ご教歌 みなながら あらましかばと 思ふらん 物はなかばに たることをしれ
大 意 (日晨上人「ご法門のかなめ」より)
思っていることが全部思う通りになってほしいと、誰しもが考える所だが、
私ども凡夫の欲は貪欲の傾向が強いので、この辺でよしとすることを忘れ、己を滅ぼす方へ走りたがる。
欲ばかりかいていたら口唱(お看経)の時間も惜しくなる。
半分成功したら有難いと思い、そこで大事なものを置き去りにしてはおらぬかを、反省することが大事。
みな‐ながら【皆×乍ら】[副]
ことごとく。すべて。 「―脱ぎおき給へる御ふすまなどやうのもの」〈源・蜻蛉〉
あら-・まし 【有らまし】〔連語〕
あろう。 …であろうに。 …であればよいのに。
鏡に色・形あらましかば、うつらざらまし。
<鏡に色や形があったとしたら、何も映らないであろうに>(『徒然草』)
らん(覧) らむ。に、同じ
現在起こっている事象から、その原因・理由や背景などを推量する意を表す。
㋐原因・理由が示されている場合。…だから…なのだろう。…というわけで…なのだろう。
「思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを」〈古今・恋二〉
㋑(多く「など」「いかに」という疑問語を伴って)原因・理由が示されていない場合。どうして…なのだろうか。なぜ…なのだろうか。
「やどりせし花橘(たちばな)も枯れなくになどほととぎす声絶えぬらむ」〈古今・夏〉