５ フレンチの若き天才 １３ページ目

【１3ページ】

和音　　　　 絹のようになめらかな口あたりのワインだ！

　 メルロ種のウェートの高いワインですね？

シェフ 　　メルロ種１００％のサン・テミリオンのワインです。

　和音さんは、このワイン初めて？

和音 　 ええ、サン・テミリオン格付けの第一特別級（Ａ）や第一特別級　

　　　　　　　　　（Ｂ）のワインは飲んだことがあるのですが。

シェフ 　このワインは、シャトー・オー・カルディナル・グラン・クリュです。

社長 　グラン・クリュと言えば特級畑のワインだが、ブルゴーニュのワインの

　ような最上級のワインではないのですね？

シェフ 　私のレストランに来られるお客さんにも勘違いされる方が

　いらっしゃいます。

　サン・テミリオンのグラン・クリュはお手頃な価格だね？とよく

　　　　　　　　　　聞かれるのですよ。

社長 　　同じボルドーでも、メドック地区は、１級から５級の格付けが　　　　
　　　　　　　　　　されているし、ワインは難しいものですね？

　話が少しそれましたが、二品目の料理に使用したワインは、

　シャトー・オー・カルディナル・グラン・クリュでしょうか？

和音 　　この料理は、プルーンと赤ワインで煮込まれています。

社長 　　そうですね、料理名が豚スペアリブのプルーンと赤ワインの　　　　　　
　　　　　　　　　　煮込みだから。

和音 　　シャトー・オー・カルディナル・グラン・クリュは、プルーンの　　　　
　　　　　　　　　　香りの印象的なワインだったのです。

社長 　　プルーンの香りの印象的なワイン？

５ フレンチの若き天才 １２ページ目

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和音 　　カベルネ・ソーヴィニヨンのタンニンの渋みを感じるのです。

　　牛テールビーツ風味の赤ワイン煮込みには、サン・テミリオンのワイン

　　ではなく、メドックのワインを使用しましたね？

社長 　　植村さん、そうなの？


　植村は、紙に包まれたワインを取り出し、そして包み紙を取り払った。


シェフ 　　その通りです。

　　料理に使用したワインは、シャトー・ムートン・ロートシルトで、

　　カベルネ・ソーヴィニヨンのウェートは８割近くあります。

社長 　　サン・テミリオンのワインは、メルロ種とカベルネ・フラン種がメインだから

　　料理に使用したワインの違いを見分けることができたのだ！

　　この勝負は和さんの勝ちです。
　　
　　　　　　　植村さん、二品目の料理をお願いします。

シェフ 　　二品目は、豚スペアリブのプルーンと赤ワインの煮込みです。


　植村の弟子が、二品目の料理を運んできた。


社長 　　これは、うまそうだ！

　　和さん、どうぞ料理を味わってください。

和音 　　とてもおいしいですよ！

社長 　　次のワインこれです。


　社長は、専属ソムリエに紙に包まれたワインを手渡した。

専属ソムリエは、それを抜栓し、グラスに注いだ。

５ フレンチの若き天才 １１ページ目

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　次に、社長の専属ソムリエによって、ワインがグラスに注がれた。


社長　 　どうぞ、ワインのテイスティングもおこなってください。

　　　　　　和音は、グラスを手に取り、一口含んだ。

和音 　口あたりは、ふっくらとやわらかい。

　このワインは、酸味やタンニンを多く感じられない！

　サン・テミリオンのワインの中でもカベルネ・フランの特徴が一番強く

　感じるワインはシャトー・シュヴァル・ブランです。

　ヴィンテージは白馬！

社長 　白馬？

　シュヴァル・ブランとは、白馬の意味だが？

シェフ 　１９８９年の意味では？

社長 　なるほど、白は８９のことか！


社長は、　専属ソムリエにヴィンテージを確認した。


社長 　今回のテイスティング対決は、ワイン名やヴィンテージは関係ありませんが、

　シャトー・シュヴァル・ブランの１９８９年は正解です。

　牛テールビーツ風味の赤ワイン煮込みにシャトー・シュヴァル・ブランを

　使用しているかどうかお答えてください。

和音 　料理にサン・テミリオンのワインを使用しているとのことですが、隠し味として

　タンインの渋みが料理を引き締めているのです。

社長 　タンニンの渋みですか？

５ フレンチの若き天才 １０ページ目

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和音 　　私は、幻想的なワインと感じただけですよ！

社長 　　和さん、植村さんの料理を楽しみましょうか？

　　同時にテイスティング対決も開始になります。

和音 　　テイスティング対決もですか？

社長　　 　　植村さんは、料理を３品用意します。

　　その料理には、サン・テミリオンのワインを使用しています。

　　テイスティング対決用にサン・テミリオンのワインを３本用意します。

　　ここまでの内容でご質問は？

和音 　　特にないです。

社長 　　最初に、一品目の料理を食べます。

　　植村さん、一品目の料理は、何でした？

シェフ 　　牛テールビーツ（赤かぶ）風味の赤ワイン煮込みです。

社長 　　次にサン・テミリオンのワインをテイスティングします。

　　そのワインが、料理に使ったワインと同じかどうか答えてください。

和音 　　承知しました。

社長 　　植村さん、一品目の料理の準備をお願いします。


　シェフの植村は、弟子に、料理を運んでくるように指示した。

牛テールビーツ（赤かぶ）風味の赤ワイン煮込みの皿が和音と社長の前のテーブルに　　　　

置かれた。


シェフ 　どうぞ召し上がってください。

和音 　とてもおいしい牛テールだ！

５ フレンチの若き天才 ９ページ目

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　和音は、シャトー・オーゾンヌを一口含み、目を閉じた。


和音　　　何て幻想的なワインだろうか！

　　　　　まるで宇宙空間を旅しているような感覚だ！

　　　　　このワインは、宮沢　賢治の『銀河鉄道の夜』のようなイメージですね。

社長　　　銀河鉄道の夜？

　　　　　夜・・ヨル・・４６年？　

　　　　　和さん、私のシャトー・オーゾンヌのコレクションの中に５０年以上前の

　　　　　オールドヴィンテージはありませんよ。

　　　　　植村さん、ヴィンテージを答えてください。

シェフ　　１９９９年のヴィンテージだと思います。


　社長は、専属ソムリエにヴィンテージを確認した。


社長　　　正解です。

シェフ　　社長！

社長　　　植村さん、どうしたのですか？

シェフ　　１９９９年ということは、９が三つ並んでいますね？

社長　　　　確かに。

シェフ　　　銀河鉄道の作品はもうひとつあります。

社長　　　　おっそうだ！

　　　　　　松本　零士のアニメ銀河鉄道９９９！

　　　　　　和さんは、連想ゲームで我々の推理力を試したということか？