■2003年 日本 111分
■2009.5.6 日本映画専門チャンネル
■監督 三原光尋
■出演
藤竜也(高橋研一) 海東健(高橋孝)
宮地真緒(高橋香夏) 甲本雅裕(野原正治)
桜むつ子(山本のおばあちゃん).
吹石一恵(水沢先生) 大杉漣(植田進)
原田知世(高橋紀子) ペース・ウー(チン・リン)
宮島博(眞島秀和)
《story》
「父が世界で一番愛したもの。」
「山間に消えゆく村を写真に残すために、
人々をたずね歩く寡黙な父と、反発する息子。
二人きりで山を分け入り、父の仕事する姿を見つめ直した息子の心に、
水がしみ込むように次第に変化が生じる。
日本の自然と、村の人々の温かさを背景に、
父と子として家族の絆を改めて感じさせる、映像叙情詩-」
山間の村、花谷村。その美しい村がダムの底に沈もうとしていた。村役場は、村の家族の写真を残す事業に取り組む。名乗りを上げたのが、写真屋の橋。その手伝いのために、橋の息子である孝が東京から呼び戻される。孝は、父親とぶつかり、家を飛び出し、東京で写真撮影見習いをしていた。黙々と一軒一軒歩き写真を撮る父、その後を不満げについていく孝。ある時、その父が倒れ、孝が写真を撮ることになる。しかし、満足な写真が撮れず、父親の偉大さが見えてくる。山奥の家も歩いていく親子。撮影後深々と頭を下げ、礼を述べる親子。最後の家族写真は高橋家。家を飛び出していた姉とその娘がもどってきた。
何かをすることで見えてくる心
離れていては何も見えないし、それどころか不満ばかりつのってくる。良さがわかっていても、実感として感じ、それを表すことができない。クッションとなる妹の存在は大きい。間を取り持とうとするだれかが存在するとき、その人がきっかけとなって相手を見ようとする気持ちが生まれる。孝の心に父親を見ようとする心が生まれた。そして、孝自身が新たにクッションとなり、父と姉が結ばれていく。人と人は、そんなクッションとなる人の力によってつながっていく。自分もだれかのクッションになれるだろうか。だれかとつながった経験のない人間は、なかなかそうはなれない。写真に現れる生きた姿。私も、風景写真をよく撮る。それは、生きた人の姿を撮ることが苦手だから。でも、風景に入る人が、風景をもっと美しく映えさせてくれることを知っている。風景写真ではなく、家族写真を残そうとしたことの意味はそこにあると思う。
思うほどだめではないことがわかった。できるだろうか、失敗しないだろうか、どう思われるだろうか、などさまざまな不安が渦巻き、ドキドキして鼓動が高鳴る。しかし、いざやる場面となったとき、頭の中が真っ白になって、隠れてしまいたくなるようなことはなくなった。それは、少しでもイメージを作り、準備してきたからだろう。それでいい。