君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十四話「銀の祈り 金の願い」 

2012-03-26 02:23:52 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」十四話「銀の祈り 金の願い」

 どこまでも、白い世界
 ガラスの床、ガラスのドーム
 外は白い光と白い雲が流れてゆく
 そんな白い空が映るガラスの床
 音も何もない 人も何もない世界
 僕は死んだのだろうか?
 ここが天国なのだろうか?
 あれから何日、いや、何ヶ月経ったのだろう。
 ずっと歩いてやっとドームの端に辿り着いた。
 下を覗いてみたが、やはりそこには何も無かった。
 他と同じように、ただ雲が流れているだけだった。
 僕は外に向かって声を出してみた。
「誰か居ませんか?」
 もちろん返事はない。
 ドームに沿って、一周しようと僕は歩き出した。
 ここは何処だろう。
 そして、僕はここで何をすればいいのだろう?
 そう、ミュウの力はまだ僕の中にある。
 けれど、それでここを壊す事は出来なかった。
 力を使っていないのに、目は霞む事無く見えるし、耳も聴こえる。
 五感は損なわれていないようだった。
 そして僕は昔のソルジャー服を着ていた。

 僕はスメールで倒れて意識を無くしたはず…。
 やはり、僕は死んだのだろうか?
 死んだならどうしてマザーは僕に何もしないのか?
「早く死んでおしまい」と、いつも彼女は側にいた。
 何年もすぐにでも発動しそうだったあの感覚は今は無かった。
 それとも、僕はもう彼女に吸収されていて、このままここで朽ち果てるのだろうか?
 暖かいベッドで死を迎えられるとは思ってはいない。
 ここが最後でも構わない。
 このままでも僕は構わない。
 沢山の人を殺し、沢山の人から憎み恨まれ、大切な仲間を騙し裏切り続けて、最愛の人を見殺しにした。
 そんな僕が今更何をどう償えと。
 どう生きろと…言うのだろう。
 この命の起源すら作り物だったと言うのに、僕の本当はどこにも無い。
 それでも僕に何かが出来ると言うのなら、身体も命も心も何もいらない。
 何一つ残さなくていい。
 この思いを、力に変えて未来に繋げる事が出来るなら…。
 もう思い残す事はない…。
 そう、僕は何も思い残すことは無い…。
 僕は、人の想いの塊の魂のような存在(もの)になる事もない…。
 思いはどこにも残していない。あの人にもあの子にも、どこにも。

 この白いドームから伸びる一本の銀の鎖。
 これは…?
 これを切ったら…。
 …る…も……無くなる…?
 僕は無意識で青い細い剣を作っていた。
 それはいつものよりずっと小さく細かった。
 そして
 鎖へと手を延ばした時…
「待って、ジョミー」
 僕の背後で懐かしい優しい声がした。
 静かに青い剣が消える。
 その声に振り返るとそこには白い淡い光があった。
 それは段々と変化して…彼になった。
 そこにはソルジャー・ブルーがいた。
「ジョミー、やっと会えたね」
「……」
 彼は本物だ。
 本物の想いの塊。
 僕が作り出した幻影ではない。
 それだけで、そう確信しただけで言葉が出なかった。
 ゆっくりと思い出が蘇ってくる。
 死なせてしまった後悔や「月」での再会が浮かんだ。
 またいつかどこかで出会えるとしたら、きっと僕は子供のように泣くのだろうなと思っていた。
 けれど、実際は、涙は一すじ流れただけだった。
 ただ会えた事がとても嬉しかった。
 心がとても穏やかで静かなのは、きっと彼から感じられる空気がそうだったからだろう。
 貴方はすごく自然にそこにいた。
 柔らかに微笑んでいた。
 僕も彼につられるように笑った。
「信じられない…逢えると思っていなかった」
「ジョミー」
「じゃあ…やっぱり僕は死んだんだ」
「正確に言うとそうだ。だが、厳密に言うと死んではいない」
「死んでない?」
「そう」
「そう…なんだ…」
 しばらくジョミーは黙っていた。
「…ジョミー。どうして君は何も聞いてこない?」
「何も浮かばないんだ。何もかも真っ白になってる。ブルー。貴方が知っているなら、僕に話してくれればいい」
「…そうか、わかった」
 そう言うとブルーは昔のようにマントを翻して歩き出した。
 ジョミーは自分の身長が彼より高くなっているのを感じつつ後に続いた。
 そして、ドームの中心と思われる所まで戻ると彼はゆっくりと話し始めた。
「まずここは何処で何かを話そう。ここは宇宙の一部だ。現実世界でもあり、非現実でもある。そしてここは、君が作ったんだ」
「僕が?」
「そう。ほら見てごらん」
 ブルーは手を上に上げる。
 そう言われて見上げた先にはさっきまで全く見えなかった星が見えた。
「雲が切れて、星が見える!」
「ジョミー。今の僕の言葉で君がここを宇宙だと認識したからだよ」

 暗い宇宙、星の瞬きしかない無音の世界
 その寂しい世界を懐かしく思った。
 僕らはそんな宇宙を何年も彷徨っていたんだ。
 だからこそ僕らは大地を地球を求めた。
「でも、ここは何処?」
 上を見上げたままジョミーが聞いた。
「座標を感じないからかい?」
 そう僕は少しずつ見えてくる星を確認しつつ座標を探していた。
「ここはね、あえて言うなら未来なんだ。だから君は知らないんだ」
「知った星がない程の…未来…」
「そう。でも現実でもあり、現実でもない」
「どういう事?」
「ここは時間を必要としていない。宇宙の一部。君が作った、君の最後の砦。覚えてないのか?」
「僕の砦?」
 僕が作った砦って?と考えていると、急に記憶が戻ってきた。
 僕はスメールで倒れてすぐにマザーと会ったんだ。
 マザーの後ろには「赤い地球」があって…僕は…。
 僕の意識は太陽系まで行っていた事になるのか…。
 それが、何故…こんな所に…いる。
「ソルジャー・ブルー」
 ジョミーは彼を見た。
「思い出したかい?」
「僕が………」
「ん?」
「いや、よく覚えてない…のだけど…貴方が助けてくれたの…ですか?」
 なんとも歯切れの悪い言い方になってしまったが、あの時僕は一度死んでいると思えるけど、と付け足した。
「助けたのは僕じゃない。僕の思念は月と地球の中間にあった。グランドマザーが君を連れて行くのがあまりに急だったから、僕は間に合わなかった。倒れた時に君の側に誰か…。クローンの僕か…、彼がとっさに君の時間を止めた」
「ソルジャーズのブルー。彼が…?」
「仮死状態になった君の思念は、マザーの許に引き寄せられ、地球へと向かった。仮死だった影響で、そこにわずかな時間(隙)が生まれた。僕は君にやっと追いつき、そして君は「地球」と「僕」を見た」
「…僕は地球の前にいる貴方を見た」
「そう、そして君は自分の力でマザーの許から逃げここに来て、これを作った。僕はまた君を追えず君を探すのに時間がかかってしまった…」
「…貴方が僕の前に来たのは僕の力を解放する為?」
「君が、その眼で僕を見ると、君が作った君の制限(リミッター)が解除されるようにしたのは僕だからね」
 だから、僕は月で制御が出来なかったんだ。
 あの狂いそうな想いは力の奔流…。
 僕は想いのすべてをぶつけてあの氷を作った。
 「月」が終わりで始まりの場所だった。
 僕は月へ貴方への想いを封印して、また再び地球へ向かう事を決めたんだ。

 ふいにブルーが僕の手を取り、覗き込むように見上げた。
「ジョミー、君は僕を許してくれるかい?」


  続く








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