君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十二話

2014-06-18 02:05:03 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十二話

  セドルの部屋
 ニュクスへ降りる為にジョミーは研究員の服へと着替えた。
「ジョミー。お前、その髪が伸びたな…」
 と、着替えが終わったジョミーの髪に触れる。
 今のジョミーの髪は後ろを伸ばしていて、ゆるくカールした髪が襟足にかかっていた。
「俺と再会してからのばすようになったと聞いたが、のばしているのは、願掛けか?」
「古風な事を言うね」
「お前は自分を裏切ったあいつを信じようとしているのか?」
「わからない…」
「信じたいんだろ?」
「……」
「愛しているから、信じたいんだろう?」
「セドル…。そうかも…しれない。でも僕は…」
「ジョミー」
 髪に触れていたセドルの手が首の後ろに回り、グイと力まかせに引き寄せられた。セドルの唇が迫っていた。
「セドル!」
 ぎりぎりでセドルが止まる。
「…お前が悪いんだ…そんな…物欲しそうな顔をするから…」
 そう言ってセドルはジョミーを離した。
「…確かに、願掛けかもしれない」とジョミーは諦めたように小さく笑った。
「……」
 それをセドルは面白くなさげに見つめた。
「馬鹿らしい。髪が好きだとでも言われたのか?」
「誰だって。言動と行動が伴わないって時はある…それを許されない立場なのはわかっている…だけど…」
「ああ。悪かった。今のはちょっと羨ましくなっただけだ」
 セドルは負けを認めたように手を振った。
「セドル。僕は僕の全てを使っても彼を止めたい。ねぇ、さっきの信じられないと言ったのは僕の事だよね?」
「俺はこの話を聞いた時から、お前とキースの両方を見てきた。俺の記憶がどこかで書き換えられていたとしても、星を守りたいのは変わらない。だから、今はお前を信じる…」
「ありがとう。今、少しだけ、君の為に戦おうと思ったよ」
「……」
「セドル、ジョミー。艦橋へ。降下地点まで到達します」と二人は呼ばれた。
「了解」
 艦橋に戻ると目の前に緑色の星が眼下に大きく広がっていた。
「降下開始」
「ジョミー」
「大丈夫」
 ジョミーがオレンジ色に淡く光だす。
 ゆらゆらと金色の髪が浮かぶ。
「境界線。通過」
 マザーシステムからの攻撃は無かった。
「クローンの世界へようこそ」
「セドル。ここからは君の番だ。案内をして」
 そう言うと今度は青く光りだす。船が静かに消えていった。

  セイクリッド内部
「ジョミーが自分諸共存在を消した。僕達にも追えないな…」
 とニュクスのレーダーを見ていたシドはため息をついた。
「軍の動きは?」
 祈るように手を組んだソルジャーズのジョミーが聞いた。
「依然進行中」
「停船要求を出し続けて」
「このまま、軍は星の防御圏外から攻撃を仕掛ける気なんだろうな…」
「ゼウス級が三隻。それと、プロメテウス。あの船だけでも星は無事ではすまない」
「本気で燃やす気か…」
「ねぇ、シド。ジュピターを使えないの?」
「ダメだ。第一それは偽物じゃないか…」
「僕が作ったんだ。そうそうバレないと思うよ。そうすれば簡単に時間は稼げる」
「ダメ…だな。ジュピターはジョミーにとって戒めなんだ。だから使えない」
「戒め?それは枷って事?」
「そ、キースがジョミーに付けた。枷だ」
「そんな事をジョミーは言ってなかったよ」
「でもそれは、人類にとっては良い物じゃないからね…」
「それでも、僕はこれをジョミーは悪く思っていないと思うけど…」
 自分の手首の白いブレスを見つめる。
「…脅しにでも使うつもりなの?」
「うん…。そう思ったけど、止めておく」
 そう言ってまた手を組んだ。その手が微かに震えていた。
「ジョミー。君は今のこの状態をどう思っているんだい?」
「え?今の状況を?」
「この星を守る事をどう思う?」
「多分、このまま、見過ごしたら後悔をすると思う。でも…」
「でも?」
「知らないままだったら、きっと…そのまま何も感じなかったかもしれない」
「そうだよね。人類同士が殺し合おうが僕らミュウが気にする事はない。だけど…」
「うん。それでもこれは止めないといけない…ね」
 でも、どうやって…止めればいい。僕はここで時間を稼ぐだけだ。でも…いつまで?…いつまで持たせる事が出来るのだろうか…?
「大丈夫。僕達が側にいるから、怖がらないで。ジョミー」
「シド…これは戦争じゃないよね…」
「違うよ。僕たちはそれを止めに来たんだ」
「ああ、前の時みたいに、人類に答えを出させたらいいのに」
「…それは出来ない。僕らの口からは言えない事がある…」
「そう…。キースの事を公には出来ない…」
「キース・アニアンが…」
「……」
「彼が保身に走るとは思えないが…事実がこうなら…」
「シド。やはり、キース本人と話すのが一番良いね…それなら、艦隊を相手にする事もない」

  ニュクスの中心部
 大きな円柱の内部、その側面に引き抜くタイプのデータが何千、何万と刺さっている。
「これほど…とは…」
 ニュクスの中枢にはこの星の研究員なら入れる。
 見るところによると、ここのデータは種別にまとめられていた。ここの人間は自分が研究している物以外にあまり関心を示さないそういう人種のようだった。
「これだけじゃ、足らない。まだある」
「これを一つ一つ、集めていくのか?」
「ああ、一つも残さずね。もっと圧縮したデータにすれば、簡単に運べるさ」
「これほどの量をどうやって…圧縮に時間がかかり過ぎる」
「見てて…」
 オレンジ色に光りだしたジョミーが手を上げる。すると、刺さったプラグから小さな光が抜け出て集まってくる。 手の上に風船のように光が集まり浮かんでいた。
 そこでジョミーは手のひらサイズの黒い塊を出してそれに光を全部集めた。
「終わり」
「瞬間じゃないか…。ジョミー。一体、それは何なんだ?」
 セドルは黒い塊を指さした。
 興味なさげなそぶりでセドルが聞いた。
「これは『コンピューター・テラ』マザーの前身だ。今はここの情報に絶対命令を出せる唯一の物さ」
「コンピューター・テラ…」
「そう…。次へ行こう」
 そうして二人で何か所かを回り、やっとこれで星を半周した辺りでセドルが話のついでのように話しだした。
「俺、お前の本当の弱点がわかったぞ」
「…そう?」
 ジョミーが静かに笑う。
「お、信じてないな?」
「いや…。セドルなら気が付くかもしれないな。と思っただけ…」
「その口ぶりだと、間違ってないって事だな」
「答えを聞いていないよ」
「ジョミー。だったら尚更、俺でも良いだろ?キースじゃなきゃ駄目なのか?」
「それは…本気で答えた方がいい?」
「俺はここに来て、お前がこの星を助けようとする姿を見て、お前を手に入れたくなった」
「言うだけじゃ足りなくて…行動で理解をして…。信じてくれたって事だね」
「お前ほどの人間が、こんな辺境の惑星を助けて、軍とひと悶着をしようなんて、あり得ないだろうが」
「最初の一歩を止めたいだけさ…」
「お前は、プロメテウスをぶっ壊したいんだろ?」
「そうだよ。あれは人類に必要ない」
「俺がお前を手に入れたいのは、本気だぞ」
「ああ、わかったよ。セドル。だけど、今は先を急ごう…」

  セイクリッド艦橋
 警告音が鳴り響いていた。
「艦隊を捉えました」

「ジョミー」
 ソルジャーズのジョミーが呟いた。




   続く






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