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アジア大会の「南北共同応援」と反北団体の宣伝ビラ

2014年09月29日 | 三千里コラム

南北共同応援団-アリラン応援団 (9.22、仁川アジア大会)


仁川アジア大会は連日の熱戦が続いている。10月4日の閉幕まで、6日間を残すだけとなった。28日の時点で金メダル数を見ると、中国がダントツの1位(107)。以下、韓国(42)、日本(34)、カザフスタン(12)、北朝鮮(8)の順だ。南北合わせて50個の金メダルは善戦といえるだろう。

銀と銅を含めたメダル総数では、中国(222)に対し、南北の合計は(139+25=164)になる。ちなみに日本は(126)。13億人口の大国と1億3000万人口の富国に対し、7500万人口の南北が獲得した成果だ。朝鮮民族の若きアスリートたちの健闘を、心より讃えたいと思う。

惜しむらくは、「平和の息吹・アジアの未来」をテーマに掲げた今大会で、2002年釜山アジア大会のような、南北和解の感動的なシーンが見られないことだ。北からの大規模応援団の参加が実現しなかったことは、大会がもう一つ熱気に欠ける要因にもなっている。

予選とはいえ、サッカー競技が開催されたスタジアムには空席が目立った。それでも、南の市民による自発的な「共同応援団(アリラン応援団)」の姿は、そこだけが別世界のように和ましい雰囲気だった。北の応援団が来れなかったので、実際は「北のチームを応援する南の応援団」だが、平和と統一、南北の和解と協力を願う市民の素朴な心情があふれていた。北の選手たちにも、大きな声援になったことだろう。

しかし、スタジアムを一歩出ると、悪化した南北関係を象徴するような出来事が目立つ。アジア大会開幕式から二日後の21日、「自由北韓連合」など脱北者団体が軍事境界線付近の統一展望台に集まり、対北宣伝ビラ20万枚、1ドル紙幣1000枚、DVD、USBなどが入った風船10個を北に向けて飛ばした。

写真入りのビラは「北の三代世襲制を批難」する一方で、南の歴代大統領のうち、李承晩・朴正熙・朴槿恵をそれぞれ、「英雄・愛国者・改革者」と美化する内容だった。北はその間、「ビラは南北の和解を損ない、相互の誹謗中傷を禁じた当局間の合意に違反」するとして、ビラの散布を中止するよう要求してきた。

南はこれに対し、「対北ビラの散布は民間団体が自律的に推進するもの。政府は一切関与しない」との立場だ(19日、韓国政府統一部の定例会見)。たとえ、北を刺激し南北関係を悪化させることになっても、“表現の自由という民主主義と人権の根幹は擁護する”との姿勢らしい。

「韓国進歩連帯」の会員20余名が当日、統一展望台の広場で記者会見し“政府が反北団体にビラ散布を自粛するよう促すべきだ”と主張している。彼らは“対北宣伝ビラの散布は、朝鮮半島の平和を破壊する危険な行為”と述べ、その根拠として『南北基本合意書(1991年)』の第3章第8条「相手への誹謗中傷の禁止」と、第2条「風船を利用した物品の散布中止」を挙げている。

南北関係が悪化した責任を、どちらか一方にだけ追及することは好ましくないだろう。しかし、選りに選ってアジア大会の期間中に、対北宣伝ビラの散布を容認(放任?)するのもいかがなものか。一切の関与をしないと傍観する韓国政府の姿勢からは、南北対話実現への熱意は感じられない。

以下に、9月22日付『オーマイニュース』に投稿された記事を要訳して紹介する。南北共同応援団の一員として、女子サッカーの予選「朝鮮対香港」のゲームを応援したペク・ソンギュン氏のレポート。(JHK)


手を振りながら駆けつける北の選手たち...観客席では涙、、、

「朝鮮民主主義人民共和国リ・イェギョン選手が、チーム3点目のゴールを成功させました!」。場内アナウンスの声が仁川ラグビー競技場に響き渡りました。

「私たちはハナ(一つ)!いいぞコリア!」
 北朝鮮選手のゴールに、南北共同応援団が声を一つに応えます。9月20日に行われたアジア大会女子サッカーC組のリーグ2次戦、北朝鮮と香港戦でのことです。この日、北朝鮮は香港に5-0という大差で勝利し、C組1位で準々決勝へ進出することになりました。

女子サッカーは韓国では、いくらメジャーな大会といっても人々の関心をあまり引かないものです。しかも、北朝鮮と香港の競技ならば尚更です。この日はしかし、「南北共同応援団」の活躍ぶりが観客の目を引きました。観客のほとんどを占めた「南北共同応援団」は、その数が 3000人近くになったからです。

北朝鮮は今回のアジア競技大会に参加を表明し、応援団も一緒に来るはずでしたが、政治的な理由で実現しませんでした。北朝鮮としては、応援団なしで孤独な競技をしなければならない状況だったのです。2000年(6・15共同宣言)と2007年(10・4宣言)には南北首脳会談が開かれ、その流れで朝鮮半島に平和ムードが造成されたものです。オリンピックやアジア大会などで、「南北統一チーム」の結成が議論された時期でもありました。

しかし、政権が代わると政策も後退し、同時に国際情勢も変化しました。朝鮮半島の情勢も梗塞局面となり、南北関係の現状はとても不安で、時には危機ともいえる状況に陥ったりします。そのために、2014年アジア大会に北朝鮮の応援団は参加せず、市中に北朝鮮国旗が掲揚されることすら難しくなったのです。南北関係がいかに追い込まれているのか、おわかりいただけると思います。

このような状況ですが、「南北共同応援団」が結成されたのはとても嬉しいことです。民間の次元で南北の和解と平和ムードを引き出すことは、しかも最近のように“従北”のレッテル貼りが横行する政局では、決して容易なことではありません。それでも、この日、仁川ラグビー競技場の客席はほとんどが「南北共同応援団」で埋まりました。まだ、統一の熱気が冷めていないことを確認できる一日でした。

"私たちは一つだ!"-南北の統一チーム、可能だろうか?

この日、競技場は大変な熱気でした。北朝鮮選手たちの実力が香港チームに比べて優れており、彼女たちは申し分なく鍛えられた技量を発揮したからです。しかし熱気の理由は何よりも、国籍は違うが私たちと同じ顔つきで同じ言葉を話す選手たちが、軍事境界線を越え仁川の地でサッカーをしている、目前の現実そのものにあったのではないでしょうか。

この日のハイライトは、ゴールを入れた場面でも、「共同応援団」の熱を帯びた応援ぶりでもありませんでした。競技終了のホイッスルが鳴って、北の選手たちが私たちに向かって手を振りながら走ってくるのに応えて、応援団も彼女たちを熱烈に歓迎するシーン...。実に壮観でした。

あまりにも久しぶりのうれしい出会いは、普段、統一という民族的な大義を忘れて過ごしてきた私たちに、新鮮な衝撃と胸がジーンとなる感激を抱かせてくれました。ただ遠くから挨拶をしただけなのに、観客席で見せてくれた数多くの人々の涙は、私たちがやはり同じ民族なのだと悟らせるものでした。

この日、タイでは16才以下(U16)AFC青少年サッカー大会の決勝があり、南と北が戦いました。北が2-1で勝ったという事実はおそらく、わが国の多くのサッカーファンに衝撃を与えたことでしょう。激しいゲームとなり、互いに掴み合いの衝突すら起こりかねないほどの白熱した内容だったそうです。

南と北が決勝に上がって勝敗を競ったわけだから、結局は、その日の優勝チームは「コリア」だったのです。この紛れない事実には、とても大きな意味があると思いませんか。“南北が統一チームを結成しそれぞれの優秀な選手たちを結集すれば、国際試合でも十分に通用するだろう”と想像するだけでも、楽しくなります。

それを実現するためには、私たちが越えるべき山がまだまだたくさんあります。でも、出会いさえすれば、私たちが日ごろ感じているぎこちなさや警戒心も、一瞬にして崩れるような気がします。今回のアジア大会が、統一に関して、民族に対して、共感を形成できる契機になるよう願って止みません。「南北共同応援団」がその役割をはたせるように、私も共に応援します。

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2 コメント

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そこに人間がいる! (いそじろう)
2014-09-30 11:50:00
「遠くから挨拶しただけなのに・・・観客席で涙を流してくれる人がいる」「私たちはおなじ顔つきをし、同じ言葉を話す」「日常のなかで、ともすれば忘れがちであっても、統一を呼び覚ます」時空だった。
新鮮な、感動の。
「U16サッカーの決勝で北が南に勝った。優勝したのはとりもなおさず〈コリア〉だということだ〉
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涙なしでは読めない (pcflily)
2014-10-01 08:05:00
何時も心に響く良い記事をありがとうございます。
「祖国統一」という言葉さえ、受け入れて貰えないような昨今の同胞間の雰囲気にいます。
今日は涙なしでは読めない記事でした。希望の明りの見えるお話を有難うございます。
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