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『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 七話「愛と憎しみ」

2012-11-08 01:32:00 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
惑星アルテメシア ジョミーの故郷 ここの教育衛星で学園生活を送る
ジュピター キース警護時ジョミーのコードネーム(シャトル所有↓)
ベルーガ ジョミー所有の小型シャトル(ワープ可能、ステルス機能あり)
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 七話「愛と憎しみ」

「ジョミー、ヘッドセットの変わりにブレスに機能を追加させた」
 手を出せとキースが言った。
 ここは式典の行われる会場の控え室だった。
「新しい機能?」
 僕の右手のブレスの解除コードは二人しか知らなかった。
 それはお互いが考えた物で、僕のコードを彼は知らないし、彼のコードも僕は知らなかった。
 ただこれが外れたり壊れたりするとキースにわかるようになっていた。
 これは普通の力では切れない。
 ミュウの力であれば壊せる。
 だが、何も入力しないで壊すと、僕のシャトルから主砲が僕がその時居る場所に向けて撃たれるのは変えていなかった。
 今日は、ブレスが出すシグナルの範囲にはベルーガはいなかった。
 付け替えられたブレスのウィンドウを開いて確認をするジョミー。
「って…、心拍とかは前のにあったからわかるけど…、これ何?」
「お前の役職。卒業したら働くんだろう?」
 とキースは笑った。

  軍事基地ペセトラ
 戦争終結の記念式典が行われる軍事基地ペセトラに僕はいた。
 惑星の表面にはいくつものドーム都市が連なり軍事基地を形成していた。
 行政と軍事が切り離せないので、ここはノアの直轄地のようなものだった。
 僕は制服を着て学生として観客席に紛れていた。
 記念式典は予定通りに進んだ。

 終わる直前に一隻の戦艦が現れ主砲を向けて脅してくる所まで予定通りだった。
 指示通りに式典会場の上空にミュウの戦艦ゼルがステルスで現れる。
 その中にはミュウの部隊とトォニィの親衛隊が乗っていた。
 対峙する二隻の戦艦
 所属不明の戦艦が撃ってくる。ゼルからそれを相殺するように撃たれる。
 下のドームにはミュウのバリアが張られている。
 計画の失敗を確信した戦艦が旋回して逃げてゆく、それを追うようにゼルが動き出した。
「!??」
 僕は戦艦ゼルの中にいた。
 所属不明の戦艦から主砲が撃たれる寸前に僕はキースの元へ走り、彼を上空のゼルへと送ったのだ。
 だが、彼に駆け寄った瞬簡に物質転送が起きて僕らはここに飛ばされた。
 かつてセルジュが僕に行ったあの実験船のと同じだ。
「…何故?」
 僕はそう言う事しか出来なかった。
 すぐ横では、キースが転送の衝撃で床に膝をついたまま、頭痛を振り払っていた。
 この部屋は、キースの為に用意した部屋だ。
「どうして、僕までここに…」
「どうやら、ここには俺だけが送られるはずだったようだな」
 部屋の壁に浮かぶ沢山の映像と情報を見ながらキースが言った。
 所属不明艦を追ってゼルがワープ準備に入ったと放送が流れる。
 僕は腕の端末のマイクをオンにすると近くにいるはずのシドに向かって叫んだ。
「僕までとはどういうつもりなんだ」
 シドからの返事は無かった。
 やがて、戦艦ゼルがワープに入った。
 ゼル以外にも追っている戦艦が表示されているのを確認してキースが僕を見て言った。
「お前も安全な所に逃げていろって事だろう?」
「…そんな…」
「今や海賊は将軍が動かし、軍は俺ではなくセルジュが動かし、ミュウはトォニィが動かしている事になるな」
 ワープ座標の表示と共に、ワープアウトタイムと戦闘体制のまま待機と表示されている。
「あの会場に現れたのは過去に行方不明になった船だ。民間船だが、攻撃が出来るように改造されていた。船の識別が難しいな…」
 点滅する様々な船を見ながらキースが呟いた。
「今から行く座標には敵しかいないと思っていい…」
「消耗戦になるな…」
「…将軍がそうしたいならね…」
「トォニィからの情報は上がっている。お前はこれをどう見る?」
「人類の戦艦ゼウスを旗艦として布陣させてるんだよね。このままだと敵の真ん中に突っ込むね」
「ゼウスには俺が乗っている事になっているからな…」
「……」
 敵を追いながら二度目のワープに入るゼル
 少しずつお互いの陣形が見えてくる。
 戦況が整うにつれて学園の制服のままでは問題があると思い僕は着替える事にした。
 クローゼットには、シドが用意したのだろう僕の昔のソルジャー服が入っていた。
「着替えがこれしかなかった…」
 マントを少しなびかせながら歩く僕を見て「懐かしいな…」とキースがつぶやいた。
 キースは何か言おうとしたが、その言葉を飲み込んだ。
「…?」
 僕には、キースが言おうとした言葉は何だかわからなかったが、この服を着る事に抵抗はなかった。
 前に感じた気恥ずかしさも今はもう無かった。
 ソルジャー服に包まれているという安心感だけがあった。

「将軍の得意な奇襲とかはしてこないんだね…」
「それは互角に戦える自信があるからだろう」
「戦力差があると卑怯な手も使うけど…か…」
 画面を遮るように僕と壁のパネルの前に立って、キースが真剣な顔をして僕を見下ろして聞いた。
「一度、聞こうと思っていたが、お前は戦争をどう捉えているんだ?」
「この戦いを?」
「いや、戦争そのものをだ」
「ん…、人として愚かな行為だと…ただの陣取り合戦だと思っている…」
 僕を見下ろすキースの視線を避けて答えた。
「先の大戦もそう思うのか?」
「ううん。僕達が起こした戦いは聖戦だと思っているよ…仲間の命を守る為、仲間の誇りを守る為の聖なる戦いだったと…」
「そう思い込もうとしているんじゃないのか?」
「…どんな言い方をしたって…。戦争なんて結局は殺し合いだから…人としての心を何かと取り替えてやってゆくしか出来ない。戦争という名の大義名分が無いと殺せない」
「今回はこの戦いの大儀はどこにある?」
 キースは壁のパネルに向かって聞いた。
「大儀はない…。ただの復讐だ。彼は憎しみから動いているだけだ。僕らの戦いとは違う…」
「グライムの弔い合戦か?」
「…そうだね」
「お前は…どう思う?お前は復讐しないのか」
 キースはパネルを見たままだった。
 その表情は読めない。
「…キース…どうして思い出させようとしているんだ。僕が君をどうしたいと…言わせたいんだ」
「…なら、俺を殺したいか?と聞いていいか?」
 そう言ってキースは振り返った。
「…もう、聞いているじゃないか…」
 僕はキースを見返して少し笑った。
「俺は将軍に殺されるくらいならば…お前に殺されたい」
 キースはまっすぐに僕を見ていた。
 この瞳に僕は何を答えればいいんだ。
「……僕は…」
「俺が憎いか?」
「ああ…」
 僕はもう彼を見る事が出来なくなって目を閉じた。
 キースはまたパネルを見て話を続けた。
「なら解るだろう…何年経っても、思い人が死んでいなくても、憎しみは消えない」
「…でも…それでも!憎しみは憎しみしか生まない!」
 ジョミーは絞り出すような声で、それでも、強く言い切った。
「そうだ。それで殺し会っていたらいつまで経っても世界は憎しみの呪縛から解放されない」
「…僕は君を憎しみ切れなかった…それを愛するに変えて…それは本当に…それで良かったのだろうか?」
 言いながら、ジョミーはキースの前に回りこんだ。
 腕を掴んできたジョミーを見てキースは優しく言った。
「今、俺を殺したいか?」
「それが答え?」
「良かったかどうかの答えなら、俺に答えはない。その替わりに、俺がまだ憎いならを殺していいと言っている」
「…憎いよ。でも、それ以上に君は人類に必要だと思ったからイグドラシルで地上に運んだ。その命を今またここで消したいと思わない。本当に殺したいならとっくにそうしてる」
「そうか…。なら俺は将軍には殺されない。お前が俺を殺せ」
「キース。そんな事ばかり言ってると死亡フラグ立っちゃうよ」
「そんな物、何本でも立たせとけばいい」
「あはは」
 袖を掴んだジョミーの手が小さく震えていた。
 キースはジョミーの頭に手を乗せて言った。
「せっかくその服が着れるまで成長したんだ。お前はそんな物を立たせるなよ」
「それじゃ、僕は君が死ぬまで死なないよ」
「出来るだけ長生きするさ」

 この時の僕らの間には何が流れていたのだろう。
 「愛」なのか?それとも「憎しみ」なのか?
 僕はキースの手の暖かさを感じながら、彼の腕から手を離した。



   続く








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