君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 五話(※BLあり)

2014-02-19 02:10:27 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 五話(※BLあり)

 ジョミーは手袋を取り、指で唇に付いた血の感触を確かめた、
「…まさか…」
 自分の身体の中に残るあの薬…。瞬時に頭が分析を始める。
 シドはあれを飲まされているのか…?。
「シド。教えて。お前はセドルの所で何か飲んだか?」
「何を…ノアの衛星で…部下みたいなのから…」
「(…僕と同じだ)」
 あの屋敷で皆と飲んだお茶に、僕のだけ薬が入っていた。
 僕が飲まされたのは覚せい剤。
 だけど、一日以上して効果が出るなんて…。 
 セドルに謀られた。シドに単独で会わせた事に深い意味は無かった。
 僕以外のミュウにどんな反応をするのかを見たかっただけだろう。だが、僕がペセトラに行っていないと知って、それを逆手に取られた訳だ。シドの向かう先に僕が居ると予想しての行動だ。
 どうしても真っ向勝負に出てしまう僕と、謀略を得意とするセドル。二人は相容れない。
 分かってたはずだ。あいつは僕の思惑の上をいくと…。
 僕の真意を計っているのか?
 一つ間違えば大惨事になってしまう。だから、わざと通信をしてきたのか?
 この脅迫に近い行為の真意は僕がセドルを裏切らないかどうか…か…。そんな事の為に、シドとスメールの人の命を危険にさらしたのか…。
 あいつにとって、僕がミュウである事や、キースに次ぐ地位である事は、本当にただの「利用する為の価値」しかないようだ。 
 僕を軽く見たな…。
 だが、今ここでどんなにセドルに怒りを感じても事態は好転しない。
 今は問題なのはシドだった。
「痛っ!」
 乱暴にシドが僕の火傷をした手首を掴んだ。手袋を外したので見つかっててしまったようだ。
「治さないのですか?」
「大した事ない…」
「どうして、こんな怪我なんかしているんです。さっさと力を使えば良かったんじゃないですか?」
「こんなの平気だ。こんな怪我より君の方が問題だ。シド。君の中の薬を僕が中和をするか…」
 腕を掴かんだまま、シドがゆっくりと僕を抱きしめた。言葉を遮られた僕はシドの腕の中でもがいた。
「シド。聞いて」
「ジョミー…」
「僕が君に潜って薬を中和させるから、僕に同調して」
 身体をひねりシドの目を見ようと顔を上げる。だが、シドは僕を見ずに抱きかかえたまま、僕を押し倒した。僕らは床に転がった。
「シド!僕は君を助けたい」
「…抵抗をしないで下さい」
 僕を床に羽交い絞めにしたままシドが言った。
「正気に戻れ。シド」
「あれ?思いのままに操れるって言ったのに」
「それって…シド?薬を持ってるのか?」
「ポケットに…」
 自分の下から逃れようとするジョミーを抑え込みながら、目でポケット示すシド。僕は手を伸ばし小さなカプセルを取り出した。
「……」
 ジョミーはカプセルの中を確認しようとするが、シドが顎を掴んで上を向かせた。。
「だから、抵抗しないで…」
 抑え込む手に力を入れなおすシド。カプセルが指から離れて落ちる。
「…やめっ…」
 軽くキスをするとそのまま唇が耳元へと移動して囁いた。
「何も心配しなくていい…」
「シド。いいか。ちゃんと聞いて。僕は薬を飲んでいない。だから、しっかりしろ。シド」
「…飲んでない?」
 ジョミーが薬を飲んでいないのに何故こんなに変なんだ?シドは考える。だが、答えが出ない。意識が思考がめちゃくちゃだった。
 ただ、自分が今、組み敷いている対象が無性に愛おしくて、守りたくて、そしてとても自分の物にしたかった。
「違う。それは、ジョミーが飲んだの知らないだけ…」
「シド!」
「無味無臭で気付かない…」
「セドルに飲まされたのは、きみだ」
「…?」
「聞いて。セドルは僕を利用しようとしている。僕はそれを知っている。僕も同じだ。だからきっと、こうなってしまったのは僕の所為だ。僕は彼とはある取引をした。その全てを君に話す。君には僕を助けて欲しい。だから、しっかりしろ」
「助ける…?」
 シドはまだ僕を羽交い絞めにしたまま、その力を緩めようとはしなかった。
 このままでは…薬に浸食されてしまう…。
「シド。聞こえるか?」
「……」
「僕はさっき感じたんだ。君は薬に呑まれてしまった意思と、流されまいとする意思の二つが混在している。あのカプセルは僕に飲ませるようにセドルに言われたんだろう。だが、君は僕に飲ませなかった」
「ジョミー…」
「僕は本当の君を信じている。僕が君の中に行く。薬に抵抗をしている君の強い意思を見つける」
 シドはセドルに渡された薬を僕に使おうとしなかった。さっきも感情で僕を傷付けようとするのを止める意思があった。
 シドの中にはまだ理性が残されている。だから、僕は…。
 補助の居ない単独での潜航は危険だが、迷っている時間は無い。
 だが、今のこの状況にも不安はある。今のシドは力ずくで僕を抱こうとしている。
 このまま僕が心をシドの中に飛ばしたら…、肉体が無抵抗になってしまう。僕らがこのまま先に進んでしまったら、彼はきっと後悔をする。全てを薬の所為だったなんて逃げはしない。
 傷つき悩み、僕の前からいなくなってしまうかもしれない…。そんな事は嫌だ…。
 僕はシドの誇りを守りたい。僕はシドを失いたくない。
 方法はただ一つ。身体に意思を残したまま潜り、薬の中和をする事、それは容易な事ではなかった。
 シドの中の薬を一旦自分に取り込み、僕の中で中和させる。
 僕が薬に流される危険性もあるが、これが一番早い。
「シド。僕を見て」
「ジョミー」
 シドはまだ僕を組み敷いたままだったが、僕はただシドを見つめた。
 しばらくしてから僕は優しい口調で言った。
「僕は今から君の中に潜り君を探す。…身体には意識を残してゆく。それで内と外の両方向から君の体の薬を中和する」
「……」
「いいね。僕は君が好きだ。君を裏切ってばかりいるこんな僕だけど、僕は君を失いたくない。だから、心を開いて…」
 淡く青い色を放つジョミーの思念体がゆっくりとシドに近づく。
「…ソルジャー…シン…」
 ぼうっとする頭のまま、それでも思いがけない言葉に戸惑っているシドだった。
 何かが起きているのはわかる。耳に届いている言葉が上手く頭に伝わってこない感じだった。
 何処かが悲しくて苦しくて、ただ全てを吐き出したかった。
 静かに流れるようにジョミーの声がシドの中に響いていく。
「僕には君が必要なんだ。この先、とても困難な事が起きる。今ここで、こんな事で君を失えない。絶対に取り戻す」
 青い揺らぎが消えそれがオレンジに変わる。それが合図だったかのように静かにジョミーから思念体が抜けシドの中に潜っていった。
「お願いだ…僕を受け入れて…」
 優しい声がした。
「…ジョミー…」





     続く




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