『春を嫌いになった理由』 誉田哲也

2012年05月24日 17時52分51秒 | 誉田哲也
春は過ぎゆく感じです



「フリーターの秋川瑞希は、テレビプロデューサーの叔母から、霊能力者・エステラの通訳兼世話役を押しつけられる。嫌々ながら向かったロケ現場。エステラの透視通り、廃ビルから男性のミイラ化した死体が発見された!ヤラセ?それとも…。さらに、生放送中のスタジオに殺人犯がやって来るとの透視が!?読み始めたら止まらない、迫真のホラー・ミステリー。 」(BOOKデータベースより)

話は主に瑞希の視点から語られていきますが、一部、中国からの密入国の話や普通の家庭でテレビを見ている夫婦の話をはさみながら進んでいきます。
瑞希はフリーターで塾講師を週2コマやっているが、英語が堪能なほかポルトガル語とイタリア語も少し話せるクワッドリンガル?です。
そんな瑞希の叔母であり、テレビ局のプロデューサーである名倉織江に通訳を頼まれることとなる。
通訳をするのはアメリカ在住のブラジル人霊能力者マリア・エステラ。エステラは普段は英語をしゃべるが、頭のスイッチが切り代わるとポルトガル語をしゃべりだす。
製作費も限られており、英語とポルトガル語がしゃべれる通訳を雇うと費用がかさむことから、瑞希がうってつけだった。
そんな瑞希は筋金入りのスピリチュアル嫌い。瑞希はいったん断るが、とある事情により断れない状況。瑞希は渋々通訳を引き受けることなる。
初めてのテレビ撮影に戸惑いながらも懸命に通訳をこなす瑞希であったが、エステラの透視により廃ビルからミイラ化した死体を発見することになる。

中国の福建省泉州市恵安県で生まれた、林守敬(リンソウチン)と林玉娟(リンウージェン)の兄妹は街の英雄となった古正剛(ゴウツンガン)に倣い、日本に密入国することとなる。
さまざまな困難を乗り越え、奇跡的に日本にたどり着いた二人で会ったが、密入国の身であることからまともな職には就けず、昼間はレストランや工事現場で働き夜はチャイニーズパブのような店で働くこととなる。
毎日長時間働きながら中国に送金を続ける日々であったが、あるとき玉娟が入国管理局に拘束されてしまう。
一人になった守敬は、引き続き働くことができたが、とあるきっかけにより他人になり済まし、不正に消費者金融から金を引き出すことに成功するのだが、彼は謎の男に追い詰められることとなる。


といった話。
ホラーと名がついてはいますが、そんなに怖い話ではありません。怪現象が起きてるわけでもないし、謎の死を遂げているわけでもない。
むしろ、特に瑞希の話ではコミカルな話が多く、面白おかしく読み進めることができます。
守敬兄妹のはなしはあまり明るい話は少なく、密入国の辛さを感じ取ることができます。
この話は別々に進んでいきますが、まあ一つの物語なので最後はつながってきます。
それぞれの話はとってもおもしろいんだけど、話がつながっていくあたりからなんかよーく分からなくなってきます。
いや、わかるんだけどわからないw
あの人がああで、この人がこうで、その人はそう。ってな感じでごっちゃになってきます。
そして瑞希の秘密も明らかに。

ま、いろいろ書きましたが、面白い話でお勧めです。

★★★★☆

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