そよかぜから-映画

見てきた映画の記録です
ネタばれあるかも、気をつけて

男はつらいよ27 浪速の恋の寅次郎

2006年08月20日 | コメディ

1981年 日本 104分
■2006.8.20 BS2
■監督 山田洋次
■出演 渥美清(車寅次郎)  倍賞千恵子(さくら)  松坂慶子(大坂の芸者、ふみ)  下絛正巳(おいちゃん)  三崎千恵子(おばちゃん) 吉岡秀隆(満男)

《story》 
印刷工場の経営が苦しいたこ社長を、帰ってきた寅さんがからかった。夜になっても帰ってこないたこ社長を心配した寅さんは、金策がうまくいって一杯やっていたたこ社長とまたもめる。そして、寅さんは旅に出る。
瀬戸内海の島で、墓参りをする女性おふみさんと出会う。身寄りのないおふみさんを励まし、フェリーで送る。
大阪で商売をしているところにおふみさんと出会う。おふみさんは芸者だと知り、飲み歩く。身寄りのないおふみさんだと聞いていたのに、あるとき小さいときに生き別れになった弟のことを聞く。すぐに二人で勤め先を訪ねるのだが、すでに亡くなっていた。意気消沈したおふみさんは、その晩、酔いつぶれて寅さんの部屋に泊まる。寅さんは、おふみさんが眠った後、部屋を出て、別の部屋で眠る。朝、部屋に戻ると「どう生きていくか考えます」という書き置きがあった。寅さんは部屋を引き払い、柴又に帰った。
しばらくして、おふみさんがとら屋を訪ねてくる。結婚を知らせにきたのだった。寅さんは、なぜわざわざ知らせに来たのかとつらい気持ちを抑えながらも、おふみさんを祝福するのだった。

◎だれとでもすぐに仲良くなれるところが寅さんのいいところだと思う。特に女性だけど、親しくなって相手を大事にしすぎるんだと思う。それが恋に変わって危険信号。相手の気持ちがよくても悪くても、もう寅さんは一緒にいられない。相手の気持ちが良くてもだめなんだから、恋が実るわけがない。でも、まただれかとすぐに仲良くなる。失恋や別れることはつらいけど、気軽に声をかけ、普通は言えないことも話ができる寅さんは素晴らしいと思う。寅さんと出会う人はみんなこうして幸せになっていくんだから。寅さんはつらいと思う。でも、月日がたって、再び「元気か」って会えるところがもっと素晴らしいと思う。
今回から、満男の役が吉岡秀隆に変わった。やっぱりちがう、あまり台詞はないけど、存在感がある。これからが楽しみだ。

キネマの天地

2006年08月19日 | 人間/社会派ドラマ

1986年 日本 135分
■2006.8.19 BS2
■監督 山田洋次
■出演 渥美清(喜八) 中井貴一(島田健二郎) 有森也実(田中小春) 倍賞千恵子(ゆき) 前田吟(弘吉) 下絛正巳(島田庄吉) 三崎千恵子(貞子) 吉岡秀隆(満男) 笹野高史(屑屋) 松本幸四郎(城田所長) 松坂慶子 マツザカケイコ (川島澄江) すまけい(小倉監督) 岸部一徳(緒方監督) なべおさみ(小笠原監督) 大和田伸也(岡村監督) 柄本明(佐伯監督) 山本晋也(内藤監督) 美保純(園田八重子) 石井均(床山茂吉) レオナルド熊(磯野良平) 津嘉山正種(川島の恋人) 坂元貞美(古賀英二) 広岡瞬(小山田淳) 田中健(井川時彦) 油井昌由樹(長野キャメラマン) 冷泉公裕(猪股助監督) じん弘(照明班長) 山田隆夫(正兄) アパッチけん(生田キャメラマン) 光石研(生田キャメラマン助手) 桜井センリ(守衛) 笠智衆(トモさん) 平田満(小田切) ハナ肇(安五郎) 佐藤蛾次郎(留吉) 石倉三郎(看守) 粟津號(馬道刑事) 財津一郎(大飼刑事) 桃井かおり(彰子妃殿下) 山城新伍(戸田礼吉) 木の実ナナ(華やかな女性歌手) 松田春翠(帝国館弁士) 人見明(帝国館支配人) 田谷知子(若い売り子) 関敬六(呼び込みの男) 若尾哲平(脚本部・北原) 巻島康一(脚本部・池島) マキノ佐代子(女事務員) 加島潤(医師役) 星野浩之(泥棒役) 藤山寛美(浅草の客)

《story》

「愛と感動を力強くうたいあげる 映画を愛するすべての人に」

昭和の初期、浅草の活動小屋で売り子をしていた田中小春に、蒲田撮影所の小倉監督が声をかけた。小春は幼い頃に母を失い、病弱の父と二人暮らしだった。撮影所での仕事は新鮮で、小春の夢をかりたてた。はじめは台詞なしでほんの少しのシーンだったけど、その演じることの難しさに涙することもあった。そんな小春をなぐさめたのが助監督の島田健二郎だった。
健二郎は、小春との仲がしっくりいかなかったり、自分の脚本が採用されなかったりしたため、映画作りへの意欲をなくしかけていた。あるとき、労働運動で警察から追いかけられていた先輩をかくまったことから、健二郎も逮捕される。留置場にいた人々から、健二郎は再び映画作りへの情熱をもらうのだった。
大作「浮雲」の撮影がスタートしようとしていた中、主演の女優が失踪してしまう。そこで、抜擢されたのが小春だった。最後のクライマックスのシーンでは、1日かけてもOKのサインが出ず、女優をやめようとさえ言い始めた小春をなぐさめたのが父だった。しかし、うっかり自分の子ではないことを言ってしまう。翌日小春は見事に難しいシーンを演じきる。封切り当日、父は映画館に足を運ぶ。そして、映画の終わりと同時に息を引き取るのだった。

◎たくさんの俳優が出演していた。映画が好きだという表れだと思った。今年は日本映画をよく見る。以前は日本映画をバカにしていた。洋画の方が素晴らしいんだと思いこんでいた。でも、今年は邦画の方をたくさん見ている。それは、まずは字幕がしんどくいなったせいかもしれない。吹き替えがあればそちらの方をつい見てしまう。次に、微妙な心の動きや表情は邦画の方がよく伝わってくる。韓国映画も、人種が近いだけに入りやすい。さらに、はでなアクションよりも、心を揺さぶる感動を求めるようになったこと。

小春が映画の主役に抜擢され、順調に撮影が進んでいたが、クライマックスの場面でなかなかOKが出ない。確かにOKの出ないカットは無味乾燥的だ。でも、OKのシーンは監督が言っていた気持ちがグーンと伝わってくる。演技の深さがよくわかった。特に小春だから、今までの経緯を知っているだけに、見ている方は感じやすい。

育ての親の父が、劇場で死んでいく場面は、少し空々しい。わざとそうしているのかもしれない。渥美清というキャラだったらこだろうな、という意図があるのかもしれない。やっぱり渥美清は「寅さん」というイメージだ。本人はそれを越えたかったらしい。山田洋次は「寅さん」のキャラ以外それほど真剣に考えてないから、こうしたのかもしれない。

この後、あの二人はどうなったのだろう。波瀾万丈、まだまだ多くの出来事が待ちかまえているだろうな。

遥かなる山の呼び声

2006年08月19日 | 人間/社会派ドラマ


1980年 日本 124分
■2006.8.18 BS2
■監督 山田洋次
■出演 高倉健(田島耕作) 賠償千恵子(風見民子) ハナ肇(虻田太郎) 渥美清(人口受精士-近藤) 武田鉄也(弟-勝男) 畑正憲(獣医) 吉岡秀隆(風見武志) 木ノ葉のこ(弟嫁-佳代子)

《story》

「美しくも短い北国の夏・・・
     その出会いと別れ・・・」

北海道東部、釧路にある酪農の町、中標津。風見民子は、夫に先立たれ、子どもと二人で何とか牧場を守っていた。激しく雨が降る夜、一人の男が、道に迷って納屋にでも泊めてもらえないかと訪ねてきた。その男の名は田島耕作といい、次の日、食べられるだけでいいから、この牧場で働きたいと言うのだった。牧場での経験があり、できぱき働く耕作を民子は不安ながら雇うことにした。一人息子の武志は、馬の乗り方を教えてもらうなど、耕作にすぐになついた。耕作は、警察に負われている過去があった。2年前に借金を苦に自殺した妻の通夜の席で、金貸しの男が「自殺じゃなく事故死だったら保険がおりるのに」と暴言をはいた。カッとなった耕作は、その男を殴り殺してしまう。警察から追われ、この地へたどりついたのだった。2ヶ月たち、耕作と民子、武志はまるで家族のよぅに親しくなっていった。しかし、祭りの夜、警察は耕作を発見する。そして、パトカーで牧場にやってくるのだった。

◎いつもの「男はつらいよ」のメンバーがいっぱい出てくるけど、山田洋次の映画は安心して見ることできる。パターンも見え見えだけど、わかっていても、見てしまい、感動がある。
耕作はみたいにまじめに一生懸命働く人が、たとえ殺人を犯したとしても、きっと逃げ回ることはないだろう。つかまりたくない、という理由が見あたらない。そうならなければこの物語は始まらないのだけど、きっと暴言を吐いたこんな最低の男のために、妻も自分も壊されていくことががまんならなかったのではないだろうか。

吉岡秀隆も大好きな俳優の一人だ。「北の国から」は全部見たし、最近では「四日間の奇蹟」「AIWAYS 三丁目の夕日」など、頼りない演技が好きだ。いつも困っていて、何かを抱えていることが身体全体ににじみ出ている。それでいて、優しい笑顔で人に接する。目の前の困っている人を無視できない。そんなイメージ。
「男はつらいよ」では、最初の満男役の子は、いつも知らんぷりでただいるだけだけど、彼の満男は周りの人の会話にきちんと反応している。笑ったり、不思議そうな顔をしたり、目が動いている。

ラストの列車の中の場面、民子と太郎が乗り込んできて、「待ってる」と二人の会話で告げるところ、そしてそれを聞いて思わず目頭を押さえる耕作。心に残る場面だ。

「幸福の黄色いハンカチ」を思わせるような場面がいくらかあった。武田鉄也が、この牧場までやってきた道筋など。刑務所に入る高倉健、それを待つ賠償千恵子、この映画のあと「幸福の黄色いハンカチ」に続くのかなとつい考えてしまった。


幸福の黄色いハンカチ

2006年08月17日 | 人間/社会派ドラマ

1977年 日本 108分
■2006.8.17 BS2
■監督 山田洋次
■出演 高倉健(島勇作)  倍賞千恵子 (島光枝)  武田鉄矢 (花田欽也)  桃井かおり (小川朱実)  たこ八郎 (帯広のヤクザ風)  渥美清(新得署の渡辺署長)

《story》

「永遠の愛を若者は見た。その優しさ、美しさ・・・」

欽也は、失恋して仕事を辞め、車を買って北海道に渡る。ナンパしようと駅前で声をかけるのだが、だれも相手にしない。網走の駅前で、おとなしそうな小川朱実に声をかけ、車に乗せる。海岸で、欽也は朱美にキスを迫り、いやがった朱実をかばったのが島勇作だった。それをきっかけに、3人の旅が始まる。
朱実は、列車で売り子をしていたが、同僚とのトラブルから、やけになって旅に出たのだった。勇作は、夕張で炭坑夫として働いていた。スーパーの店員の光枝に惚れ、何度も通ううち、やっと気持ちが通じて結婚した。光枝は、子どもができたとき、黄色いハンカチを竿の先につるし、勇作に知らせた。勇作が望んでいた子どもだったが、光枝の不注意から流産してしまう。そのこで勇作は荒れ、街でケンカして、相手を殺してしまう。
勇作は刑務所に入っているとき、光枝と離婚した。出所して、「もし自分を待ってくれているなら、竿に黄色いハンカチをつるしてくれ」と手紙を出していた。欽也と朱美はそのことを聞き、行くか行くまいか揺れる勇作を励まし、夕張に向かった。

◎何度見ても感動する映画だ。最後の黄色いハンカチを目にする場面もわかっていても涙が出てくる。いい映画って、ここは涙が出る、とわかっていてもまた涙があふれ出す。そんな映画の1本です。
山田洋次監督の映画には、必ずと言っていいほど登場する倍賞千恵子。でも、それは彼女の演技だけでなく、体全体からにじみ出てくる優しさだと思う。だから、どの作品でも生きて見える。同じ演技なのに、その作品に一番適しているように見えてくる。まるでマリアさまみたいな、観音様みたいな、いつでも包んでくれるそんなあったかさを感じる。
高倉健も好きな俳優の一人だ。この人もいつも同じ演技なんだけど、それぞれの作品にマッチしている。まあ、たぶん二人とも好きな俳優だから、そう思えるのかもしれないけど。

北海道はいいよね。実は、夕張のこの黄色いハンカチを見にいきました。その当時のセットなのか、あとから復元したのかわからないけど、二人が生活したバラックの家がありました。マツダの赤いファミリアもありました。また、北海道に行きたくなりました。

ライムライト

2006年08月16日 | 人間/社会派ドラマ


1952年 アメリカ 137分
■原題「Limelight」
■2006.8.16 BS2
■監督 チャールズ・チャップリン
■出演 チャールズ・チャップリン(老道化師カルベロ)  クレア・ブルーム(テリー)  バスター・キートン  シドニー・チャップリン  ジェラルディン・チャップリン

《story》

20世紀の初め、第一次世界大戦前、初老のカルベロは、かつてのように舞台の仕事がなく、体に悪いとわかっているが、酒におぼれる日々だった。酔ったカルベロがアパートに帰ると、ガスのにおいがした。1階の部屋からだった。ドアを壊し、中に入ると、若い女性が倒れていた。部屋から連れ出し、医者に見せたところ、安静にしていれば回復するとのことで一安心。その女性は3階のカルベロのベッドで眠っていた。1階のその女性の部屋は、すぐに別の人の貸し出されてしまった。目を覚ました女性はテリーといい、バレエのダンサーだったが、過去の出来事がトラウマとなってうまく踊れず、そのために自殺を図ったのだった。カルベロのあたたかい介抱で、テリーは歩けるようになった。二人で生活をしながらお互いに励まし合った。テリーは、バレエで素質を認められ、有名になっていった。カルベロは、久しぶりに舞台に立っても、客が途中で出ていき、プライドを傷つけられていった。テリーの前には、かつて密かに思いを寄せていた作曲家のネビルが現れ、カルベロはテリーの前から姿を消した。
カルベロは、飲み屋で芸をしてお金をもらい暮らしていた。そこに偶然ネビルが現れ、テリーとカルベロは再開する。そして、テリーの計らいで、カルベロの記念公演が開かれることになった。今まで暖めておいた芸を披露するなどして、会場は拍手喝采。最後のショータイムで、背骨を損傷したカルベロは、舞台で踊るテリーを袖で見ながら息を引き取るのだった。

◎ルンペンの格好のチャップリンとちがうので少し戸惑う。それに声があるのだ。どちらかというと今までの山高帽のチャップリンが好きだ。特に「街の灯」が一番だと思っている。この「ライムライト」と「殺人狂時代」は姿がちがって声があるのでチャップリンのイメージとは離れてしまう。それとはちがった意味で好感の持てる映画だ。

まずは音楽、よく知られているメロディ。それにチャップリンが演奏しているバイオリン。バレーなど、素晴らしい芸術性があると思う。それにチャップリンの足技は最高だ。最後の足を短くするコントもおもしろいけど、チャップリン独特の足裁きが好きだ。

人はだれもが夢と希望を持って生きている。だれもが、彼らみたいに成功するとは限らない。それに、夢と希望があっても実力がない場合もある。でも、周りが支えながらでも、夢の実現向かうなら、最高の人生だと言えるだろう。カルベロは、その最高の舞台で最高の拍手の中で人生を終えることができた。幸せな人生だったと言えるだろう。あの拍手が、さくらなのか本物なのかわからない。しかし、それはもう問題ではなくなった。

もうひとつ言えるのは夢は一人では叶えられないということ。支え合える友がいて、夢に向けて進むことができる。テリーはカルベロに出会ったからこそ、ネビルはテリーに出会ったからこそ、カルベロはテリーに出会ったからこそ、大きくなれたのだと思う。


フライト・オブ・フェニックス

2006年08月15日 | ファンタジー/アドベンチャー


2004年 アメリカ 114分
■原題「Flight of the Phoenix」
■2006.8.15 wowow
■監督 ジョン・ムーア
■出演 デニス・クエイド(フランク)  ジョヴァンニ・リビッシ(エリオット)  タイリース・ギブソン(A・J)  ヒュー・ローリー(イアン)  ミランダ・オットー(ケリー)  トニー・カラン(ロドニー)

《story》

「砂漠のど真ん中で たった一つのチャンスにかける 
    10人の運命は・・・・・・」


モンゴルにある油田が閉鎖されることになった。会社に雇われた飛行機がやってきて、現地で働いていた全員と、旅でふらっと立ち寄ったエリオット、そしていくらかの資材などを積んで、飛行機は北京に向かった。ゴビ砂漠を通過中に大規模な砂嵐が発生した。パイロットのフランクは、引き返すよりも突っ切ることにしたが、飛行機は耐えきれず、砂漠のど真ん中に不時着してしまう。水や食料は約30日分。捜索隊が来るのを待っていたが、一向にその気配はない。そこで、エリックの提案で、不時着した飛行機を使って、小型の飛行機を作ることにした。途中、投げ出したり、けんかしたり、また盗賊集団に出くわしたり、難題もあったが、飛行機は完成する。エンジンをかけるのに残っている火薬は5発、迫り来る盗賊達、エンジンをかけて、砂漠から抜け出すことができるのだろうか。

◎だれがリーダーか、だれがえらいのか、そんなことでもめていたような気がする。生きるか死ぬかの極限状態では、自分の存在を誇示したい人間もいるのだろう。冷静に考えたら、ひとりひとりの力がなければ、みんなの協力がなければ、こんな大きなことはできないことはよくわかるのに。

水や食料がまだまだあるし、さまざまな道具も積んであったし、飛行機の損傷も最後の望みをかけるだけのものだったし、不運の中にも幸運だったのではないだろうか。パイロットも無事だったし、飛行機を作る知識を持った人間がいたこともラッキーだった。あきらめずに、そこにある知恵や力をうまく使うことで、危機を脱することができた。ただ待つだけだったら、死んでいたことだろう。そういえば「ポセイドン。アドベンチャー」も同じような流れだった。待つだけではだめ、チャンスを見つけて行動しなければいけい、というリーダーの言葉があった。一概に待っていたらダメだとも思わないけど、可能性をみんなでしっかり考えることは大切だと思った。

大きな飛行機を分解して、小さな飛行機を作り、砂漠から抜け出すというアイデアはなかなか思いつかない。偶然が重なって、それが可能となったからこそだと思う。その可能性を広げたのがエリックだけど、彼がここにたどり着いた背景の中に何か渦巻くものがあったような気がする。ここにいる人たちとは全く人間がちがう。ここにいること自体違和感があり、彼自身もそれを感じていただろう。バカにされている雰囲気。ここから抜け出したいのと同時に、この雰囲気がたまらなくいやだったのかもしれない。

公式サイト「フライト・オブ・フェニックス」


釣りバカ日誌17 あとは能登なれ ハマとなれ

2006年08月14日 | コメディ

2006年 日本 107分
2006.8.14 TOHOシネマズ緑井
■監督 朝原雄三
■出演 西田敏行(浜崎伝助)  三國連太郎(鈴木一之助)  浅田美代子(浜崎みち子)  石田ゆり子(沢田弓子)   加藤武(秋山専務)  中本賢(太田八郎) 大泉洋(村井徹)

《story》

「今年の夏の扉は、ハマちゃんが開ける」

ハマちゃんのいる営業三課に、以前秘書をしていた沢田弓子が再就職してくる。7年前に寿退社したのだが、実は2年前に離婚しての再就職だったのだ。能登の輪島に、法事のために戻ってきていた弓子と、建設施設の視察に来ていたハマちゃんが出会う。弓子は縁談を進められていた。ハマちゃんは輪島塗の行程を、弓子の兄たちに教えてもらい驚く。弓子の兄は、縁談を断るのはハマちゃんと不倫しているのではないかと勘ぐる。弓子は、マンションの向かいに住む美術の講師と仲良くなる。講師の一目惚れから、二人は親しくなっていく。9月から仙台の学校に就職が決まり、弓子にプロポーズする。そして輪島の兄のところに挨拶に行くとになる。しかし、しどろもどろの彼は、兄に「お断りします」と言われてしまう。祭りの沿道でハマちゃんとスーさんに出会う。そこに、兄嫁から、「許す」という兄の伝言が入る。

◎全体的にやわらかい感じがした。ハマちゃんが大きなトラブルを起こすわけでもなく、スーさんでも鯉太郎でもない。主役は弓子さんだった。彼女へのハマちゃんの関わりがあまりないのが残念。偶然、二人は輪島で会うものの、彼女の問題にハマちゃんが関わることはない。

でも、楽しく見ることができた。劇場で素直に笑い声を上げることができる。事実、あちらこちらから笑い声が聞こえた。はちゃめちゃでもなく、きちんと流れが整っている。ただ、もう一押し人々の関わりがほしい。輪島塗の行程はわかったが、兄とハマちゃんとのすれ違いや、弓子さんの悩みとの関わりなどあるといいと思った。

会社の中で、ハマちゃんはいつまでも平社員なんだけど、貫禄があって、部長くらいに見える。初めの頃とちがった雰囲気がある。スーさんは倒れなければいいんだけど、気を遣ってしまうような年齢を感じる。まだまだ続いてほしいけど、スーさんにとってはしんどいかな。

成果主義の問題が扱われていた。みんなで助け合って仕事をしていた時代が懐かしいという言葉もあった。確かにそうだと思う。ますます人間関係が希薄になる取り組みがなされ、できるだけ少ない賃金で多くの成果をあげようと、会社の質がかわってきている。だから、こんなにあったかい職場を見ているとほっとするのかもしれない。

公式サイト「釣りバカ日誌17 あとは能登なれ ハマとなれ」

エアポート1999

2006年08月13日 | アクション

1998年 アメリカ/カナダ 88分
■原題「Airspeed」
■2006.8.13 wowow
■監督 ロバート・ティネル
■出演 エリシャ・カスバート(ニコル・ストーン) ジョー・マンテーニャ(レイモンド・ストーン) チャールズ・パウエル(ジェフ) リン・アダムス(マリリン・ストーン) イヴァン・ポントン(リー) ブロンウィン・ブース(アンドレア)

《story》
ニコルは、自家用ジェット機で父母のいるパーティー会場に向かっていた。13才の思春期で、反抗的で、まわりの人にいやな思いばかりさせていた。飛行機の中でも、注意を聞かずわがまま放題だった。その飛行機に落雷があり、二人の操縦士を含む全員が気を失ってしまった。飛行機は緊急用の自動操縦で飛んでいた。ニコルは目をさましたもの、どうすることもできないでいた。3人までは救助の飛行機に乗り移すことができたが、そのワイヤーが切れ、ニコルは飛行機の中に残されてしまった。最後の方法として、自動操縦を解除し、手動で操縦するしかない。ニコルは、自動操縦をバットでたたき壊し、手動操縦にチャレンジするのだった。

◎そんなに感動があるわけじゃないけど、エアポートシリーズはどういうわけか好きなのです。「エアポート75」の印象が強いからかもしれないな。それに、最後は必ずハッピーエンドになるしね。

世の中わがままな子どもは多いよね。この子は冷たい目をしていないから一時的なものだとすぐわかる。日本の中学生だったら、二目とみられないひどい化粧顔に変身。それに言葉遣いもやくざみたいなひどいものになるだろうなあ。だから、この子の反抗はかわいいものだと思う。

まあ、世の中には金持ちがいるものだ。自家用ジェット機だって。そんな飛行機は落ちてしまえ、ってちょっと思ってしまった。ひがみだね。金持ちだから必死で助けて、貧乏人だったら見捨てるなんてしないでよね。助かってよかったけど、たくさんのいろんな乗客じゃあないだけに、感動も少な目でした。

男はつらいよ26 寅次郎かもめ歌

2006年08月13日 | コメディ

1980年 日本 100分
■2006.8.13 BS2
■監督 山田洋次
■出演 渥美清(車寅次郎)  倍賞千恵子(さくら)  伊藤蘭(テキヤ仲間の娘、すみれ)  米倉斉加年(巡査)  あき竹城(漁港のイカ工場のおばちゃん)

《story》
博とさくらは一戸建ての中古の家を長いローン組んで買う。案内された寅さんは、二階に自分の部屋があることに感動する。そこで奮発して2万円も祝儀を出す。しかし、博たちは遠慮して受け取らない。5000円だけ受け取っておつりを出す話にもなり、寅さんは怒って出ていってしまう。
北海道江差、テキ屋仲間の死を知り、線香をあげようと、奥尻島に渡る。そこには娘すみれが一人で生活していた。寅さんに、東京に出て昼間は働きながら定時制高校に通って勉強したいことを話す。寅さんは、親代わりになったつもりで、葛飾柴又のとら屋に連れてくる。
願書を取り寄せ受験し、すみれは合格する。学校に通うようになるのだが、寅さんもいっしょに教室で学習、ではなくいねむり。
ある日、すみれの彼氏が東京まで訪ねてくる。そして結婚の約束をする。その日すみれははとら屋にもどってこなかった。親代わりの寅さんは心配でならない。寅さんは、朝帰りのすみれを怒るが、幸せになってほしいと言い、旅に出る。

◎寅さんの住所はどこなんだろうね。やっぱり葛飾柴又だろうね。国勢調査の話から、もし寅さんのことを記すとしたらどうするだろうか、と見ている人も頭をひねることだろうね。

「この部屋はだれの部屋だい」「お兄ちゃんのよ」一瞬黙る寅さん、この喜び。奮発したくなるよね。祝儀。素直に受け取ればいいのに。もっと引っかき回すのがあのたこ社長。いつものパターンだけど。寅さんが出ていったあとの茶の間は暗く重いだろうなあ。そして出ていった寅さんも、「しまった」と思いながら歩いているんだろうなあ。

この映画の好きなところは、みんなが心からやさしく思いやりがあること。すみれの受験のために、一緒に学校に行ったり、お百度参りを本当にやったり、心の底から心配したり喜んだりすること。ウチだったら、「いつか出ていくんかね」と陰口言われそう。「いつまでもいていいんだよ」とやさしく言ってくれるおばちゃんの愛情。これが大好きだなあ。寅さんも、きっととら屋のみんなは応援してくれると思うから、北海道からでも連れてこれるんだと思った。みんなやさしいから、見ている自分もやさしくなれる。
今回は、恋ではなく親心だった。だからさわやかな別れができたのだと思う。

いつか読書する日

2006年08月12日 | 人間/社会派ドラマ

2005年 日本 127分
■2006.8.12 wowow
■監督 緒方明
■出演 田中裕子(大場美奈子) 岸部一徳(高梨槐多) 仁科亜季子(高梨容子) 渡辺美佐子(皆川敏子) 上田耕一(皆川真男) 香川照之(スーパー店長)

《story》

「今までしたかったこと、全部して」

かつて学生時代にお互いに思いあっていた、美奈子と槐多。美奈子の父が死んだ後、母は槐多の父とバイクで二人乗りをしていて事故にあい死亡。それ以来、美奈子と槐多は近づくことも話すこともなかった。そして30年、美奈子は独身で、朝牛乳配達、そしてスーパーのレジの仕事、新聞の本の広告を切り取って、好きな本を読む毎日の繰り返し。心の奥底に槐多への思いを秘めたまま。槐多は結婚し市役所の仕事をこなす平凡な日々。その槐多の妻が病気で、余命幾日もないと言われ、槐多は看病に精を出す。ある日、その妻が美奈子に手紙を出す。美奈子の奥底にある槐多への気持ち、そして槐多の心の奥底にある美奈子への気持ち、それを見抜き、自分が死んだら、自由にしていいというものだった。その妻が亡くなり、いくらか過ぎた頃、美奈子は決心して、槐多の家を訪ねるのだった。

◎題の意味を考えてみた。「いつか」とは、二人がもう一度向き合う時のことをさしているのだろか。「読書」とは、本屋での二人を表しているのだろうか。美奈子の部屋のたくさんの本、壁にぎっしりとならんだ本。槐多が見た美奈子の部屋への驚き。それはあの本屋の場面を意味しているのだろうか。

平凡な日々。これでいいのか、という疑問はだれにでもある。それで満足できるか、できないかのちがいで、心が動く。美奈子の毎日、朝早く起きて牛乳を配る。愛おしくもあり、それでいいの? 人生それで終わるよ、牛乳も配れなくなる日がくるよ、いいの? という声が聞こえる。きっと美奈子はそれでもいいと答えるだろう。もし、自分だったら、いやだーと叫んでしまうかもしれない。でも、あの朝の街はそんな心を包んでくれる何かがある。そして、「いつか」は永遠にやってくることはないのだ。

やっぱり、心の奥には、希望があった。それがラジオ番組へのリクエスト投稿だったのだ思う。槐多の奥さんもできた人だ。知らんぷりするどころか、二人のために必死に動くのだから。この奥さんが30年かかった希望を叶えてくれた。

ラストはこれでいいのだろうか。二人は幸せになってほしかった、という思いがある。でも、死んだ槐多は笑っていた。丘の上に立つ美奈子もすがすがしい表情だった。これでいいんだよ、と言っている。再び美奈子の平凡な毎日が始まる。

公式サイト「いつか読書する日」