ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 112ページ目 ペトリュスのなぞ? 

2012-05-20 20:52:26 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【112ページ】


「私がテイスティング対決で、グラスのワインを飲み干したのは初めてです!

テイスティングを忘れさすほど魅惑的なワインでした。しかし残念ながら・・・。」

「ペトリュスでないと?」

「まったくの別物です! これはペリーさんも同意されるでしょう?」


 ペリーは、2本目のワインをグラスに注ぎ、テイスティングを行なった。


「うむ?」


 ペリーは、さらに確かめるようにもう一口飲んだ。


「なぜだ! オークションで落札した同じヴィンテージのペトリュスなのに1本目と

味覚がまったく違う。 ペトリュスに勝るとも劣らないが、確かにペトリュスではない!

これはどういうことだ?」


 ペリーは、3本目のワインを抜栓し、グラスに注いだ。

ペリーは、1本目のワインがペトリュスだという自信が揺らいできた。


「和音さん、3本目のワインも念のためテイスティグをして頂けませんか?」


 和音は、ペリーの差し出したグラスを受け取り、目の前で凝視した。


「これは、オーラというか圧倒的な存在感を感じさせるワインです。

まるでオーナーの喜び、自信、希望が満ち溢れているようだ。」


 和音は、このワインをテイスティングしないで、テーブルに置いた。


「ペトリュスにとって、記念すべき年代が二つあります。ひとつは1889年です。

パリ博覧会ワイン品評会で金賞を受賞し、それまでほとんど無名だったペトリュスが

世に知られるようになったのです。しかし金賞をとっても今のように高額で取引される

ワインではまだなかった。」