オヤジ達の白球(47)特大のホームラン
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/85/25accf1a7aacfbff3b5cf72e8d53a684.jpg)
投球は、3ボール・2ストライクのフルカウント。
投手が勝負の投球へはいる。
(最後の球はおそらく、一番自信をもっている渾身のストレート)
柊はそう読んでいた。
2球続いたライズボールは、最後にストレートを投げるための伏線に過ぎない。
勝負球はライズボールの軌道に似た、高目いっぱいのストレート。
打者がつられてもっとも手を出しやすい場所へ、勢いのあるボールを投げ込む。
それが三振を奪いにくる投手の王道だ。
投手がプレート板を蹴る。
空中を舞った左足が、半径2・44mのピッチャーズ・サークルをおおきく踏み越える。
足がサークルからはみ出ても、不正投球にはならない。
(大きく飛んだぞ。やはり最後の勝負球はストレート!)
バッティングでもっとも大切なことは、できるかぎりボールをひきつけること。
ひきつければひきつけるほど、ボールの軌道がはっきり見える。
好打を打つために打者がすることはふたつ。
ストライクにたいして、ためらわずフルスイングすること。
球から目を離さず、的確にバットの芯でとらえぬくこと。
(焦るなよ。
遠くへ飛ばすためには、速いバットスイングが必要だ。力んだら駄目だ。
身体の回転を使い、スイングスピードを極限まであげることだ)
柊のバットがストライクゾーンへやって来た球をとらえる。
(手ごたえは充分!)ここぞとばかり右手を返す。さらにバットをするどく押し込む。
見事に弾き返された打球が、投手の頭上をはるかに越えていく。
そのまま2塁ベースの真上を通過する。いきおいを増した打球が上空へ向かって伸びていく。
白い打球が、暗い夜空の中へ吸い込まれていく。
「消えていったぞ打球が・・・照明の上限を越えたんだ!」
照明塔の高さは20m。搭の上には暗い夜空がひろがっている。
柊の打球は、ナイター照明の上限をはるかに超えた。
数秒後。外野手が、闇の中から下降してくる打球を見つけだす。
打球を見つめたまま、2歩、3歩うしろへ下がっていく。
しかし途中で足がとまる。
外野手のはるか頭上を、打球がゆうゆうとした放物線をえがいていく。
外野へ落ちてくる球ではない。
球場に外野席は無い。
周囲に住宅があるため外野フェンスの上に、高さ6メートルの金網が張り巡らしてある。
柊の打球が、その金網の最上部へ当たる。
金網で金属音をはなったあと、推進力を失った打球が外野手の後方へぽとりと落ちる。
「行ったぜ・・・ほんとに打ちやがった!。
有言実行のサヨナラホームランだ。
それにしてもよく飛んだな。外野のいちばん深いところの金網に当たった。
しかも最上段へ当てるなんて、信じられねぇパワーだ・・・」
3塁を回り、1塁走者だった岡崎が帰って来る。これで同点。
柊はゆったりした歩調のまま、1塁から2塁へまわる。
2塁を回ったところで、3塁の塁審と目が合う。
「いいものを見せてもらった。
最後にストレートを投げた投手もたいしたものじゃ。
だがそれを読んで、見事にとらえたお前さんもすごい。
しかしまぁ、呆れるほどよく飛んだのう・・・。
県庁の土木総合職というのは、よっぽど暇な職場のようじゃな」
「いえいえ。土曜も日曜も仕事で駆り出される職場です」
「ほう。週末に仕事する公務員もこの世にいたのか。初耳じゃな。
んん・・・なんじゃ、どうした?」
2塁と3塁の中間まで来たところで、柊の身体がぐらりと揺れる。
支えを失った柊のおおきな身体が、ぐずぐずとグランドへ崩れ落ちていく。
「足が・・・」柊の顔を苦痛でゆがむ。
(48)へつづく
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/85/25accf1a7aacfbff3b5cf72e8d53a684.jpg)
投球は、3ボール・2ストライクのフルカウント。
投手が勝負の投球へはいる。
(最後の球はおそらく、一番自信をもっている渾身のストレート)
柊はそう読んでいた。
2球続いたライズボールは、最後にストレートを投げるための伏線に過ぎない。
勝負球はライズボールの軌道に似た、高目いっぱいのストレート。
打者がつられてもっとも手を出しやすい場所へ、勢いのあるボールを投げ込む。
それが三振を奪いにくる投手の王道だ。
投手がプレート板を蹴る。
空中を舞った左足が、半径2・44mのピッチャーズ・サークルをおおきく踏み越える。
足がサークルからはみ出ても、不正投球にはならない。
(大きく飛んだぞ。やはり最後の勝負球はストレート!)
バッティングでもっとも大切なことは、できるかぎりボールをひきつけること。
ひきつければひきつけるほど、ボールの軌道がはっきり見える。
好打を打つために打者がすることはふたつ。
ストライクにたいして、ためらわずフルスイングすること。
球から目を離さず、的確にバットの芯でとらえぬくこと。
(焦るなよ。
遠くへ飛ばすためには、速いバットスイングが必要だ。力んだら駄目だ。
身体の回転を使い、スイングスピードを極限まであげることだ)
柊のバットがストライクゾーンへやって来た球をとらえる。
(手ごたえは充分!)ここぞとばかり右手を返す。さらにバットをするどく押し込む。
見事に弾き返された打球が、投手の頭上をはるかに越えていく。
そのまま2塁ベースの真上を通過する。いきおいを増した打球が上空へ向かって伸びていく。
白い打球が、暗い夜空の中へ吸い込まれていく。
「消えていったぞ打球が・・・照明の上限を越えたんだ!」
照明塔の高さは20m。搭の上には暗い夜空がひろがっている。
柊の打球は、ナイター照明の上限をはるかに超えた。
数秒後。外野手が、闇の中から下降してくる打球を見つけだす。
打球を見つめたまま、2歩、3歩うしろへ下がっていく。
しかし途中で足がとまる。
外野手のはるか頭上を、打球がゆうゆうとした放物線をえがいていく。
外野へ落ちてくる球ではない。
球場に外野席は無い。
周囲に住宅があるため外野フェンスの上に、高さ6メートルの金網が張り巡らしてある。
柊の打球が、その金網の最上部へ当たる。
金網で金属音をはなったあと、推進力を失った打球が外野手の後方へぽとりと落ちる。
「行ったぜ・・・ほんとに打ちやがった!。
有言実行のサヨナラホームランだ。
それにしてもよく飛んだな。外野のいちばん深いところの金網に当たった。
しかも最上段へ当てるなんて、信じられねぇパワーだ・・・」
3塁を回り、1塁走者だった岡崎が帰って来る。これで同点。
柊はゆったりした歩調のまま、1塁から2塁へまわる。
2塁を回ったところで、3塁の塁審と目が合う。
「いいものを見せてもらった。
最後にストレートを投げた投手もたいしたものじゃ。
だがそれを読んで、見事にとらえたお前さんもすごい。
しかしまぁ、呆れるほどよく飛んだのう・・・。
県庁の土木総合職というのは、よっぽど暇な職場のようじゃな」
「いえいえ。土曜も日曜も仕事で駆り出される職場です」
「ほう。週末に仕事する公務員もこの世にいたのか。初耳じゃな。
んん・・・なんじゃ、どうした?」
2塁と3塁の中間まで来たところで、柊の身体がぐらりと揺れる。
支えを失った柊のおおきな身体が、ぐずぐずとグランドへ崩れ落ちていく。
「足が・・・」柊の顔を苦痛でゆがむ。
(48)へつづく
三遊間で・・足なのか腰なのか??
同点まではいいですよね・・さてその先?
たぶんまだ波乱がありそうですね
一週間から10日ほど遅くなるよう計算して
タネがまかれているのです・・
そんな技術を??恐れ入りました
なら 4日までは思う存分ゴルフ三昧
ではなくて・・奥様はまだ無理でしょうか
早くよくなって欲しいものです
今年も素敵なお話をありがとうございました。
奥様と良いお歳をお迎え下さい
来年も宜しくお願いいます。
いろいろなことがありましたが、なんとか本年も
無事に完走することができました。
元日は恒例になった「初日の出コンペ」です。
スタート時間は午前7時。
群馬はちょうど日の出の時間です。
カミさんも再起戦として参加しますので
2019年の初打つを楽しんできたいと思います。
1年間ご愛読をいただき、ありがとうございます。
新年もまた執筆にいそしみますので
ひきつづきご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。