君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 一話「追憶の破片」1※BL風味

2012-01-18 01:51:38 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
☆あらすじ☆
一章「黄昏の海」
地球へ辿り着いたミュウ。人類との会見後グランドマザーの許に降りたジョミーとキースは、マザーの策略で殺されそうになる。ジョミーの最後の力でイグドラシルから地上に戻った二人。
大戦から二年。ミュウは新たな移住惑星に移り住む事となった。その旅立ちを見送ったジョミーはキースと共に「月」へと向かった。そこにはソルジャー・ブルーの身体が保管されていた。
その事実をジョミーは何故かミュウ達に明かせずにいた。
二章「湖底の城」
木星でキースの警護をして暮らすジョミーに「カナリア」の少年が会いに来た。彼らには渡航出来るIDは無い。事の不審さにジョミーとキースはある計画を練った。だがそれは思いも寄らない展開へと進んだ。事件解決後、ジョミーはメティスを出てスメールへ渡る事となった。
三章「星の祈り」
トォニィの結婚式の為、ミュウの移住先の惑星メサイアへと向かうジョミーとフィシス。過去にこの空域にジョミーは辛い思い出があった。木星のメティスを出て二年振りに会ったキースにジョミーが告げた言葉とは…。キースは再び権力の道へと登り始じめる。やがて、姿を現す敵と最後のメギド。その標的は惑星メサイアと首都星ノアだった。
四章「心のままに」
四年前、ジョミーがジュピターだった頃、軍事惑星ペセトラの地下にまだ残っていたマザーの端末に呼ばれたジョミーはその攻撃で倒れてしまった。そこに現れた白い思念のブルー。キースとの邂逅でブルーは彼に「時が溶ける」と警告をした。
同じ四年前。ジョミーはミュウの少年ヴィーと出会った。四年後、成長した彼はキース付きのミュウ部隊へと配属された。彼がキースに語った過去の傷害事件にショックを受けたキースはジョミーを呼び出した。そして、キースにジョミーは今まで隠していた事実を明かした。
※四章は最終章に向かって、心残りの無いようにとあれこれと詰め込んでいます。
暴力が嫌いな方はその回(パスワード入室の隠部屋)を飛ばして下さい。パスしても繋がります。

 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 一話「追憶の破片」※BL風味

 はじまり そして…
 グランドマザーの前に立つ少年
「承認されました」
「計画を進めなさい」
 威圧的なマザーの声が響く
「了解。マザー」
 足元から消えるマザーの瞳
 少年は何もなくなった床を睨み
「運命(さだめ)など認めない」とつぶやいた。

  現在・Artemesa
 ジョミー達がスメールを旅立ってから四ヶ月になる。
 アルテメシアに居たジョミー達のもとに、ツェーレンが無事に女児を出産をしたとの嬉しい知らせが届いた。
 彼らはメサイアへ戻る事になった。
 アルテメシアの戦艦ゼルからの通信が入った。
「着艦体勢に入りますよ。ジョミー」
 副操縦席のジョミーにシドが声をかける。
「起きてください」
「ん…あぁ」
 と、ジョミーが目覚める。
 シドは最近よくこんな風に寝てしまうジョミーを見ると、ブルーのイメージが重なり、このまま起きないのではないか心配になった。
「どこか体調が悪いのですか?」
「大丈夫だよ」
 戦艦ゼルの上部甲板にシャトルが着艦する。
 停止位置ぴったりに止めるシド。
「僕ではこうはいかないよ」
 笑うジョミー。
 惑星メサイアまでは戦艦ゼルでの航行となる。
 戦艦でも十日以上はかかる道程だった。
 ジョミーは仲間たちへの挨拶を済ませて艦橋へ向かった。
 窓の外には星が流れていた。
 さっきはキースの夢を見た。
 彼の傍らにはブルーも居た…。
 半年前、僕はキースに知り得たすべてを話した。
 話してしまったのは…僕の弱さだろうか…彼を巻き込むべきでは無かったのかもしれない。
 キースは今、何をしているのだろう。
 ノアやペセトラ、それとも地球でマザーの隠された謎を探っているのだろうか?
 そして、何かを見つけられただろうか?
 …彼なら何かを探し出せるかもしれないが…。
「どこにも行かせない」
「僕も行きたくない…」
 あれは…もう、何も隠す必要の無くなった僕らの本当の言葉だった。
 それでも…僕らには、立ち止まる時間は無かった。
 しかし、ブルーは何故キースの所に現れたのだろう?
 僕へのブルーの最後の言葉は「ジョミー、愛している。君は生きてくれ」だった。
 その言葉通りに取れない事もないが、あれはきっと…貴方の覚悟。
 あの言葉がきっかけで僕は謎を探り出した。
 たとえそれを貴方が望まなかったとしても、僕の見つけた起源の答えは間違っていないだろう。
 だから、僕はもう振り返りはしない。
 先に進むだけだ。
「各員、第一回目のワープに入ります」
 と放送が流れる。
 ジョミーは艦橋へ入って行った。
 ワープ後、戦艦ゼルのジョミーの部屋にシドがやってきた。
「フィシスがメサイア着いたそうです」
 色々と報告をするシドと話していたジョミーが急に眠たそうに目をこすった。
「ジョミー?」
「ごめん。シド…すごく眠いんだ」
 と言いながら、隣の部屋のベッドに横になる。
 このままで話していい?とシドに問うが、その後はもう会話にならなかった。
 夢が僕を誘う…何かが僕を呼んでいる…。
 それに抗う事が出来ずに落ちかけた時に、シドがそっと僕にキスをした。
(シド…僕は…)
「あなたが好きです」
 そして彼は確認をするように、もう一度、キスをした。
 今度は舌を入れてくる。
「ん…」
 さすがに落ちかけていた僕の意識が反応する。
 けれど、目が開けられずうわ言のように…、
「駄目だ…シド」と言った。その後は言葉ではなく(僕は…君とは…友達でいたい)と伝えた。
 ハッとしてシドが唇を離す。
「目を開けてジョミー」
「……」
 少しずつ目を開けるジョミー。
 それをじっと見ているシド。
「…ジョミー、こんな事をしてごめん…どうしても…伝えたかったんだ。起こしてごめん…もう行くから」
 シドは部屋から出て行った。

 シドは、ジョミーの部屋のドアが閉まるのを振り返り見つめた。
 なんで…ジョミー。君ばかり…。
 何故なんだ!
 シドが廊下の壁を殴った。
「…シド!?」
 手が切れて血が滲んでも殴る彼を、ソルジャーズのブルーが止めた。
 食堂へと移動したシドとソルジャーズの二人。
「操舵士が、手を傷めちゃだめでしょ?」
 と傷の手当てをするジョミー。
「何があった?」と聞いたのはブルーだった。
 シドはそれに答えなかった。
「何かしたの…かな?」とジョミーが言う。
 その探るような言い方が、クローンでない本当のジョミーとそっくりで、シドは聞かれたくない事を本人に聞かれたような気分になってしまった。
 だが、彼がジョミーのクローンなら…。
 当の本人には言えないような話をしてもいいのかもしれない。と思った。
 心配そうに見るソルジャーズのジョミーのその顔を、じっと見てから目を離しシドが質問に答えた。
「キスをしたんだ…。ジョミーに拒絶されるのはわかっていたけど、気持ちだけでも言いたいと思ってね…」
「そっか、やっぱりな」
 とブルーが言う。
「やっぱりって?」
 シドが普段言わないようなキツイ口調で応じた。
 少し目を細めたブルーがそれに答えた。
「だって、僕がスメールであんたにキスしちゃったのは、あんたがジョミーを好きだって思ってたから」
 シドはスメールでの事を思い出して気まずそうな顔になった、
「…そりゃ、ジョミーは、俺なんかを見る余裕なんて無いよな…」
 自分の事を「俺」と言う事も珍しかったが、いつも前向きな発言が多いシドが愚痴を言うのも珍しかった。
「…俺なんかって…」
 と言おうとしたジョミーをブルーが制止する。
 今は言わせてやった方がいいと目で合図をした。
「なんで余裕が無いと思うんだ?」とブルーが聞いた。
「教えて欲しい?」
「教えてくれ」
「ソルジャー・トォニィが許しても、やっぱり簡単に納得できるものじゃないよな…」
 話す事を迷うと言うより、どこから話せばいいのかと悩みながらシドが話し出した。
「君たちが僕らミュウに加わる前…あのメサイア襲撃の半年くらい前に、メサイアの空港でトォニィが結婚式をしたんだ。その時、僕がジョミーを迎えに行ったのだけど…。普段、僕達の前では彼が心を許すような…隙を見せるような状態になる事はなかった。いつも何か作っている感じがもうずっとだった…。その彼があの日は隙があって…」
「結婚式だったから?それって嬉しい事なんだろ?」ブルーが言う。
「結婚式は、良い事だよ。あの頃は僕にも結婚したいって思う人がいたな」
「過去形?どうしたの?」とジョミーが聞く。
 君に問われるのか?と言う顔を少ししてシドは答えた。
「ジョミーを好きになってしまったからね」
 と言った。
「……え?…」
「彼女にシャングリラを降りると言ったら振られた」
 …何してんだよ、とブルーがつぶやいた。
「僕はずっと前からジョミーとは仲間で一緒に育った。仲間達とずっと彼を心配して、そして、応援してきたんだ。一番の理解者とまではいかなかったけれど、それでも、そう思ってきた。でも、ナスカで仲間のほとんどが死んでしまい…。ジョミーは変わってしまった」
「……」
「死んでいった皆の分まで、僕が彼をちゃんと支えていなくちゃいけなかったのに、僕はその重さに耐えられなくて逃げた。彼と他の仲間達の間がどんどん離れていくのを、ただ黙って見過ごしたんだ。彼は強い。だから、僕らを引っ張って行くのは当然なんだと、それが義務なんだと、それがタイプブルーの使命なんだと…」
 タイプブルーと言う言葉にソルジャーズの二人が思わず身構える。
「…でも、地球に着いて、彼が本当にもう死んでしまうんじゃないかと思うような大怪我をして僕らの元に帰って来たのを見た時に…。そう思っていたのは、僕らが彼に全てを押し付けてきただけなのではないのかと、気が付いたんだ。彼は僕らの為に必死になって戦ってきた。だから、まだ彼を失えないと思った。けれど、その時にはもう遅かった。もうジョミーを理解出来る者はソルジャートォニィと…人間のキース・アニアンしか居なかったんだ…」




  続く




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