君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 七話「追憶の破片」

2012-02-17 00:38:46 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 七話「追憶の破片」

  現在・Sumeru
「ブルー…さっき僕は君を力で誘導した。だけど、誘導しなくても、そこにいる人間たちが本当にジョミーを捕らえていたら、君はたとえ子供でも撃っていたよね?」
「…僕達は物みたいに扱われていたんだ。人を恨んでどうして…いけない!」
 誘導していないと言うジョミー。確かに今は力は感じない。
 けれど…。ジョミーの質問にブルーは答えをごまかさなかった。
「…君たちの生まれを思うと、人間を恨んで当然だ。けれど、君はもうミュウなんだ。僕らの仲間なんだ」
「仲間だって僕たちを怖がっているじゃないか。それに、お前たちに僕達の何がわかると言うんだ。こんな力。ミュウにだってなりたかった訳じゃない!お前は、ジョミーは僕達と違うんだ。何がわかる。それに、自分だってその銃で人を殺しているなら、同じじゃないか…どうして…僕だけが殺しちゃいけないなんて、そんな事を…言われなきゃいけない」
 そう言ってブルーは顔を上げてジョミーの方を向いた。
 まっすぐ自分に向けられた銃口の先にジョミーの顔があった。
 その目が悲しみに沈んだままブルーを見ていた。
「………」
 立ち入ってはいけない何かを…感じるブルーだった。
「………」
 ジョミーは彼を見たまま、一度瞬きをした。
「そうだね。そんな僕が、君に言える事は一つも無いのかもしれない…それでも、僕は君に教えなくてはならない。そして君は…それを知らなくてはいけないんだ…」
「…何を…。カナリアに酷い事をした責任?人を憎むなって事?」
「それよりも、もっと君には重要な事だ。手を前に出して」
 言葉に従いブルーが出した左手にジョミーは銃口を返し乗せた。
「銃をどう思う?どう感じる?」
 とジョミーは聞いた。
「銃は重くて…」
「他には?」
「怖い」
「そう。重くて、怖い」
「じゃあ、これは?」
 今度はブルーの右手に自分の左手をのせて力を加える。
 微かな青い光が現れて消える。
「重くも怖くも無い」
「うん。これは自分を守る力…重くも怖くもない。だけど、この二つは同じ重さだよ」
「……」
「銃は人が自分を守る為に作った武器だ。力と同じ。ならどうして怖い?」
「わからない」
「僕も銃の練習を始めた時はとても怖かった。これは武器だから…とても簡単に人が殺せてしまえると思った」
 ジョミーはブルーの手の銃を取りベンチに置いた。
「銃の重さはね。命の重さなんだ。さっき、君は銃では殺せない。と言ったね。なら、力では殺せると言う事になるよね?」
 ジョミーは左手で銃の形を作り、さっきと同じようにブルー向けた。
「僕達の能力は攻撃戦闘特化だから、瞬時に発動するようにあまりガードが付いていない。他のミュウ達は発動させるのにある程度念じなければならない。それでも、みんな同じ。銃と力が同じ重さだと言ったのは、力は銃と同じであまりにも簡単に、僕たちは人が殺せてしまうと言う事なんだ」
「…でも、僕はミュウだから…」
「ミュウだから?…能力で人を殺してもいいと言うんだね…」
「いいと思う」
「攻撃能力の低い者たちはミュウの武器を持って戦っているけど、彼らは最初は能力が上がったと喜ぶ。だけど、実際の戦闘で最初は怖くて戦えなくなる者が多い。銃は人を殺す武器そのものだからね。怖いんだ。でも、力は形がないから…」
 そう言ってジョミーはブルーに向けていた手に青く光る剣を作りだした。
 細くて長い青く刀身が光る剣。それは最初に戦った時に見たあの剣だった。
「こうなると、怖いでしょ?」
 ジョミーは剣を小さく振りブルーの首筋に当てて止めた。
「……」
 自分の顔のすぐ下、首許で青く光る剣。
 さすがにそれは怖いと思うブルーだった。
「銃もコレも同じとわかって欲しい…。僕達には安易に使えてしまうこの力。僕は君に力を揮う事の責任を負って欲しい。力で奪う命の重さを知って欲しいんだ。たとえ正義を振りかざしても力で押さえつけるなら、それは暴力なんだ。君が銃であの子を殺せないなら、力でも殺さないで欲しい。君たちの力は罪の無い命を守るのに使って欲しい。それを君たちが生まれた意味にしていって欲しい」
「でも、何故…それを僕だけに言う?」
「…ジョミーはね。わかっていると思うけど、違うよね?ヒーラーになろうとしている。命の重さは徐々にわかっていくだろう。あの子は人として僕が成れなかった事をしようと努力している」
「…僕は…攻撃的だと?」
「ううん。違う。君は優しいから…僕の出来なかった事をしようとしている。今日は、力の事だけじゃなくて他に君に話しておきたい事があったんだ…」
 ジョミーの青い剣が不安定にゆらぎ…消える。
「ジョミー?」
「聞いて…ブルー。銃は確かに武器で…戦争中でもないのに…人を殺している。銃が勝手に動いて人を殺す訳じゃない。それは銃を持つ人間次第だから…君が人をただ憎いだけなら…銃と同じになってしまう。ただの武器になってしまう。だけど、命の重さは教えられてわかるものじゃない。自分で理解してゆくしかない…。僕が人を裁く時に銃を使うのは、その事を忘れない為…君には足りないものがある。力を使うには、心を成長させないとね」
 と言ってジョミーはまたベンチに座った。
 その隣にブルーも座ろうとするが、ジョミーの銃があった。
「君が持ってて、僕はもう使わない」
 ジョミーが言う。
「……」
 自分も銃はいらないと思うブルーだったが、銃を手に取り服のポケットにしまい、隣に座った。
「僕はね。弱いんだ…」
 ジョミーがぼそりと言った。
 弱い?弱いはずがない。と思うブルー。
「僕は…君たちの生まれに関与している」
「え…」
「僕は、大戦後のメギドが盗まれた頃、人間の科学者達が人間にミュウ因子を植え付ける実験をしていて、その後、クローンのミュウを作ろうとしている事を知っていた。人類軍はその資金源を探る為に見逃すよう指示を出したんだ。僕はそれに従った。ミュウの長としては見逃していい事ではなかった…」
「…知っていて見逃した…」
「そう。知っていた…彼らの研究所が移動をするので見つけられなかったのは嘘だ。特定は出来なかったが、大体の場所は掴めていたんだ。僕なら力で探し出し乗り込み壊す事は不可能ではなかったが、僕はそれをしなかった」
「…でも、それはメギドを見つける為に…」
「本当に…それだけだと思う?」
「それは…」どういう意味?とブルーは思った。
「疑問だったけど、メサイアで君達はわざと負けたんじゃないのか?」
「僕たちはわざと負ける余裕は無かったけど…あそこから逃げたかったんだ。だから、ミュウの方に行こうと思ったんだ」
「君たちが素直に来てくれて嬉しかったよ。僕は…二年間…君に逢えるのを待っていた」
「二年。カナリア事件から?」
「君は統合で僕の弱点を探った。僕の中には君の本体、ソルジャー・ブルーがいるはずだ。そして、君の声を聞いた僕の心が喜んでいるのを知ったはず、僕の弱点は、君(ブルー)だったろう?僕は…それを…知られたくなくて、心を折った。君から逃れる術がわからなくて…怖くて…。そして、君が僕の前に再び現れるのを待った。君達を探し出す事も可能だったはずなのに…それをしないで君たちを待った。再び会う事に恐怖を感じながらね…」
「…二年前に、もし、ジョミーが僕達の前に現れてたら、僕たちはジョミーに付いていく事はしなかったと思う。あの頃は力に振り回されていて…ただ遊んでいただけだったから…戦って殺されてたかも…」
「僕は待って正解だったのか…」
 そう言ってジョミーは小さく笑った。
 ブルーたちが自分達が生き残る為、僕について来る事を選んだ。
 そこに計算や打算がある事に何の罪もない。
 彼らに罪があるなら、僕が生きている事の方が罪なのだ。
「ブルー。僕が生きるのは貴方の為だった…」
「ジョミー?」
「僕は、彼に成りたくて彼を追い続けてた。彼の夢を叶える為にだけ生きてきた」
「……」
 クローンのブルーにはジョミーが言う事がわからなかったが、ジョミーの切なさが伝わっていた。
「出会ってすぐ…落ちてゆく貴方を見て僕は「生きて」と願った。その言葉を受けて生きたと、貴方は言った。最後の時に貴方は僕に「生きて」と言った。それだけで僕は生きた…貴方を失っても生きてきた」
 ブルーは隣にいるジョミーが泣いているのではないかと思い、見る事が出来なかった。けれどジョミーは泣いていなかった。
「もう…言ってもいいのかな?」
「…ジョミー」
「ソルジャーズのブルー。君を彼の代わりだと思っていないけど…でも、今だけはそう思っていいよね?」
「…いいよ」
 その答えはブルーらしいのか、らしくないのか、わからずにジョミーは少し笑った。
「僕は貴方が好きでした」
「……」
「やっと言えた…貴方を失ってから、口に出して言う事が出来なかった。月で叫びだしそうだったけど…どうしてもそれが出来なくて…」
 すっきりした。と言いながらジョミーはブルーの肩にそっと額を乗せて「ありがとう」と言った。

 子供たちの歓声が聞こえる午後の公園に優しい風が通り過ぎた。



   続く








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