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呉炳学ってどんな方? 大回顧展を見る前に

2012年01月22日 | NPO三千里鐵道ニュース

★画伯をこよなく敬愛し、作品に惚れ込んだある知性人の書かれた文です。回顧展がまじかに迫っています。是非、ご一読ください。 N

 

 

無名が貫いた絵への志

 

   

 呉炳学(オ・ビョンハク)は、齢88。日本と朝鮮半島の美術史から取り残された画家です。しかし、その画業には、絵を見る者の心を揺さぶらずにはおかない深奥なる世界観があります。中学生の時、セザンヌの絵に衝撃を受け、画家になることを決意。18歳で単身、朝鮮半島から日本に渡りました。苦労して、東京芸術大学に入学したものの、私淑するセザンヌ以外に師を見いだせずに中退。自ら独学の道を選び、今日に至ります。以降、妥協のない強い信念と情熱で独自の画風を確立してきました。

 無名であることは表現者という立場にとって、かえって幸せなことであったかもしれません。世情におもねることなく、自己の信じる絵画表現を追い求める人生を実現できたからです。容易ならざる絵画への情念を持ち続けたと言っても過言ではありません。この老画家の魂と呼応する色彩表現、画面の構成力は、在日という存在にあって民族の心を抱きながら、世界性を見据えたがゆえに表出できた絵画世界にほかなりません。

 今も、南北統一後、故国に美術館を創設し、絵と向き合う素晴らしさを伝えたいという壮大な夢を持ち続け、描いているのです。在野に生きた美術評論家針生一郎は、生前「呉炳学礼賛」という文の中でこう書き連ねています。「呉炳学は、セザンヌやゴヤ、クレーらの精神を、皮相な模倣の域を超えて刻苦勉励しながら真のうちに体得する事に賭けた。困難のうちに同様の志を抱く画家は多いが、ここまで見事にそれを実現した画家は他に知らない。呉炳学の制作道程が十分な説得力をもって世界的な視野での験証に値する事は、彼が80歳を超えて遅すぎるとはいえ、近年少数の人々にようやく理解されつつある」。

 呉炳学は、制作の深化と成熟を目指すのみで、作品の流通や評判には無関心のままでした。

無名、されど、大いなる志を持ち続けてきた老画家の人生を賭した画業の全貌を見渡す初めての大回顧展となります。本展では、画家の総決算ともいえる新作の大作「仮面舞」(500号5.5×2.5)ほか、静物、風景、人物などの油彩、水彩80点余が展示されます。文字通り、人生を賭け、精魂をこめた作品に少しでも触れていただければ、幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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