小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

151 草薙の剣とアヂスキタカヒコネ

2013年06月22日 01時35分18秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生151 ―草薙の剣とアヂスキタカヒコネ―


 草薙の剣は、スサノオがヤマタノオロチを斬った時に、その尾の中
から出てきたと『古事記』に記されています。
 この草薙の剣はヤマトタケルから尾張氏の女性ミヤズヒメに預けら
れ、その後に熱田神宮に納められることになるのですが、一度この剣
が熱田神宮より盗み出されたことがあるのです。
 『日本書紀』の天智七年の記事にそのことが記されています。
 すなわち、新羅の僧であった道行が草薙の剣を盗み出し、新羅へ逃
げ帰ろうとしたものの、途中暴風に遭って失敗に終わった、とあるも
のです。

 大阪市にあります阿遅速雄神社(あちはやお神社)には、この事件
に関連した伝承が残されています。
 新羅に逃げ帰る途中で嵐に遭った道行は、これを草薙の剣の祟りだ
と考えて、剣を投げ捨ててしまいます。
 しかし剣は里人に拾われて、この阿遅速雄神社に納められた、とい
うのです。

 この阿遅速雄神社の祭神は、大国主の御子神とされるアヂスキタカ
ヒコネなのですが、このアヂスキタカヒコネが出雲と尾張を結ぶ役目
を担っていると言ってもいいのです、
 そもそもこの神は大和の高鴨神社の祭神ですが、『出雲国風土記』
にも登場しています。
 仁多郡の項に、この神が大人になっても泣いてばかりいて言葉を発
することがなかった、とありますが、神門臣フルネの本拠地である神
門郡の項にも、高岸の郷の神話として、やはりアヂスキタカヒコネが
泣いてばかりいた、と記されています。
同じく神門郡の塩冶の郷の記事には、アジスキタカヒコの子塩冶毗古
能命(ヤムヤヒコノミコト)がこの地に坐すのが塩冶の地名の由来と
あります。
塩治の古称は止屋で、出雲フルネがイイイリネを殺害した止屋の淵が
あったところなのです。

 それと、アヂスキタカヒコネの妻であるアメノミカツヒメを祀る神
社が尾張にあるのです。それが、愛知県一宮市に鎮座する阿豆良神社
(あづら神社))です。

 「尾張国風土記逸文」にも阿麻乃弥加都比女(アマノミカツヒメ)
が登場し、垂仁天皇の皇子ホムツワケが7歳になっても言葉を発する
ことがなかったが、この女神が皇后の夢に現れ、
 「吾の祭祀をおこなえば、皇子は話せるようになる」
と、言った、とあります。

 この説話は、『古事記』ではアメノミカツヒメではなく出雲大神と
なっていて、ホムチワケ(ホムツワケ)が出雲を訪問することで話せ
るようになる、という内容になっています。

 アメノミカツヒメは『出雲国風土記』にも登場し、楯縫郡の項では、
アヂスキタカヒコネの妻であると書かれているのですが、秋鹿郡の項
では赤衾伊農意保須美比古佐和気能命(アカフスマイヌオホスミヒコ
サワケノミコト)の妻と記されています。

 この秋鹿郡の記事とは、伊農郷の地名の由来譚で、

 伊農の郷に坐すアカフスマイヌオホスミヒコサワケノミコト(赤衾
伊農意保須美比古佐和気能命)の后アメノミカツヒメ(天ミカ津日女
命)が国めぐりをされてこの地にやって来られた時、「伊農の神よ」
と、おっしゃられたので伊努の名がついた。

と、記されています。記事にある伊努は伊農の古称なのですが、この記
事から推測すると、アカフスマイヌオホスミヒコサワケノミコトという
名は、イヌ意保須美比古佐和気能命という名に赤衾という冠名が付いた
ものになりますが、『古事記』には、大年神の妻に伊怒比売(イノヒメ)
の名が見えます。
 古代において、イノとイヌは非常に混同しやすい音です。
 アカフスマイヌオホスミヒコサワケとイヌヒメが関係するのかどうか
はわかりませんが、イノヒメを祀る神社も尾張に存在することには注意
が必要です。名古屋市西区稲生町に鎮座する伊努神社です。

 『古事記』は大年神とイノヒメの御子神として白日神の名を記してい
ますが、京都府向日市の向日神社の祭神向日神は、この白日神だと言わ
れています。
 問題は、向日神社の祭祀氏族が六人部氏(むとべ氏)で、六人部氏は
ホアカリを祖としますから尾張氏とは同族になります。


 さて、話が膨らんでしまったので阿遅速雄神社の話を戻します。
 回収された草薙の剣を預かったという伝承を持つこの神社は、実際にも
熱田神宮と深い関係にあります。
 現在でも、阿遅速雄神社の祭礼日(10月22日)には熱田神宮の宮司
あるいは神職の参例あり、熱田神宮の大祭(6月5日)には、阿遅速雄神
社の宮司、氏子総代らが参列するのです。
 熱田神宮の大祭の熱田祭は「菖蒲祭」とも呼ばれ、かつては陰暦の5月
5日に行われていましたが、阿遅速雄神社には神池として菖蒲池があり、
5月5日には菖蒲刈神事が行われているのです。

 ところが、最後の段になって今更なのですが、草薙の剣が天孫を経由し
た神宝であることには疑問符が付くのです。



・・・つづく

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