの配属を希望してい

       るそうだね?

内定者    はい。

社長     ウィスキーのブレンダーにとっての必須条件は判るかね?

内定者    ウィスキーの香りを嗅ぐ力です。

       そして、ウィスキーを味わう力です。

社長     他には?

内定者    すみません!いますぐには浮かびません。

社長     高野さん、教えてあげて!

ブレンダー  ウィスキーをブレンドした時の味をイメージできることです。

       ウィスキーのブレンダーチームのメンバーは、想像力の豊かな者の集まり

       です。

       別の言い方をすれば、変人の集まりですね。

内定者    変人の集まりですか?  


4 ウィスキーのブレンダー23ページ目

2010-01-29 23:05:30 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
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ブレンダー  別の人の回答には、犬のおしっこの臭いとオールドローズの芳香をブレンド

       して猫よけスプレーを作りますとありました。

       人は、バラの芳香を感じ、猫には、犬のおしっこの臭いを感じさせ、猫が

       玄関におしっこかけするのを防ぐのです。

       ユニークな回答でしょう?

       この問題は、答えの正解を求めるのではなく、イマジネーションを求めて

       いるのです。

社長     彼には、想像力や物を作りだす創造力がないと?

ブレンダー  平凡だと感じました。

社長     彼の適任部署は?

ブレンダー  異臭チェック係ですね。

社長     彼の希望部署は、ウィスキーのブレンダーチームだ!

       もし彼が異臭チェック係に配属されると、希望と違い、退社して、競合他社

       に行くことはないかね?

ブレンダー  可能性はあると思います。

社長     それで彼が、わが社の脅威になることはないかね? 

ブレンダー  ないです!

社長     どうして言い切れる!

ブレンダー  麻薬の密輸入者は、麻薬捜査犬の嗅覚が脅威です。

       しかし麻薬捜査犬の鋭い嗅覚は我が社にとって脅威でしょうか?

4 ウィスキーのブレンダー 22ページ目

2010-01-29 05:01:03 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
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社長     高野さん、来年の研究部門への内定者の中で、嗅覚テストで100点満点を

       とった者がいるそうだね?

ブレンダー  はい。

社長     彼を、君のウィスキーブレンダーチームへの配属を希望するかね?

ブレンダー  いいえ。

社長     なぜだ!

       君のチームのメンバーで100点満点をとった者はいないだろう?

ブレンダー  はい。

       リーダーの私も、今までの最高得点が95点です。

社長     わからないなあ?

       なぜ希望しないの?

ブレンダー  私は、他のテストの項目もチェックしているのです。

社長     例えば?

ブレンダー  100種類の香りや臭いから何をつくるかといった想像力テストの問いの

       答えに注目したのです。

社長     彼は、何て答えたのかね?

ブレンダー  オールドローズの芳香から香水を作りますと答えています。

社長     その答えのどこが間違っているのだ? 

ブレンダー  この問題には正解、不正解はないのです。

社長     それじゃ、彼の答えのどこがダメなのかな?