ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 110ページ目 ペトリュスのなぞ? 

2012-05-17 23:19:30 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【110ページ】


 ペリーは、手に持っていたペトリュスを抜栓し、ワイングラスに注いだ。


「和音さん、どうぞテイスティングを!」


 和音はワイングラスを手に取り、色を確かめ、香りを嗅いだ。

そして、ワインを一口含んで、目を閉じると、ワインのラベルのイメージが湧いてきた。

赤いPETRVSの文字、1945年のヴィンテージ、そして男性の上半身像・・・・。


「おや?」


 目を閉じたまま、和音がひと言発した。

ラベルの男性の上半身像は、キリスト十二使徒の一人で聖人ペトロである。

ペトロは、ラテン名ではペトリュスと呼ばれる。

ペトロは、天国の番人であることから右手に鍵を持っている。


 ところが、和音のイメージのペトロには、右手の鍵が消えていた!

和音は、目を開いた。


「ヴィンテージを答えることができません。」

「答えることができない? ヴィンテージが判らないということかね?」


 ペリーが訊ねた。


「いいえ!」

「ヴィンテージは判った? だが答えることができないとはどういうことだ!」


長尾は、二人のやりとりをハラハラして聞いていた。


「長尾社長、彼は勝負を放棄するつもりのようだ!」

「ペリーさん、ひょっとしてこのワインは・・・・。」