君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 五章「星の在り処」 十八話「銀の祈り 金の願い」

2012-04-14 14:27:17 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十八話「銀の祈り 金の願い」

「僕はもう二度と…貴方の手を離さない…もう見送ったりしない」
「ジョミー…」
 あの優しい声が消えてゆく、
 お願いです。ブルー。僕の思いのままに…抗わないで…。
 僕を信じて…。
 …その淡い光りは僕の中に溶け込んでゆく。
 優しい微笑みを浮かべたままブルーは消えていった。
「…ごめんなさい…また心配させてしまいましたね…」
 こうしないと貴方は完全に消えてしまう。
 心を体に戻さないと貴方の輪廻は適わない。
 ブルーが持っていた僕の最後のカードが風に舞い上がり僕の手に落ちる。
 これを貴方は僕に求め続け、僕はこれを受け取ろうとしなかった。
 ジョミーは、最後のカードをかえした。
「生きたいと願っていいですか?」
 その瞬間、ガラスのドームは粉々に砕け飛んだ。

 青い地球
 白い月

「月」へ向かって僕は飛んだ。
 ブルーの記憶の中にあった。
 あの古い施設、そこにグランド・マザーがいた。
「ジョミー・マーキス・シン」
「私をどうするつもりです」
 マザーはマザーイライザのようなフィシスのような女性の形をしていた。
「最後を看取りに…」
「そうですか」
「マザー、貴方の計画は遂行されました。ミュウになったブルーは僕を見つけ、僕は力を得てSD体制を壊し、人類は未来に向かって歩き出した。そして、僕は、貴女に殺された。僕は死に地球は青い星に戻りました。やがて、人類も戻ってくるでしょう…」
「なら、私はもう必要ありませんね」
「そうですね」
「さぁ、殺しなさい」
「…壊すの間違いでしょう?」
「どちらでも同じです」
「ですね。マザー。最後に教えていただけますか?僕はミュウのDNAだけで守られたとは思えないのです。貴女も僕を繋ぐようにしていましたね。それは何故なんです?」
「その答えは私にはわかりません」
「そうですか…。この答えは僕がそう思っていればいいくらいのものですね」
「そう、それでいいのです」
「貴女は何故フィシスの遺伝子を使ってキースを作ったのですか?」
「それも私にはわかりません」
「貴女も本当は賭けていたのかもしれないですね…。本当に人類はどうしようもなく愚かな事をしたけれど、それを変えてゆけるかもしれないと願っていた」
「そうかもしれません」
「人類に望みも希望も未来もあると思わないと、滅びを与えたくなってしまいますからね」
「ジョミー。希望はありますか?」
「それを貴女が?貴女が僕に聞くのですか?」
 ジョミーは少し笑ってしまった。
「ええ」
「そうですねぇ…」
「未来はありますか?」
「ありますよ」
「そうですか…」
 マザーは微笑んだ。
「この後はそうなってからでないと、僕もわからないですけどね」
 ジョミーも笑った。
「では、マザー僕はそろそろゆきます」
「どこへですか?」
「僕は、地球のあの山の頂きにブルーを連れて行かないと…。そうしないと、彼はオリジンのままだ。「ブルー」になれない。そして、僕らは貴女を壊して人類が目覚めの道に進む為の道標になれない」
「わかりました」
 僕は月基地の上空に飛んで、光りを集め、それをぶつけた。
 基地は消滅した。
 大きなクレーターだけが残った。
 僕の手の中の黒い塊が静かに消えていった。
 時間を遡るその前に、僕は「黄昏の海」へ向かった。
 ブルーが眠る青い氷
 その向こうに青い地球

「見えますか?青い地球ですよ」

「ブルー。貴方と会うのはもう少し先になりそうです。僕は、まだ生きようと思います。どこまで生きていられるかはわかりません。ですが、貴方が願ったように、それまではしっかりと強く生きて行こうと思います。この先、僕に何が出来るのか。何がしたいのかはまだわからないけれど…。今は、生き続けたいと思います。長かった僕たちの輪廻はこれで終わりです。今、貴方の心を身体に戻しますね」
 七十八枚のタロットカードが氷を囲む その端から順に青く燃えて消えてゆく。
 僕というモノを「生かし」「殺した」二つの命を僕は見送った。
 僕を縛り続けていた沢山の鎖を僕の意思に関わらず断ち切ったのがマザー。
 そうなる事でしか僕は生きたいと願えなかった。
 そう願う事すら罪だと思ってしまっていたから…。
 願いたくても願えなかった。
 それを知っていたブルーは僕の死の瞬間に罠を仕掛けた。
 自分を見て発動するように、命の本能に従うようにと…。
 諦めずに、生きあがけと。
 たとえ、辛くても生きろと生き続けろと。

 彼の言う「生きて」は「生きたいと願って」だった。
 そう祈り続けてくれたんだ。
 地球で会った僕を探し続け求め続け、皆を守って死んだ後も僕を守り続けて、その身体も心も記憶すらも塵と消える事をいとわなかったブルー。
 だけど、あの時彼が托した絆を、ただ一つ残った鎖を、僕は心の中で切ろうとしたんだ。
 それを切らせないように現れた。

「生きたいと願っていいですか?」
 最後に残った僕のカード。
 あれは、ブルーがずっと離さずに持っていてくれたものだ。
 僕は心の世界ですら何も知ろうとしなかった。
 カードという形で僕はみせつけられ、ずっと奥底に閉じ込めていたカードをやっと出す事が出来た。
 あんなに脆いくせに、どこまで頑な…なんだろうな僕は…。
 僕は本当は生きていたいと願っていた。
 貴方はそれを知っていた。
 最後の時にそう願うようにと祈っていた。
 僕は貴方に誓った。
 僕は、あの絆は絶対に離さない。
 そう、もう二度と離さない。

 ブルー。
 貴方にこの世界にある全ての感謝を、そして、永遠の安らぎを。
「これで、本当にさよならです。ブルー」
 ジョミーは微笑むと静かに目を閉じた。
 カードの最後の1枚が青く燃えて消えていった。

 僕は時空を飛んだ。
 一万年の旅は一瞬だった。
 過去のオリジンに地球を視せて、僕は現在に戻ってきた。
 僕が戻るには月で消えた僕の身体を再生しないといけなかった。
 思念体のままでは戻れない。
 時空を戻ってくるのに力を使い過ぎて、完全に再生は出来なかった。
 それでも、僕は戻りたかった。
 僕は鎖を手繰り寄せる。
「皆のもとへ戻るんだ。僕はそう願う」



  終 章 へ





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