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メルケル首相の訪日メッセージ

2015年03月15日 | 三千里コラム

メルケル首相の訪日に関する3月10日付『ハンギョレ新聞』漫評
(メルケル「歴史の清算を!」、安倍「沈黙と冷や汗」、親日派の韓国教育部長官「過去を問うな!」)



ドイツのアンゲラ・メルケル首相が3月9日、二日間の日程で訪日した。2008年以来、7年ぶりの訪日だ。目的は、今年6月にドイツで開催されるG7(先進国首脳会議)に向けた準備のためと言われている。短時間の日程で彼女は、膨大な仕事をこなしている。

9日に『朝日新聞』社屋での記念講演、及び安部首相との首脳会談(全体会合やレセプションを含め、両首脳は5時間半を共に過ごした)。10日は、民主党・岡田克也代表との約40分にわたる会談。ドイツ首相として何らかのメッセージを発した機会が、少なくとも三回あったわけだ。

問題は、岡田代表との会談内容だった。野党党首との、どちらかと言えば“私的で打ち解けた対話の場”であったからか、メルケル首相は歴史問題でかなり踏み込んだ発言をしたようだ。岡田代表が「戦後70年になるが、日本は中国・韓国と和解したとは言い難い。ドイツの場合はどうだったか」と尋ねたところ、メルケル首相は「歴史問題を完全に解決するのは不可能だ。だから私たちは、常に過去を直視しなければならない」と答えている。

会談直後に行われた岡田代表のテレビインタビューによると、メルケル首相が自発的に慰安婦問題を取り上げ「東アジアの状況を考えると日韓関係は極めて重要だ。(慰安婦問題)をきちんと解決する方が好ましくないだろうか。日本と韓国は価値観を共有しているので和解は重要だ」と述べたそうだ。

日本政府としては“聞きたくない”発言であろう。ドイツ政府も外交上の配慮からか、日本政府のメンツを重んじる“アフターケア”を講じている。菅義偉官房長官は13日の記者会見で、メルケル首相が岡田代表に‘従軍慰安婦問題の解決を求める発言をした’との報道に関し、ドイツ政府から「メルケル首相は過去の問題について、日本政府がどうすべきかというような発言を行った事実はない」との説明があったと紹介した。

一方の岡田代表は同日、国会内で記者団に「(メルケル氏から)問題を解決した方がよいという話があった。私もかなり丸めて言っているが、(メルケル氏が)慰安婦問題を取り上げたことは紛れもない事実だ。ドイツ政府も民主党に何も抗議していない」と語っている。

日本国内の極右的なインターネット世論は、岡田代表を“嘘つき”と罵倒する内容で占められている。筆者としては、歴史問題に関するメルケル首相の真意を把握するうえで、9日に行なった記念講演と、首脳会談後の記者会見における発言に注目したい。

「ドイツは幸運に恵まれました。悲惨な第2次世界大戦の経験ののち、世界がドイツによって経験しなければならなかったナチスの時代、ホロコーストの時代があったにもかかわらず、私たちを国際社会に受け入れてくれたという幸運です。どうして可能だったのか? 一つには、ドイツが過去ときちんと向き合ったからでしょう。」(記念講演での質疑応答-『朝日新聞』ホームページから引用)

「私は、日本に対して、アドバイスを申し上げるために参ったわけではありません。私には、戦後、ドイツが何をしたかということについて、お話することしかできません。戦後、ドイツではどのように過去の総括を行うのか、どのように恐ろしい所業に対応するのかについて、非常につっこんだ議論が行われてきました。ナチスとホロコーストは、我々が担わなければならない重い罪です。その意味で、この過去の総括というのは、やはり和解のための前提の一部分でした。」(共同記者会見での時事通信社・高橋記者に質問に対する答弁-日本政府外務省のホームページより引用)

筆者が得た結論は明白だ。メルケル首相とドイツ政府は、真の和解に至る道が決して容易なものではないことを強調したのであろう。「侵略や強制支配の過程で犯した非人道的な罪を、完全に払拭することも、なかったかのように粉飾することもできない。それ故に加害国は、常に歴史と向き合い過去の誤ちを再確認して、忘れないために努力しなければならない」というメッセージなのだ。

ただ、優れた外交官でもあるメルケル首相は、他国への直言がしばしば意図とは逆効果を生むことを承知している。それで、日本への直接的な批判は避け、ドイツが実践した政策について淡々と述べる道を選択したのだろう。

以下に、メルケル首相の訪日に関するドイツの新聞記事を紹介する。3月9日付『南ドイツ新聞』で、タイトルは「‘丁寧な批判’という形での訪日」だ。全文は長坂道子さんのブログ「ときどき日記」http://mnagasaka.exblog.jp/を参照されたい。(JHK)

「…今年は第二次世界大戦後70年。日本は近隣諸国に惨劇をもたらしたが、ドイツと異なり、今日にいたるまでその責任を正面から引き受けてこなかった。右寄りの安倍首相は、戦争犯罪を相対化しようとさえしている。そんなわけで現政権にとってリベラルな朝日新聞は目の敵なのである。

安倍人脈は、慰安婦問題での朝日新聞の数年前の誤報道を利用することで、従軍慰安婦たちのたどった悲劇について、これを根本から疑問視しようとする。こうした背景を踏まえたからこそ、メルケル首相は今回の訪日に際し、敢えて朝日新聞への露出にこだわったわけであり、そこには彼女の明確な意思表明があったのである。

もちろん月曜日、メルケル首相は日本の政府と直に渡り合うようなことはしていない。その替わりに、メルケル首相は自らの経験について淡々と語ったにすぎない。“ドイツは第二次世界大戦勃発の責任、ホロコーストの責任を負っているにもかかわらず、国同士の共存に再び仲間入りを許されました。それは自らの責任を認めたからなのです。過去の徹底的な検証や反省の作業が、和解を可能にした条件の一つなのです。ドイツはけれど、幸運でもありました。なぜなら、近隣諸国が和解のための手を差し出してくれたからです”と。

日本がこうしたオブラートにくるまれた批判をどのようにかわすかが、端的に見て取れたのがNHKのメルケル首相訪問の扱いであろう。会合の場所がかの悪評高き朝日新聞であったということを、NHKの報道は伏せた。そしてメルケル首相のスピーチに関しては、ごく一部を抜粋したに過ぎず、そこでは“ドイツが和解への意志を持った近隣諸国に恵まれたことは幸運だった”ということだけが紹介された。彼女の言葉の中での“自らの責任を引き受けなければならない”という部分はカットされていた。安倍首相もまた、共同記者会見においてメルケル首相のスピーチにはまったく触れなかった。…」

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1 コメント

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三猿です。 (pcflily)
2015-03-15 22:41:08
この国は
過去の歴史を
真実を
 見ざる
 聞かざる
 言わざる
     三猿は、本当に賢いのでしょうか?
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