ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 157ページ目 盲目のソムリエ  三方皆得

2015-04-22 21:47:40 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【157ページ】


「アニマルセラピー(動物介在療法)と徘徊対策との融合ですね?

認知症患者の心のケアと体力の強化を図り、介護士の負担を減らし、

介護施設の経営も成り立たせるという三方皆得のシステムですか?」

「和さん、その通りです。

そして、残りの半年で、四方皆得のシステムに出会ったのです。」

「ほう、四方皆得ですか?」

「ええ、それは廃業した温泉旅館を改装した福祉介護施設だったのです。

この施設の特徴は、1週間単位のボランティア活動です。

5日ボランティア活動すると、2日宿泊客として無料で泊まれるのです。

ボランティアや介護士の興味を持っている学生は、ボランティアで介護の

仕事をしながら、旅行も楽しめるのです。

軽度の要介護者は、若い人々とふれあうことにより、元気になり、また

介護士にとっては、ボランティアの応援が多いので、負担の軽減につながり、

経営者にとっても経営的メリットが大きいのです。

誰もがハッピーになるシステムでした!

私は、二人の経営者を理事にむかえ、父親と約束した2年後介護福祉事業

を立ち上げ、今の成功にに繋がりました。

そして、兄から病院の経営を依頼され、病院と福祉介護事業の大沢グループの

理事長になった訳です。

私の成功のきっかけは、父が注いでくれたシャトー・パルメと言えるでしょう。」

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 156ページ目 盲目のソムリエ  誘導犬を活用  

2015-04-17 06:07:19 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【156ページ】


 大沢理事長は、シャトー・パルメを飲み干した。

そして、専属ソムリエの打田が、注ごうとするのを制した。


「その時、私は、ハッと気づいたのです。

私は、経営の一流介護施設で一年間働き、勉強してきた。

しかし、シャトー・パルメのように一流と評価されていないが、

一流を超える介護施設が存在しているはずだ!

要介護者に対する行き届いたケアをできる介護施設にするには?

という視点で残りの一年働くことに決めたのです。」


「シャトー・パルメのような介護施設がありましたか?」と和音が訊く。


「ええ、ありました!

ひとつは、認知症患者の徘徊対策の施設です。

ここは、廃校を改装し、広い運動場と校内を利用して

徘徊を止めるのではなく、反対に自由に歩いてもらうのです。

安全対策として、誘導犬が一緒に歩きます。そしてGPSの活用と

安全確認カメラの設置をしています。」

「誘導犬とは、盲導犬のようなイメージですか?」


盲導犬クイールの一生
クリエーター情報なし
文藝春秋





 和音が興味をいだき、訊いた。


「ええ、盲導犬の由来は、盲人誘導犬なのです。

その施設では、牧羊犬を徘徊者誘導犬として訓練し、認知症患者と

一対一のペアを組んだのです。」

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 155ページ目 盲目のソムリエ  いいワインを入手  

2015-04-17 00:20:53 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【155ページ】


 大沢理事長は、シャトー・パルメの入ったグラスを手に持って、一口飲み、

のどを潤した。


「そんな悩んでいたある日、父親からいいワインを手に入れたから飲もうと

誘われました。

父親から有名な介護施設で一年間働いて、約束の2年後の介護福祉事業経営の

ヒントをつかんだかな?訊ねられました。

私は、経営の利益と介護士の人数は反比例することを伝えました。

すると父親は、それに対して何も言わず、ワインをグラスに注いでくれました。

そして、ワインの感想を訊かれました。

そのワインはメドック格付け1級のシャトー・マルゴーだったのです。」


Chateau Margaux シャトー・マルゴー 1993
クリエーター情報なし
シャトー・マルゴー





「おいしかったですか」と和音が訊いた。


「ええ、まだワインの味はよく判らなかった私ですが、普段仲間と飲んでいたカジュアルなワイン

と比べて、香りの複雑さ、味のコク、深み、繊細さがまったく違っていました。」


 大沢理事長は、シャトー・パルメのグラスをじっと見つめ、何かを思い出しているような

表情を見せた。


「次に注いでくれたワインは、このシャトー・パルメだったのです。

父親は、これはメドック3級の格付けのワインだけど、シャトー・マルゴーと

比べてどうかな?訊いたのです。

私は、シャトー・パルメの方がよりおいしく感じると答えました。

それもそのはず、いいワインを手に入れたというのはシャトー・パルメであって、

シャトー・マルゴーは当り年のヴィンテージではなかったのです。」

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 154ページ目 盲目のソムリエ  ショックを受ける  

2015-04-12 00:53:03 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【154ページ】



「介護福祉施設で2年間働き、勉強してからという条件で受けました。

それで、まず大手の介護福祉施設で働いたのですが、ショックを受けました!」


「何があったのですか?」と和音が訊く。


「今朝の新聞にも載っていましたが、9000近い介護関係の施設で、実に1500以上の

施設で高齢者への介護虐待があったそうです。

ショックを受けたというのは、私も実際に働いてその状況を目にし、その時、

これは必然的なものだと感じとったのです。」


 大沢理事長は、シャトー・パルメをぐいっと飲み干した。

専属ソムリエの打田は、それを見てグラスにシャトー・パルメを注ぐ。


「介護施設の経営という観点からすれば、入所者を多く、介護士を少なくすれば」

儲かるよね?

するとどうなりますか?」


「介護士の負担が増えます。」と和音が答える。


「そうです。

介護士一人の担当する人数が増えると、徘徊したり、暴れたりする人には

長時間の拘束という手段をとるようになる。

また介護士のストレスが溜まり過ぎると、要介護の高齢者に対するいじめ

なんかも起こってくるのです。

私は、介護福祉施設で働いた最初の一年間は、どうしたら思いやりのある介護が

でき、経営も成り立たせることができるか考え続けました。」

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 153ページ目 盲目のソムリエ  花粉症対策ですか?  

2015-03-29 07:44:40 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【153ページ】


「花粉症対策の事業かな?」

「また意外な答えですね」

「大沢理事長は、よく遊んでいましたね?

するとマスクをしている人々が増え始めているのに気づたのでは?」


 大沢理事長が、頷いた後、粉河の方に振り向いた。


「粉河さんならどう答えますか?」

「心のケアに関する事業でしょうか?」

「またどうして?」

「高度成長時代から低成長時代やマイナス成長になると売り上げ不振になり、

企業活動しているすべての人にとって、精神的負担になります。」

「お二人ともメインの答えは、私に残してくれたのですね?

大沢病院グループでは、お二人が話された事業も取り組んでいます。

しかし、一番最初に私が手掛けたのは、介護福祉事業です。

両親に『少子高齢化が将来進行するから病院と連動して介護福祉事業

に取り組んだら?』と答えたのです。

両親は、なるほどと感心して、遺産相続の先渡しとして、事業資金を出すから

介護福祉事業をやりなさいと提案してくれたのです。

お前の金だから失敗してもいい、好きなようにしなさいと・・・・」

「それで、大沢理事長は両親からの提案を受けたのですね?」


和音が、訊いた。




花粉対策に!元祖福田家 まるごとじゃばら 600ml×1本
クリエーター情報なし
ジャバラボ福田農園